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「ヴィオラ……」


ヴィオラを、ベッドに組み敷きテオドールは、再び口付けをした。テオドールの手は首筋をなぞり、下へとおりていく。


「テオドール、さま」


そこで涙声のヴィオラに、テオドールは我に返った。


自分は今、何をしようとしていた⁈


テオドールは、勢いよくヴィオラの上から飛び退くとベッドから転がり落ちた。


「いっ……」


情けない事に、頭から落ちた。地味に痛みを感じ、声を上げる。


「テオドール様っ⁈大丈夫ですか⁈」


ヴィオラは勢いよく起き上がると、ベッドの下を覗き込む。


「あ、ああ、だ、大丈夫だよ……ハハ」


今し方、襲われそうになった相手を心配するヴィオラに、テオドールは情けないやら、恥ずかしいやらで言葉もない。


「莫迦だね……」


「テオドール様?」


「ちょっと、頭冷やしてくるよ」


「へ……」


いたたまれなくなり、テオドールは呆然とするヴィオラをその場に残して部屋を出た。






気長に待つと、決めたのに。


気ばかりが焦ってしまう。


彼女の中の彼に、毎日嫉妬ばかりして、本当に情けない。


ヴィオラは、毎日騎士団の稽古場にやって来ては、テオドールに汗を拭う為の布を渡してくれる。始めは嬉しくて舞い上っていたが、次第に団員達が「可愛い」「美しい」「天使だ」などと囁き始め、正直焦り出した。


ヴィオラの事は、今客人として向かい入れている。故に、他の男達に手を出さない様にと、制限をする資格は自分にはない。


なら、さっさとヴィオラを婚約者に添えればいいと思うかも知れないが……彼女に強制したくない。


彼女が、自ら自分を求めてくれるまで…………ダメだ……その頃には、白髪頭になってそうだ。テオドールは、項垂れた。






「何してるんだ、こんな所で」


テオドールは、廊下にしゃがみ込み頭を抱えおり、誰が見ても明らかに様子がおかしいと、思うだろう。


「……別に」


「いやいや、別にって感じじゃないだろうが」


テオドールと同じ歳くらいに見える男は、呆れた様子で腕を組むと壁にもたれた。心配している様子ではあるが、特に手を貸すつもりはないようだ。


「僕は、今反省中だから……ほっておいてくれるかな」


「反省中……なんだ、それは。少し会わない間に、随分面白くなったな、テオドール」


「煩いな……君こそ、なんでいるの。バーレント」


バーレントと呼ばれた男は、長身のキリッとした顔つきの所謂、イケメンだ。彼は、テオドールの従兄弟にあたる。


「聞きたいか?」


「いや、いい」


「は?今お前が聞いたんだろうが」


自分で聞いておいて、テオドールは聞く事を放棄した。


「実はだな」


だが断られたにも関わらず、めげる事なくバーレントは勝手に話だす。


「お前に、ようやく女が出来たと聞いてな。どんな娘か、興味があって、って、お、おいっ⁈」


次の瞬間バーレントの胸ぐらに、テオドールは掴み掛かった。


「ヴィオラは、僕のヴィオラだっ!誰にも渡さないっ」


バーレントは、幼い頃からテオドールの事をよく知っているが、こんなテオドールを見るのは初めてだ。バーレントは、困惑した表情を浮かべる。


「テオドール、お前」






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