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王太子……なんだ、王太子か。


「ヘっ⁈王太子殿下⁈」


「うん」


いやいや「うん」って、軽過ぎます‼︎


ヴィオラは驚きの余りベッドから落ちそうになり、頭の中は混乱する。一体何がどうなったら、王太子殿下が自分の部屋を訪ねてくるのか⁈


「……」


暫く呆気に取られたヴィオラは、レナードを凝視した。上から下までまるで、吟味でもするかの様に見遣る。


……分かった。これは、何かの罠よ!そうに違いない!だとしないと、有り得ない。何の面識もない、王太子殿下がわざわざ一貴族でしかない自分を訪ねてくるなどある筈がない。


「わ、私は!」


「え……」


ヴィオラはいきなり叫んだ。その事に流石のレナードも驚き、目を丸くする。


「私は、騙されませんからね!確かに、私は足が不自由で歩けなくて、外に出た事なんて1度もありませんけど……でも、貴方が王太子殿下じゃない事くらい分かります‼︎」


人を指差してはいけません、と本に書かれていた記憶があるが勢い余ってヴィオラはレナードを指差した。


そして「私は言ってやりました!」と言わんばりの顔でドヤ顔をキメるヴィオラに、レナードは思わず吹き出した。


「ハハハッ‼︎君、面白過ぎっ」


「なっ……私は至って真面目にお話してるんです!誤魔化しても無駄ですよ。正体を現しなさい‼︎王太子殿下の名を騙るなんて赦し難き悪行です!」


ヴィオラの如何にも台詞めいた言葉に、レナードは笑いが止まらない。


「ハハッ。僕の正体を見破るなんて、流石巷で有名な御令嬢の名推理だ。最早これまで……感服して、言葉も出ないよ」


レナードの言葉にヴィオラは呆気に取られ固まった。


「あれ、違ったかな?確かこんな感じだったような」


レナードの記憶が正しければ、以前読んだ本の主人公と悪役がこんな会話をしていた筈だ。


「……ご存知なんですね」


内容的に女性向けの本だった故、まさか目前の不審人物(男性)が知っているとは思わなかった。ヴィオラは一気に顔が熱くなり、真っ赤に染まる。


実はこの台詞は、ヴィオラが以前からのお気に入りの本の中の内容と合致している。その本は、デラ曰く年頃の娘達の間で流行っているらしい。ヴィオラも例外ではなく、読み始めるとすっかり夢中になってしまった。


主人公はとある貴族令嬢で、舞踏会を始めとして社交の場、はたまた郊外へ出かけた先で事件に巻き込まれる。そして、最後には必ず主人公の令嬢が、事件を華麗に解決する、というものだった。


如何にも物語といった風で、作られた感じはするが、この部屋から出る事の出来ないヴィオラにとっては夢の様で憧れるものだった。


そしてつい調子に乗り、ここぞとばかりに台詞を言ってしまった……。


以前から言って見たかったんです、すいません、調子に乗りました、もう2度としません、と恥ずかしさの余り心に誓った。


「可愛いね、ミシェルが溺愛していたのが分かるよ」


可愛いとの言葉に、思わずヴィオラの頬は緩むが、次の「ミシェル」の名前に表情が曇った。


「……ミシェルを、ご存知なのですか」


「まあね。君に会いに来た理由も、ね……」


レナードのその言葉に、ヴィオラは唇をキュッとキツく結んだ。

















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