表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

序章1

※作品の途中に残酷シーンがあります。

視界の端が真っ赤に染まる。耳鳴りが響き、身体中からずきずきとした痛みを感じる。先ほど切られたからか、背中からはドクドクと出血が止まらない。叫び声をあげたいのに、力が出ないためか、うめき声をあげることしかできない。

少しずつ身体から熱が抜けていくのを感じながら、私は自分の生が長くないのを予感していた。昔、そう、今の生を歩むよりずっと前に、同じような痛みを感じたことがあったから。


そんな今の自分の状態を受け入れようとする私の手を強く握りしめながら、長年連れ添った幼馴染が見たこともない顔を近づけて私に何かを語りかけてくる。


「おい、—丈——美郷、———して———。俺を——にしないでくれ!」


わずかに聞き取れる彼の声から私の名前を必死に呼んでいるというのだけはどうにか聞き取ることができた。でも、それも徐々に意識の彼方に追いやられていく。


(ああ、これ、死んじゃうかもしれないな……だって、昔に死んだときと同じ感じだし……)


消えゆく意識の中で思い出すのはこれまでの日々のこと。最悪の前世の終わりから、新しく生まれ変わってからの日々。そして、どうして今日、こうなってしまったのか。今までの記憶が走馬灯のように流れていくのを感じていた。


(ごめん、尊。約束、守れそうに、ないや——)


胸の中で尊に謝りながら、私は少しずつ意識を手放していった。


※※※


仕事を終えて家に帰った時、最初に感じた違和感は玄関先に見慣れない男物の靴が置いてあったこと。

1週間の出張だった。それが本来の日程より1日ほど早く仕事が済んだこともあり、上司からもその日は直帰していいと許可をもらった時まで気分は高揚していた。その日、長年連れ添った妻である青葉にサプライズをしてやろうと考えなければきっと、幸せな夢を見続けたままでいられたかもしれない。


見慣れない靴を見て感じた違和感に対し、「あれ? こんな靴をいつ買っただろうか」と疑問に思った。きっと、それは自分の中に生じた答えに対して必死で目を逸らしたかったのだ。しかし、そんな自分の甘い期待はあっさりと裏切られることになる。


心臓がバクバクと音を立てているのを感じた。焦燥感から背中から嫌な汗が吹き出し、真夏でもないのにワイシャツがぐっしょりと濡れていく。玄関で靴を脱ぐのも忘れ、速足になるのを感じながらまっすぐに寝室へと向かった。向かう先でばたばたと慌ただしい足音と焦ったような聞きなれた声が聞こえてくる。それに耳をふさぎたい思いを必死で押しとどめながら寝室の扉を開けた。


扉の先には間抜けな顔をして、下着を中途半端につけた青葉の姿と、見慣れない自分よりも少し年上の裸の男がそこにいた。一瞬で固まる二人に対し、俺は真っ白になった頭で胸元から取り出したスマホのカメラで写真を撮った。


パシャと空虚な音が俺の日常を完全に崩壊させていくのを感じた。


いったん話をしようと、裸同然の二人に服を着させた。その間、俺はトイレに駆け込み昼に食べたモノをすべて吐き戻した。着替えてきた二人はとてもバツが悪そうな顔をしていた。そんな二人の間の距離がすごく近いのを見て、俺は気持ち悪さが再び戻ってくるのを感じた。


その後の青葉の話を俺は他人事のように聞いていた。男が妻の仕事先の上司で既婚者であること。俺の仕事が忙しくなったため寂しくなり、相談したことがきっかけだということ。彼とは遊びであり、本当に好きなのは俺だから信じてほしいということ。必死に言葉を並び立てる目の前の女の言葉が聞けば聞くほど俺は自分の感情が冷えていくのを感じた。一通り青葉から話を聞いたのち、俺は「分かった」とうなずいた。その言葉に目の前の女は嬉しそうに頬を緩めた。


