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テオドールは、何日もかけて国境の近くの町まで来ていた。


「確か、この辺りの領地はランヘル伯爵が担っていたね」


馬車から降りたテオドールは、街中を歩きながら、ニクラスと話をする。テオドールが視察などに出る時は、大体ニクラスをお供に連れてくる。お忍び故、従者などを余りぞろぞろと連れてくる訳にもいかない。


ニクラスは、優秀な医師であり、博学故色々な面で最良な人選だと、テオドールは自負している。実際、ヴィオラの時にも助かった。


「伯爵の屋敷を訪ねますか?」


「う〜ん、まあ、そうだね」


余りテオドールは乗り気ではないようだ。


「何か、不都合な事でもお有りですか?」


ニクラスの言葉に、テオドールは苦笑した。正直、行きたくない……。


「いや、問題ないよ」








「テオドール殿下、自ら足を御運びになられるなんて、こんな光栄な事はございません!」



テオドールとニクラスが、ランヘル伯爵の屋敷を訪れると直ぐに客間に案内される。程なくして、ランヘル伯爵は嬉々としながら客間へとやってきた。


「何の連絡もなしに、すまない」


「滅相もございません!テオドール殿下の来訪でしたら、何時何時いつなんどきでも大歓迎でございます!」


一々大袈裟に声を張り上げ、話すランヘル伯爵に、テオドールもニクラスも引き気味だ。テオドールが、気乗りしなかった要因の1つはこれにある。そしてもう1つは……。


バタバタと音が聞こえて来たかと思ったら、勢いよく扉が開け放たれた。


「テオドール殿下っ‼︎」


大きな声は親譲りだろう。叫び声のような声を上げて、扉を開けた女性の名はアドラ。上から下までゴテゴテの装飾品を身につけている。


テオドールは、げんなりした顔でアドラを見遣る。人の容姿をとやかく言うつもりはないが……趣味が悪い。


「テオドール殿下!アドラ、お会いしたかったですわ!」


身体をクネクネとさせ、甘えた声を出しながらテオドールに擦り寄ってくる。テオドールは、口元をひくつかせながら、何とか笑顔を保つ。


「アドラ嬢、久しぶりだね……その、元気そうでなりよりだ……」


「テオドール殿下、アドラ〜寂しかったですぅ」


ニクラスは、呆然としていた。ニクラスがこの地を訪れるのは、実は初めてだ。数年前にテオドールが、視察に来た時は別の従者を連れていた。その時は別の仕事の為、来ることが出来なかったのだが……。


なんだ、これは。


失礼だが、そんな風に感じた。テオドールを横目で見遣ると、もの凄く嫌そうな顔をしていた。本人は、笑顔を作っているつもりだろうが、完全に崩れている……。



「あ、あぁ……そうなんだ」


「テオドール殿下。勿論、今宵はお泊まりになられますでしょう?」


いや、他に宿を……と言いかけたテオドールの言葉を大きな声で遮る、ランヘル伯爵。


「当たり前だろう!アドラ。わざわざ、確認するなど、殿下に失礼だろう⁈」


人の話を遮る方が失礼だ。


「ごめんなさい、お父様!私ったら……テオドール殿下、ごめんなさい」


今度は、上目遣いでこちらを見つめてくるアドラに、テオドールは溜息を吐く。


やはり、来なければよかったと。







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