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~第十一章~

あれから数時間。


この列車に乗車してから約3時間は経過しようとしていた。


俺と杉弓は軽い世間話を続け、年齢は多少離れているもなかなか話が合って、友人には成れた。


俺の学校のことや杉弓のこと家庭のことなど様々なことを話したり聞いたりしていたら自然と仲良くなれた。


ジジジ・・・


「おい・・・聞こえるか?」


一旦話が切れたときに、車内に不審な音が流れた。


その音にすばやく反応して杉弓が俺に話しかけてきた。


「聞こえた」


俺も立てていた肘をたたみ、そのわずかな音を聞き取ろうと耳をそばだてた。


『おーい。俺だ。ここの車掌やってるトレイン・マークだ』


不意に聞こえてきたその声はどうやら車内に設置された拡声器から流れ出しているようだ。


さっきの音もきっとこれから流れてきたのだろう。


『もうすぐ目的地に到着する。ほんのちょっとでトンネル抜けるから外の景色でも堪能してな・・・ブツッ!』


そういい残すと拡声器からの音声は途絶えた。


「到着だってよ」


「のようだな」


俺達は多少心配を胸に抱きながらも、もうすぐ見えてくるであろう外の景色を拝見するために、窓側の座席に身を乗り出した。


「お!上総、前見ろ。トンネル抜けるぞ!」


「ホントだ!久しぶりの太陽だぜ」


進行方向と正対して座っている杉弓がいち早く列車の前方から光が差し込んでいることに気がついた。


そして、列車はその光へと身を飛び込ませた。


「く!」


「まぶしい!」


暗闇から一気に日の刺す明るみへ飛び出したため俺と杉弓は目を眩ませてしまった。


数秒目を閉じた後に俺は瞳を開く。


その目に飛び込んできたものは・・・


「・・・おい、杉弓」


「待て、まだ目が慣れておらん」


「いいから、見ろ。大変なところに着ちまったみてえだぜ・・・」


「ああ?」


そうして未だにまぶしそうにしていた杉弓はゆっくりと瞳を開けた。


「なん、だ・・・これは・・・」


「知らねえよ、俺に聞くな」


「別にお前に聞いたわけじゃない、俺の心に聞いたんだ」


俺達二人の目に飛び込んできた風景。


それは想像していたものとは全く違う風景だった。


列車の通るすぐ脇にはたくさんの木々が生い茂り、その木々の隙間から見える先には真っ赤な色をした海。


太陽の光だと思っていたものはなく空は暗黒の闇に包まれている。


空に浮かんだ二つの月のようなもの、ひとつは激しく真っ赤に発行し、もうひとつは白銀と光を放っている。


辺りの空気に色でもあるのではないのかと思ってしまうほど赤みを帯びていて、もはや朝とも昼とも夜とも呼べはしない。


本当に俺達はどこへ来てしまったのだろう。


ここは日本なのか・・・いや、果たして地球上にこんな不思議で重々しい場所は存在するのだろうか。


通り過ぎていく風景はまさに空想の中の地獄を描いていた。


『ようこそ、放流世界シャットダウンへ』


再び拡声器を通して車内にトレイン・マークの声が響き渡った。


その声にはどこか喚起にも満ちた表情が含まれていた。


「放流世界・・・?」


「なんだよ、そのシャットなんたらって」


俺達はその拡声器の言葉に耳を傾けた。


『あ~・・・ちなみにそっちの声はこちらには届かないんでよろしく~』


「てめえ!説明めんどくさいからだろっ!!」


『あ~・・・聞こえません、どうぞ~?』


「んのやろっ・・・」


「まあ落ち着け上総」


トレイン・マークのめんどくさがりな性格に苛立ちを覚えて、拡声器を粉々にしてしまいそうになったのを、杉弓が冷静にとめてくれた。


『え~静かになったところで、説明いたします』


(聞こえてるのかよ・・・というか説明するのか)


と、杉弓が心の中でつぶやいた。


『今のこの放流世界シャットダウンは現実世界で言う夜に値します』


俺はなんとか落ち着きを取り戻し座席に座ると再び拡声器の声に耳お傾けた。


夜か・・・これで朝だったら気が滅入っていたところだぜ。


『それと・・・あ~・・・説明は以上です』


「殺す!!」


「落ち着け上総!」


再び説明を端折ったトレイン・マークに切れそうになった。


つうか切れた。


『最後にひとつだけ説明いたします』


すこし真面目になった声質に、俺も冷静になって立ったまま拡声器に耳を傾ける。


『死ぬなよ・・・ブツッ!』


「・・・」


「・・・」


辺りに静寂が流れた。


そして列車が徐々に減速していくのを肌が感じる。


鉄を擦り付けあう金属音と、その反動が重力となって伝わる。


俺達は会話を忘れてただ、列車の到着を待った。


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