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「本当に申し訳ございませんでした……」


デラはヴィオラに深々と頭を下げた。まさかのテオドールにミシェルのフリをする様に頼んだのはデラだった。


なんでも、ミシェルによく似たテオドールを見て、ヴィオラの記憶を思い出させる作戦を思いついたそうだが。


「成功したんだし、謝る必要ないと思うよ」


確かにテオドールのいう通りだ。その作戦のお陰で記憶は無事戻ったのだ。寧ろ感謝してもいいくらいだ。が、テオドールに言われると癪に触るは何故だろうか……。


「そうよデラ、謝らないで。寧ろお礼を言うわ。ありがとう」


「ヴィオラ様、そんな」


デラはヴィオラの記憶が戻り安堵した。そして、涙ぐむ。


「デラ、泣かないで……」


デラとは長い付き合いだが、デラが泣くのを見るのは、初めてかも知れない。本当に心配を掛けてしまった。



「それでね、デラ。聞きたい事があるの……」


ヴィオラは真剣な面持ちで、そう口を開いた。


「アンナリーナは、どうなったの」


ヴィオラの記憶は、アンナリーナから突き落とされた所で途切れている。次の記憶は城のベッドに寝かされている所から始まり、アンナリーナがその後どうなったかは知らない。


レナードは、記憶を失くした自分に何も言わなかったし、実家にも帰らせなかった。寧ろ、実家や家族の話など一切する事もなく、何を聞いても曖昧に誤魔化され……記憶を取り戻した今なら分かる。レナードは何かを自分に隠している、と。


「……」


デラは、気まずそうに黙り込んだ。横目でテオドールを見ている。テオドールがいる手前、話していいものか悩んでいるみたいだ。


「構わないわ、デラ。話して」





デラが話す中ヴィオラは、黙り込み、窓の外へ視線やる。瞬きすら忘れているようだった。


「そう……」


ヴィオラはそれだけ返した。悲しむ事も喜ぶ事もしない。表情の抜け落ちた顔に、デラは眉を寄せる。きっと、どんな顔をしたらいいのか、分からないのだろう。


ヴィオラの性質上、自分を虐げてきた家族への恨みはないように思える。かと言って容認も出来ない。実に複雑だ。


アンナリーナに、ドレスを破かれた時すらアンナリーナを責める訳でも、レナードに告げ口をする事すらしなかった。


ヴィオラにとって、あんなに酷い妹でも家族だと思っていたのだろうか。

あんな酷い両親でも、家族だと思っていたのだろうか。


デラには理解出来ない感情だ。もしも、デラがヴィオラの立場ならば、やはり、両親の事も妹の事も恨んでしまうし、家族などと思える筈が無い。そして、処分された事に対して思うことはただ1つだ。

ざまぁない、と。

きっと大半の人間はそう思うだろう。


「ヴィオラ、様……」


「ごめんなさい、1人にしてくれる?」


眉を寄せ無理矢理笑みを作るヴィオラは、そう言った。デラは戸惑いながらもどうする事も出来ず、素直にヴィオラの言葉に従い部屋を出て行った。









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