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いい人だなぁと、思った。


彼の弟のテオドールとは、友人未満くらいの関係でしかない……悲しいけど。なのにも関わらず、ヴィルヘイムは優しくしてくれる。


力になりたい、そう申し出てくれた彼。ヴィオラは、無論丁寧にお断りした。だが、ヴィルヘイムは、意外と強情だった。


「遠慮はいりませんよ。私を利用するつもりで、使って下さって構いません」


何故、そこまで言ってくれるのか分からない。奇怪な顔をしているヴィオラに気付いたヴィルヘイムは、笑ってこう言った。少し昔話をしましょうか、と。





「私は、生まれつき身体が弱く、10年生きれないと言われていました。それ故に、テオドールは物心付いた頃から、そんな私の代わりにずっと王太子としての教育を受け、今は仕事もしています。……大変だったと思います。あの子は弱音などは一切は言いませんが……代わりに自分を押し殺した。しかも、10年生きれないと言われた私は生き延びてしまい……だから、あの子は王太子にもなれず、王位も継ぐ事も出来ない」


初めて聞いた、テオドールの生い立ちにヴィオラは固唾を呑む。


「私に対する不満も、憤りや言い知れぬ想いも、あるでしょう。でもあの子は、こんな私にいつも笑って話し掛けてくれるんです。将来は、私の補佐として支えたいとも言ってくれて……本当に、優しい子なんです。弟には、とても感謝しています」


ヴィルヘイムは、なんとも言い難い表情を浮かべている。




「そんな環境の所為か、あの子は女性が苦手になってしまいまして……あの歳になっても、婚約者も恋仲になるような女性(ひと)も1人も出来ず。父も我慢を強いてる事に負い目があるようで、無理に婚約させる事もしませんでした。

……そんな弟が連れてきた貴女は、あの子にとっては特別な存在である事は間違いありません。だから、貴女の力になりたいんです」


ヴィオラの力になる事は、延いてはテオドール様の為という事だろうか……。


ヴィルヘイムの話に、ヴィオラは何も言えなかった。自分の知らないテオドールを垣間見た気がして、嬉しくも苦しくもなる。


どんな想いで、生きてきたのだろう……。


懸命に、兄の代わりとして勉学や剣術、教養その他にも沢山の事を学んだに違いない。そして今は、兄の代わりに仕事をこなしている。それなのに、テオドールは王太子になる事も、王位を継ぐ事も出来ないなんて……辛過ぎる。


目の奥が熱くなる。ヴィオラは自分が酷く情けないように思えた。

これまでそんな素振りなど、テオドールから感じた事はなかった……。いつも、ヴィオラに優しくしてくれた。励ましてくれた。救ってくれた。それなのに……。


私は、テオドール様に甘えるばかりだった

……何もしてあげる事が出来ない。




「殿下、お願いがあります」


ヴィオラは、真っ直ぐにヴィルヘイムを見据えた。


「何なりと」


少しだけ、戯けたように彼は笑う。


「私に、勉強をお教え下さい」


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