~第二十章~上総伊織
「姉ちゃん・・・」
ジャングルを駆け抜けながら不意に口を突いて言葉が出てきた。
さっきは篠崎たちと一緒にもとの世界へ帰るために決意はした。
そのために俺は姉をまず見つけてから帰る方法を探そうと思っていた。
だけど姉が心配なことに代わりはなかった。
きっと姉も俺らと同じくトレイン・マークから武器と能力は貰ったと思う。
でも、俺らとは違って武道には通じてない。
その点、篠崎と違って普通の女学生だ。
心配過ぎる。
「ガウッ!!」
「うお!?」
色々と考えていたらどうやら狼に追いつかれてしまったようだ。
攻撃は俺の頭上をかすめあたらなかったものの、狼に前方をふさがれこれ以上逃げることが出来なくなってしまった。
「追いつかれたか・・・まぁ、これだけ逃げれば杉弓や篠崎は大丈夫だろう」
俺は武器を構える。
「さぁ、やり合おうぜ」
狼と向き合い、俺達の戦いに火蓋が切って落とされた。
「おらぁ!」
地面を蹴り、砂を巻き上げて一気に間合いを縮める。
そのまま振りかぶった拳で狼に殴りかかる。
ズシャァア!
だが、その拳は空を斬り地面の砂を削るだけだった。
狼は翼を羽ばたかせながら後方へ飛びのいていた。
「案外早いのな」
突き刺さった武器を引き抜き再び構える。
今ので分かった。
むやみに突進して攻撃してもあたらない。
間合いを見切って一撃で仕留めるしかないか。
拳に冷静を送り込んだその時だった。
「ぐっ!?」
狼が短い前足を横へ振りかぶったかと思うと、いきなりその爪が伸びて斬撃が左から襲ってきた。
なんとか、武器でその攻撃を受け止めるも、少し気を抜いていたのか重心が浮いていてそのまま右へ弾き飛ばされた。
バキイィ!
そこらに生えた木に激突して、折倒しながら止まる。
「・・・化けもんじゃねえか」
服に付いたほこりを払いゆっくりと立ち上がる。
へぇ・・・四肢強化って体も強くなるのか・・・
どうやら吹き飛ばされて木に衝突したようだが常人なら骨折は免れなかっただろうが、俺は無事なようだ。
むしろびくともしない。
肩を鳴らして、その場で軽くニ、三回ジャンプする。
そして、片方の拳を突き出して、息を吐いた。
「さてと・・・お前は相手が悪い。なんせ桐峰のナンバーツーを相手にしてるんだからな」
殺気も織り交ぜて、その言葉を口から吐き出す。
気のせいか、辺りの木々がざわついたのを感じた。




