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「テオドール様、書簡が届いてますので置いて置きますね」


テオドールが城に戻りひと月。あれから、ヴィオラはテオドールの側近もとい雑務係として忙しい日々を送っていた。


「なんだか、つまらないわ」


そう言ってため息を吐いたのは、ひと月前テオドールが一緒に連れて来た伯爵令嬢のアドラだ。正直始めは、悲しくなってしまった。まさか、テオドールが女性を伴って帰還するなんて、と。話によるとアドラは、テオドールと結婚したいらしい。ヴィオラにとっては、恋敵の様な人物だ。


だが、彼女と話してみると意外と意気投合し仲良くなった。そもそも、ヴィオラはテオドールにフラれている身あり、恋敵にすらなれない。ならば、敵視するのはお門違いだ。


「アドラ様、お茶をどうぞ」


「あら、ありがとう」


にこにこしながら、アドラはヴィオラからお茶を受け取る。アドラもまたヴィオラの事をかなり気に入っている様子だ。


「ヴィオラ、僕にもお茶淹れてよ」


「……レナード様の分は、ありません。お飲みになりたければご自分でお淹れ下さい」


「ヴィオラ、冷たくない?」


かなりの塩対応を受けるレナードだが、意外と嬉しそうに笑っている。そんなやり取りを1人離れた場所から見守るテオドールは、苦笑するしかない。









この執務室は、仕事をする場所でありお茶会を開く場所ではない。


だが、何故かこの2人は毎日執務室にやって来てはこうして過ごしている。嫌がらせかも知れない。


兎に角、心の底から帰って欲しい……心労がする。


「テオドール様、お茶をどうぞ」


「ありがとう、頂くよ」


それにしても、ヴィオラには感心をする。歩けるようになった時も思ったが、かなりの努力家で負けず嫌いでもある。勉学も、こうしてお茶を淹れる事すらあっという間に覚えてしまった。


お茶を淹れるなど本来は侍女の仕事ではあるが、ヴィオラは自らお茶をテオドールの為に淹れたいと言ってくれた。瞬間、幸せを感じたが、直ぐに現実に引き戻される……。


ヴィオラは、何れこの国の王太子妃になる。兄のヴィルヘイムが、決めた事だ。無論あの後彼に対してテオドールは詰め寄り抗議したが……取りあえって貰えなかった。


それに、ヴィオラ本人には未だ何も聞けていない。正直、聞くのが怖い。


「ヴィルヘイム様と、結婚します!」なんて笑顔で言われた日には……自分のことながら、再起不能になりそうだ。故に、曖昧なまま放置していた。思わずため息を吐く。


「テオドール様、お疲れですか」


「え、あー……そんな所かな」


仕事の所為で疲れいる訳ではないので、曖昧な返答になってしまう。ちらりと、レナードやアドラへ視線を向ける。心労の原因達はどこ吹く風で、しれっとしていた。……腹が立つ。


「レナード様って、王太子なんですよね」


「うん、そうだよ」


「でしたら、ヴィオラ様はやめて、私にしませんか?自分でいうのも何ですが、こんなにいい女は中々いませんよ?」


アドラは最近テオドールに固執しなくなった。中々なびかないテオドールに早々に見切りをつけ、代わりを探しているらしい。


「ごめんね、僕はヴィオラ一筋だから。無理」


「もう、そんなにはっきり仰られなくとも。連れませんね〜。やっぱり、ここはヴィルヘイム様かしら」


どうしても王族になりたいのか、なりふり構わないアドラの姿に、テオドールは苦笑せざるを得ない。


「アドラ様、テオドール様と結婚なさりたいのでは……」


目を丸くして、ヴィオラはアドラを見る。


「まあ、そのつもりだったんだけど。テオドール様、全然相手にしてくれないから、時間の無駄でしょう?だったら、他を探す方がお利口よ。婚期が過ぎちゃうわ」


テオドールは、その言葉に何故アドラが無理矢理城までついて来たのか察しがついた。


あの時既に、望みはないと分かっていたにも関わらず、わざわざついて来た理由はこれだ。


だから、女性は苦手だ……寧ろ人間不信になりそうだ。


「という事で、ヴィルヘイム様を狙っても構わないかしら?」


アドラはヴィオラに確認をとる。


一体なんの確認だ……。


問われた本人は、眉を寄せた。




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