なので、俺はにっこりと、目の前の二人に殴りかかりたい気持ちを抑えながら告げた。


「とりあえず、あなたは奥さんを呼びますので電話貸してください。あと、青葉、義両親にも連絡するから」


二人が血の気が引くように顔を真っ青に染めていくのを見て、溜飲が少し下がるのを感じた。


そこからはあっという間で、ドラマであるような修羅場に俺は他人事のようにそれを見続けていた。やってきた浮気男の妻が青葉に殴りかかり、それを止めようとした男に対してつかみかかり、長く伸びた爪で顔をひっかいていた。やってきた義父が青葉に対してビンタを何発もかまし、痛みに大泣きしている。それを義母が必死で止めようと泣きながら喚く。混沌としていく状況をみて、「あれ、俺の家って動物園だったっけ」などと思わず笑いがこみ上げてきた自分がおかしかった。


しばらく騒がしい状況が続いていたが、浮気男とその妻は別で話をするということで連絡先だけ交換後、家を出ていった。残ったのは俺と青葉と青葉の両親だけ。俺は電話でも事前に話をしていたが、改めて青葉の両親に見聞きした事実を撮影した写真付きで経緯を話した。そして、俺は青葉と今の生活を続けていく気はないことを告げた。


離婚の話に対しては青葉が必死に叫んでいたが、気持ちは変わらないこと、一緒に生活したいと思えないことをたんたんと伝えた。愛している、別れたくないと泣きながら懇願する目の前の女を見れば見るほど、嫌悪感だけが募っていく。最後まで抵抗していたものの、結局は義両親が無理やり家に連れ帰ってその日は終わった。


あとで浮気男の妻から電話で連絡があった。男のほうはというと浮気の常習犯らしく、結婚前から頻繁にしていたらしい。子どもができたことがきっかけで結婚し、落ち着いたと思っていたところでの裏切りに、男の妻も愛想が尽きたようだ。後日、離婚を前提で話を進めていること、慰謝料は夫と青葉に請求するつもりだと話をしていた。好きにしてくれと一言伝え、俺は電話を切った。


全部がどうでもよかった。愛していたはずの女は、幼稚園からの付き合いで、それこそ両親よりも長い時間を過ごしていたといってもいいくらいだ。それこそ互いの見えないほくろの位置さえ知っている。異性を初めて知ったのも、付き合ったのも、結婚したのもすべて初めての女だった。


まさかそれに初の浮気と離婚までセットで経験させてくれることになるとは思わなかったが。


誰もいなくなった静かな部屋で、俺はおもむろに立ち上がると、普段は開けることのない戸棚の引き出しから古ぼけた煙草を取り出した。青地に英語で平和と銘打たれたその銘柄はつい最近まで良く吸っていたものだ。封を切ってからしばらく使っていなかったからか、少ししけっているように感じる。それに火をつけると、ゆっくりと吸い口から煙を吸い込んだ。肺を満たす煙を堪能した後、ため息をつくように一気に吐き出した。


吸うときは必ずベランダに出るようにしていた。今ではそのことに対して文句を言う奴もいない。子どもができた時のために貯金するため、禁煙しようといわれていたことを思い出した。今の仕事が落ち着いたら子どもを作っていくとなると、養育費をためていく必要があるからと。


いずれ生まれてくるかもしれない、新しい命のために使われる金は、見ず知らずのくそ野郎との逢引のために使われていた。それを考えるほどに悔しさとやるせなさに包まれていく。


火をつけた煙草の先から立ち上る紫煙が部屋中に漂っていく。それはまるで今までずっと一緒だった存在を塗りつぶしていくようだった。



それから俺は仕事を辞めた。実家の両親は何度か電話で話しをした。心配してくれているのは分かったが、すべてがどうでもいい俺は案じる言葉に適当に返事をすることしかできなかった。元嫁は家で俺の写真を見ながらずっと話しかけているということも人づてに耳にした。俺にはもう関係ない話と切り捨てた。


