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「ヴィオラ……良かったの」


「はい」


ヴィオラは、少し困ったように笑った。


その後、テオドールはリュシドール国へ遣いをやった。

レナードは国には、戻っていなかったそうだ。しかも、彼は既に王位継承権を剥奪されており、弟のロメオが王太子の座についていた。


「身の置き場がなくなり、ヴィオラの元へ来たのかもね」


テオドールは、カップに口をつけた。今日は、ヴィオラと2人だけでお茶を愉しんでいる。今朝方、リュシドール国から遣いが戻り報告を受けたばかりだ。


「……レナード様は、淋しい方です」


「淋しい?」


他人(ひと)の痛みや悲しみ、苦しみ……愉しいことや嬉しいことすら、汲み取ることが出来ないのだと思います。周りからしたら、彼はただ我儘で自分本位で迷惑な人間ですが」


淡々と辛辣な事を言っているヴィオラに、テオドールは苦笑する。自覚はなさそうだ。


「誰かと想いを分かち合う事が出来ない事は、孤独です。誰の気持ちも分からず、己の気持ちを分かって貰う事も出来ない。彼は淋しく哀しい方です」


だからと言って、レナードの罪を赦す事は出来ない。自分から大切な人を奪った彼を。


「ヴィオラ、成長したね。驚いたよ。君がそんな風に言うなんて」


「ふふ。まだまだですよ。でも、テオドール様に褒めて頂けて嬉しいです」


本当の意味で成長出来る日が来るだろうか。今のヴィオラには、レナードを赦す事は出来ない。故に、彼を遠ざけた。


罪を憎み、人を憎まず。


そんな言葉を、ある本の中で見つけた。


いつか、彼を赦せる時が来たら、本当の意味で私は成長したと胸を張る事が出来るかも知れない。


「ヴィオラ……僕も、君を見習おうかな」


テオドールは、深刻な顔をするとヴィオラの手を握った。


「テ、テオドール様⁉︎」


ヴィオラは、顔を真っ赤にして動揺する。


「ヴィオラ、僕は……その。……僕は、君が好きだ」


意外過ぎる言葉にヴィオラは固まった。


「なんでか分からないけど、君は誤解してる。僕は、君をフッた覚えはないし、寧ろずっと君が好きだった。初めて出会ったあの日から、ずっと僕は君が、好きだったんだ」


テオドールは、真っ直ぐにヴィオラを見つめながら一言一言丁寧に話していた。


「でも、君には想い人がいて……諦めようと1回は身を引いた。君が幸せならそれでいいと……。だけど、諦める事など出来なくて……君を追いかけ、リュシドールの城まで行ったんだ。誰にも譲りたくない。ヴィオラ、僕の側にいて欲しい。恩返しとかそういうのじゃなくて、妻として僕の隣にいて欲しいんだ」


テオドールは、立ち上がるとヴィオラの前に跪いた。そして、手を差し出す。


「テオドール様……」


ヴィオラは、泣き笑いのような顔をするとその手を取った。


「私も、テオドール様が好きです」





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