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「ここが、クラウゼヴィッツ国」


何日も馬車に揺られ、ようやくクラウゼヴィッツ国に到着した。

ヴィオラは、テオドールに抱き上げられ、馬車から降ろして貰う。


「テオドール様、もう降ろして下さって大丈夫です」


ヴィオラは、顔を赤くして身体を捩る。


「遠慮しなくていいよ」


「全然、遠慮とかではないです!」


テオドールは、ヴィオラをお姫様だっこすると、そのまま歩き出してしまう。


「テオドール様⁈」


「ヴィオラ、もう少しだけこうさせて?」


悪戯っ子の様に笑うテオドールに、ヴィオラは頬を膨らませるが、大人しくなる。



「ちょっとだけ、ですからね⁈」


「ハハッ、ありがとう。君は本当、可愛いね」


「揶揄わないで下さい!」


馬車は、城の前ではなく街の入り口で止まった。テオドールとヴィオラは、街中を抜けて行く。行き交う人々は、目を丸くして2人を見ていた。


多分これは、嫉妬なのだろう。

ヴィオラと出会ったあの町で、彼女を初めて見た時と同じ事を自分はしている。レナードは街中でヴィオラを抱き上げ歩いていた。さもそれが当たり前のかの様に……その光景を今でも鮮明に覚えている。

あの時の2人が酷く幸せそうに見えた……だから、彼に負けたくない。ヴィオラを幸せにするのは自分でありたい……。


つまらない嫉妬心だ。


「ねぇ、ヴィオラ。少し寄り道しようか」


テオドールは、言葉通り店へ立ち寄るとヴィオラに3つ目の髪飾りを贈った。


「ありがとうございます、テオドール様」



嬉しそうに微笑むヴィオラを見て、満足そうにテオドールは笑う。


そして、寄り道をしながら街を抜けて行く。暫く店を覗いたり会話を愉しんだ後、先回りしていた馬車にテオドールとヴィオラは乗り込んだ。








ヴィオラは、呆然と立ち尽くしていた。


「どうしたの、ヴィオラ?」


城の門の前で立ち尽くし、動こうとしないヴィオラにテオドールは眉を潜める。


「い、いえ、その……」


この城には巨人でも住んでいるのだろうか……と思う程、兎に角巨大な城がヴィオラの目前に広がっている。

いつか読んだ、令嬢が巨人の国に迷い込んだ話を思い出した。例の名探偵の令嬢の番外編の話だ。


「……もしかして、テオドール様は、巨人なんですか?」


ヴィオラのよく分からない質問に、テオドールは困惑した。


巨人?なんだそれは……。


「いや……質問の真意は、はかりかねるが……僕は巨人ではないよ……」


「そうなんですね、良かった。もしかしたら、テオドール様これから凄〜く、成長なさるのかと思ってしまいました。そしたら、どうしようかと心配になってしまって」


ヴィオラはそう言って、安堵している。テオドールはというと、相変わらず訳が分からず困惑を隠せない。


「……」


「余りに、お城が広大でしたので……驚いてしまいまして……」


流石、大国というだけの事はある。リュシドールの城とは比べ物にならない。


リュシドールの城を初めて見た時でさえ、感動したのに、ここまで凄いともはやどう表現すればいいか分からない。故にヴィオラは本当に巨人でも住んでるかと思った。


「あぁ……そうかな?普通だよ」


だがテオドールの言葉に、直ぐにヴィオラは納得した。普通の人間なら、突っ込みを入れたくなるだろう。若しくは嫌味と捉え怒るかも知れない。だが、純粋もとい単純なヴィオラは、頭の中でこれが普通だと信じた。

寧ろリュシドールの城が規格外だったのね、くらいに思った。


「さぁ、ヴィオラ。行こうか」


「へ?キャッ」


テオドールは、ヴィオラを抱き上げお姫様抱っこすると、スタスタと歩き出した。






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