全てどうでもよくなった。誰よりも知っていると、信頼していた相手からの裏切りに俺はどうしても立ち直れずにいたのだ。


離婚して3か月が経った。部屋はごみで溢れかえり、カーテンで光を閉ざした部屋は暗く、ここだけ世界から切り離されているようだった。最初は心配して毎日訪れていた両親も今ではたまに思い出したかのように電話が鳴る程度だ。勤めていた会社の同僚や昔からの友人も心配で連絡をとってきたこともあった。それらも今ではその頻度は数えるほどになっている。


どんどん世界から切り離されていくのを感じていたある日、ピンポーンと呼び鈴が部屋に鳴り響いた。何度もしつこくなる呼び鈴にイラつき、扉のインターホンの映像越しに外を見る。しかし、そこには誰の姿も映っていなかった。いぶかしげに思っていると、今度は部屋の隅に転がっていたスマホからけたたましい着信音が鳴り響いた。


宛先をみると、どうやら青葉の母親かららしい。離婚して以降、連絡をしてこなかったこともあり何事かと不思議に思い、電話に出ることにした。電話の向こうからは「青葉が家を飛び出した。そちらに来ていないか?」という内容だった。その話に背筋の冷たくなった俺は、改めて玄関を見る。


すると、呼び鈴の代わりに扉からドンッと叩いた音が響いた。それも、一度ではなく、何度も、何度も、何度も………。叩く音に合わせて聞こえるのは、「ごめんなさい」「愛している」「やり直しましょう」という悲痛で狂った声。それはまるで壊れたテープを再生させているように、かすれて途切れ途切れの音だった。聞きなれたはずの声が、まるで異質に感じる。それに恐怖した俺はパニックになり、部屋の隅にうずくまりガタガタ震えることしかできなかった。


しばらくその音は聞こえ続けていたが、ふと気が付くといつの間にか音も止んでいた。途中、バタバタという足音と言い争う声が聞こえた。それももしかしたら彼女の様子を見た近所の住人が通報してくれたのかもしれない。ようやく訪れた平穏に安堵したものの、外の様子が気になった俺は玄関に向かい、扉を開けた。


そこには身体中を真っ赤に染めて、うつろな目をして足元に倒れこむ人々をじっと見つめる女がそこにいた。何度も扉を叩いた手からはプラプラと剥がれかけの爪が見え隠れしている。右手にしっかりと握られた包丁からは赤い液体がぽたりぽたりと滴っている。倒れた人々はまるで最初からそうであったかのように、身じろぎ一つせず倒れこんでいた。その身体から、おびただしい量の血を放出しながら。


「————あ、○○君だ。やっと会えた」


青葉の顔は痩せこけていたが、その顔に爛々と輝く瞳から正気を失っているということだけは分かった。彼女が好んで着込んでいた真っ白なワンピースには、今ではその色が最初から別のものであったかのように血で染まっている。にっこりと狂ったように笑いかける目の前の女の、その唇に真っ赤に塗られた口紅がひどく不気味に思えた。


「————○○君、だめだよ、ご飯ちゃんと食べてる? 部屋も掃除しないといけないね。いつも掃除するときに机の下はてきとうだものね。あ、冷蔵庫にたべものあるかな。私、買ってきたらさ、中に——」

「何でだよ」

「え、どうしたの○○君?」

「なんで、お前は、この状況で、これ、お前が全部」



「そうだよ、私がしたの。だって、パパもママも、私が○○君に会いに行くの止めるんだもの。私は○○君の奥さんなのに、おかしいよね。だめだよね、夫婦は一緒にいなくちゃいけないのに、どうしても邪魔するの。だから実家から抜け出してきたのに、家に帰ろうとしたら止めようとするんだもの。変だよ、私、○○君のお嫁さんにいなったのに。だから、邪魔するパパとママはきっと偽物なの。だって結婚式で祝福してくれてたのに、それなのに邪魔するはずないもの。だから、偽物だから殺していいの」


