~第二章~
場面は移り変わり、今俺と姉ちゃんがいる場所は、通勤通学のラッシュに揺れる地下鉄のホームだ。
どうやら朝のテレビのニュースは俺達がいつも使っている電車の始発列車だったらしく、何が起きたのかは詳しくは知らないが、どうやら一本前から運行を再開したようだ。
遅延の影響でいつにも増して人があふれかえるむさ苦しいホームに吐き気を覚える。
くそ・・・外は寒いから着込んできたのが裏目に出た・・・熱すぎる。
ワイシャツの下には長袖、そしてブレザーの下には厚手のカーディガンを着ているため人のひしめき合う地下鉄のホームでは足りすぎた重装備だ。
襟元を開け、自分の手で涼しい風を服の中に送り込んだ。
あまり変わらないとわ思うのだが、暑いと何故かやってしまう。
となりの姉ちゃんも暑そうに襟元をあおいでいた。
「最悪・・・どんだけ混んでんの?いつもよりひどいと思わない?」
「姉ちゃん、さっきのニュースやっぱり見てなかったろ・・・始発電車の遅延らしいよ」
明らかに驚いた表情をしている。
・・・ニュースくらい見ようぜ姉よ。
「ま、仕方ないでしょ。どうせ10分しか乗んないんだし立っても座れても変わらんだろ」
「モチベーションは変わる~。その日のやる気にかかわってくるもん」
「はいはい。あ、電車着たよ。逸れんなよ?」
「子ども扱いするな~!!」
慌てるようにホームに駆け込んでくる列車に、いまかいまかと待っていた人の群れが空席を狙って一歩踏み出す。
アナウンスの注意に耳も傾けづに白線も越える人たち。
これが人身事故を招く原因だ。
特に事故も無く滑り込んできた列車になだれ込む人、俺達は逸れないように何の意識もせづに手をつないだ。
少なくとも俺は・・・
『桐峰~桐峰でございます。お降りの際は一部ホームと電車との間が広く開いておりますのでご注意ください』
聞きなれた声と聞きなれた駅名、そして聞きなれた呼びかけに反応して、込み合う車内で開くドアの方に移動する。
徐々に減速し、ホームに到着すると扉が開き、いっぺんに人が降車する。
辺りを見ると皆、桐峰の制服を纏っていた。
「ふぅ~疲れた~。やっぱり座れなかった・・・モチベーション下がる~」
分かっていたことにいちいち反応する姉ちゃんにつっこみを入れることすら疲れたので、とりあえず聞きながす。
「今は・・・8時か。よかった間に合って」
親父から貰った形見の・・・時計に目を移すといつも通りの時刻を指差していた・・・
そう。親父は死んだ。
いや、死んだかどうかは分からない。行方不明。
暗くなるからこの話はこれだけにしておこう。
すくなくとも家は母子家庭ということだ。
「姉ちゃん。コンビニよる?」
「よる~」
いつものことながら学校前は決まってコンビニによるので今日もそれに変わらずよることにした。




