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ヴィオラはアランに連れられ、城の廊下をゆっくりと歩いていた。幾ら歩ける様になったからといっても、まだゆっくりとしか歩く事は出来ない。まだまだ、訓練が必要だ。


「それにしても、驚いたな。レナードが見たら、これは驚いてひっくり返るに違いない」


アランの微妙な言い回しに、ヴィオラは苦笑する。見た目は少し怖いが、少し話せば分かる。アランはいい人だが、少し変わっている。やっぱり、類は友を呼ぶとはよく言ったものだ……。


レナード様も、変わってらっしゃるものね。


「あぁ、いたぞ」


アランは遠目に、中庭にレナードの姿を見つけると、そうヴィオラに言った。だが、アランの顔が元々渋いのに更に、拍車がかかる。


「いや、やはりいなかった」


「へ……」


いや、今確かにいたと言った筈だが……何故急に。行ってしまった、なら理解出来る。だが、いなかったとは……謎すぎる。見間違いとかだろうか。


ヴィオラは、戸惑いながらアランを見上げる。アランの目は泳いでいた。明らかに様子がおかしい。


ヴィオラは気になり、動揺して動かないアランの横をすり抜け、中庭へと歩いて行く。


「お、おい!ダメだ!そっちは」


アランの声が聞こえたが、ヴィオラはそのまま行ってしまった。


「……レナード、様」


中庭の手前で、ヴィオラは立ち止まった。そして何故アランがあの様に言っていたのか、理解する。


「レナード様、はい、あ〜んなさって下さい」


レナードはガゼボのイスに座り、お茶をしていた。その隣には綺麗な女性が座っている。実に仲睦まじい様に見えた。


そしてヴィオラには、直ぐに分かった。彼女が、レナードの新しい婚約者なのだと。


「あー、見ちゃったか」


アランは、ヴィオラに追いつくと頭を抱えた。だが、当のヴィオラはというと平然としていた。


ヴィオラは呆然とレナードと、その婚約者を眺めていた。自分でも驚いていた。まるで、何も感じない。よくショック過ぎて頭が真っ白に……とかではない。


ただ、何も思わないのだ。普通なら、嫉妬したり、悲しんだり、怒ったりと感情が湧き上がってきそうだが……何もない。これは、所謂、興味がないという事なのだろうか。


「あら、レナード様。お客様ですか?」


先にヴィオラ達に、気が付いたのは婚約者のロミルダだった。レナードは、その言葉に振り返る。そして、先程アランが言った通りひっくり返った。


これはワザと、なのか……とヴィオラは目を丸くする。だって、驚きひっくり返るなど、それこそ驚きだ。


「まあ、レナード様⁈如何されまして⁈」


ロミルダは、レナードに駆け寄り、立ち上がるのを手伝う。


「ろ、ロミルダ王女、僕なら平気ですからっ」


レナードの頭は混乱の最中だった。何故ヴィオラが今目前にいる⁈しかも、あのヴィオラが1人で立っている⁈しかも、ロミルダと一緒の所を見られるなんて、最悪だ……。


思いの外、ロミルダが粘りに粘り、中々手強く婚約破棄が出来ない。今正に手詰まりな状態だった。故に、ヴィオラ宛の手紙には、暫く忙しい故、屋敷に留まり待つ様に、落ち着いたら迎えに行く、と書いた筈だったが……なのに何故だ⁈


いや、確かに手紙の返事は1度も貰った事はないが……。まさか、読んでいないのか。


「レナード、様」


レナードは、ヴィオラの言葉に我に返るとロミルダを残し、ヴィオラの元へ駆け寄る。ロミルダに呼ばれるが、無視を決め込んだ。



「ヴィオラ‼︎」


そして、その勢いのままヴィオラを抱き締めた。



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