そういって、青葉はにっこりと笑顔を向けた。明らかに異常なその状況で、彼女だけが冷静に狂っていた。


「だから、これからはまた一緒に暮らせるの。もう一度やり直すの。ううん、きっと些細なすれ違いだったのだから、きっともっと仲良くなれるの。ねえ、聞いてよ○○君! 私、最近お腹が大きくなったの。きっと、○○君の子どもだよ。私、いいお母さんになるの。一人だと大変だから、ママに助けてもらわないと。あ、ママ、何してるの、こんなところで寝てたら風邪ひくよ。パパも、一緒に寝てないで起きてよ」


大事そうにお腹を触りながら、いるはずもない俺の子どもを幻視しながら、青葉は自分が殺した両親に話しかけている。その姿に、様子に俺は目の前の存在があまりにも恐ろしくて、震えからまともに立っていられなくて座り込んでしまう。恐怖からくる身体の震えは全身に広がっていく。


「——れ」

「どうしたの、○○君? 大丈夫だよ、私、きっといい母親になるから。安心していい——」

「帰れよ、お前が、浮気して、離婚したんだ。俺は、俺とお前はもう他人——」

「違う!! あれは全部夢、悪い夢なんだ。朝起きたら私は朝食を作って、○○君がねぼっけた顔で起きてきて、それを私は笑ってみているの。私が作ったご飯を○○君美味しそうに食べて、それを見ながら一日がきっといい日になるって思いながら始まる。そんな日常が当たり前で、今がきっと夢なのよ」


狂気に染まり、どこを見ているのか分からない目がじっとその在りし日の日々を夢想を思い描いているようだった。


「そうだ、朝だよね。もうご飯作る時間だよね。私、何しているんだろう。今すぐ準備しなきゃいけないのに、こんなことしてたら奥さん失格なのにね」

「青葉、聞いてくれ、俺たちは離婚して、もう——」

「うるさい! ○○君も、どうしてそんなこと言うの、私たちは愛し合っていたじゃない。あんなにずっと長いこと一緒にいたんだよ。きっと些細なすれ違い。だから、きっといつもの優しい○○君に戻ってくれるよね」


俺の言葉に耳を貸すことなく、ただ一人、自分にとって都合のいい妄想を彼女は垂れ流す。いや、彼女にとっては妄想ではなく、自分の頭の中の世界こそが現実なのだろう。


「ああ、そっか。大丈夫。私たちが元に戻れない原因になった人だよね。大丈夫。もうあの人とは関係は切っていたから○○君が心配することはないんだよ」

「……は? 青葉、お前、何を言って……」

「だって、○○君はあの男と私がまた関係を持つかもしれないと思っているんだよね?安心して、ここに来る前にちゃんと全て清算してきたの」


彼女はそう言って肩にかけたカバンから透明な袋に包まれた袋を取り出した。密封された袋に入っていたそれは、まるでペンキを容器からこぼしたように真っ赤に染まっている。

赤く染まったため中のものは良くは見えないが、それが何かの肉片であるということはわかった。


「これが私と○○君の間を引き裂いたからね。二度と私に使われないようにちゃんと切ってきたから。安心して、これでもう一度やり直せるよね」


笑顔で掲げられたそれを持って嬉しそうに話す青葉の顔は、まるで賞を取った子供のように無邪気だ。そんな褒めてほしいと願う彼女の顔はもう、俺が知る彼女と同じもの同じとは思えなかった。


「これで、また一緒に暮らせるね。安心して。私、きっと前よりもいい奥さんになるから。○○君との子どももいるしね。子はかすがいっていうし、きっと前よりもいい夫婦になれるわ」


青葉はそう言って、玄関から足を一歩踏み入れる。俺はそんな彼女を恐れるように「ひっ」と声を上げて近づいいた分の距離を取る。

青葉はそんな俺を信じられないような顔で見つめる。そうして自分の手に持たれた包丁と袋を見てから「そっか」とつぶやいた。


「やっぱり、夢だからかな。思い通りにならないよね。だから、一緒に悪い夢から覚めないとね。お母さんも、お父さんも、きっともう起きているから。私たちもいい加減起きないといけないものね。大丈夫、きっと起きたらあの日の朝、私たちが出会ったあの日に、○○君が私と出会った日に戻れるの。そして、きっと今度こそ私たちは本当に誰からも羨まれる夫婦になれる」


手にもっていた、真っ赤な袋が彼女の手から離れて地面にべちゃりと音を立てて落ちる。袋からこぼれた真っ赤な血が玄関を染めていく。ふらり、ふらりと近づいてくる青葉に俺は恐怖のため身体が震え、まるで地面に縫い付けられたように動けない。


「○○君、大好きだよ。だから、きっと起きてもまた私のお婿さんになってね」


そういって、気が付いた時には俺の腹に彼女の包丁がブスリと刺さっていた。引きこもっていた身体は体力も落ちていたためかまるで割れたガラスから水がこぼれるがごとく命が抜けていくように感じる。消えかけていく意識の中、視界に入る青葉の顔が微笑みながらも、その目から零れ落ちた涙が頬を伝っているのがわかった。


「大丈夫、私もすぐに起きるから。だから、今は○○君はゆっくり眠ろうね」


起きるのか寝るのかどっちなんだよ。そんなどうでもいいこと思いながら、ゆっくりと振り下ろされる包丁を見ながら思う。恋愛なんてこりごりだ。もしもう一度人生があるのだとしても、絶対だれかを好きになんてなるものかと。


キラリと光る刃を視線に捕らえながら、俺は人生に幕を下ろす。



「ちょうどいい。君ならピッタリだ。ようこそ、歓迎するよイレギュラー」



消えていく意識の中、そんな楽し気に笑う声が耳に聞こえてきたが、それが誰かも分からなかった。


※※※※


最初に感じたのは眩しいという感覚。心地よいまどろみの中、突然息苦しさを覚えて無我夢中で身体を動かした結果、突然の光に視界が焼けるようだった。まるで暗闇の中、長い間水の中で息を止めていたところ突然浮上したような、そんな感覚に襲われてしまい、思わず子どものように大声をあげて鳴き声を上げてしまう。


泣き叫ぶ声が自分のものなのか驚く間もなく、俺はぬるま湯に身体をつけられた揚げ句、見も知らぬ人に抱えられる。包丁に刺された身体にいきなり水につけるとか、藪医者かよと思うも、冷静に考えると状況は明らかにおかしいと気付いた。


目の前に映る、白い看護服に身を包んだ女性は少なくとも成人した男性を軽々と持ち上げられるような人間には見えない。どこにでもいるような一般的な成人女性がそんな力を持っているとは少なくとも思えない。


では、これはどういう状況なのだろう。身体も先ほどからあらゆるものへの刺激が強すぎて、感情の激流を留めることができず、涙と叫び声を止めることができない。


「お母さん、頑張りましたね。お子さんは無事生まれましたよ」

「……よかった、元気に生まれてきてくれて」

「お外でお待ちしている旦那さんをお呼びしてきますね。娘さんをお渡ししますが、まだ首が据わっていないから気を付けてください」

「……ええ、ありがとう」


そういって、俺は看護師の手から女性の手へと渡される。この場になって、俺は遅まきながら状況を少しずつ理解してきた。


「元気に生まれてきてくれてありがとう。私の赤ちゃん」


ああ、そうか。考えたくなかったけれどやはりそうなのか。物語の中の話だと思っていたけれど、まさか自分がそうなるとは考えたくなかったけれど、事ここまで現実感があると信じざるを得ない。


「生まれる前に検査で分かってきたけど、やっぱり女の子ね」


つまり、そういうことらしい。二度目の人生は女の子として生きていくようだ。前世の最後に切られたブツを見たから、今世は息子とおさらばってか。やかましいわ!

評価、感想お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