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レナードがミシェルと出会ったのは、今から五年と少し前の事だった。

ミシェルはレナードよりも、3つ歳下で出会った時はまだ無邪気な子供だった。


レナードは、幼い頃より剣術を学び、騎士団にも混ざって訓練を受けていた。騎士団に入団してきたミシェルとは歳も割合近い事もあり、レナードがミシェルの面倒を見るようになる。


ミシェルは素直で、努力家で一切の弱音を吐く事もなく、周囲からの好感も上々で、レナードも弟の様に思っていた。


同じ頃レナードの幼馴染である、エミリアとミシェルはひょんな事がきっかけで知り合う事なるが、これが間違いだったのかも知れない。


エミリアはレナードの乳母の娘であり、幼い頃からずっと一緒に育ってきた。乳母のリーネは元々伯爵夫人だったが、夫を失くし行き場を失い乳母として城へとやってきたらしいと聞いたが、レナードが生まれる前のこと故詳しくは知らない。


エミリアは、母親に似て気立がよく優しい性格で、人見知りなどは一切しない性質だ。故にミシェルともあっという間に仲良くなっていった。


3人で過ごす時間は日に日に増えていき、その中でレナードはエミリアの気持ちに気がついた。エミリアはミシェルの事が好きなのだと……。


「レナード様、ミシェルには内緒ですよ?」


彼女はそう言って、はにかんだ。彼女のこれまで見た事もない表情にレナードは目が離せなかった。何処か色香漂う、女の顔をしている彼女から。


レナードは、彼女にそんな顔をさせているミシェルに嫉妬した。レナードは、ずっとエミリアが好きだったのだ。

だが、この時レナードには既に婚約者がいた。元々叶わぬ想いだとはレナード自身分かっていた。エミリアは乳母の娘で、王太子妃には迎える事は身分的に難しく諦めなくては、そう思ってはいたが……。

まさか、ミシェルに取られるなどと。


「エミリアの気持ちを無下にしたとは、本当なのか」


「……僕には、エミリアの気持ちを受け取る事は出来ません」


エミリアはミシェルへ想いを告げたが、ミシェルはそれを断った。その時ミシェルはエミリアに正直に気持ちを伝えるが。

「僕が幸せにしたいのも、守りたいのも姉さん、ただ1人なんだ」

それでも、エミリアは諦めなかった。


「ミシェル」


「ミシェル」


「ミシェル」


彼女はその頃から人が変わった。ミシェルにしつこく付き纏う様になり、これまで触れる事が無かったミシェルの腕に絡みつき、甘えた声を出す様になった。


「ミシェル、いい加減エミリアの気持ちに応えてやったらどうだ」


「殿下には、関係ありません」


「そう言うな。エミリアが不憫でならないんだ」


「……僕にはエミリアを幸せには出来ません。僕が幸せにしたいのは、姉さんだけです」


「ミシェル、頼む」


「どうして、僕に頼むんですか。殿下は、エミリアを好いていらっしゃるのに」


瞬間、心を見透かされたように思えた。


「殿下がエミリアを幸せになさればいいのでは。王太子妃は無理でも、愛妾になら出来ますでしょうに」


核心をつかれ、レナードの心臓は跳ねる。何も言い返せない。怖かった。エミリアはミシェルを想っているのに無理矢理手籠にすれば、彼女は自分を一生恨むだろう。彼女から嫌われたくない。これまでの幼馴染という心地良い関係を失うのが怖い。


「レナード様っ、私ミシェルに、嫌われて…

…しまいました」


震えながら泣いている彼女を見て、レナードは怒りがおさまらず、ミシェルに詰め寄る。


「エミリアに、なんて言ったんだ」


「……」


「ミシェル!」


「……これ以上僕に付き纏わないで欲しい。正直、気分が悪い、君の顔など一生見たくない、と」


レナードは気付けばミシェルを殴っていた。ミシェルは地面に尻餅をつき、何も言わず、ただレナードを憐れむ様な目で見遣る。


程なくして、ミシェルから拒絶され絶望した彼女は、自ら命を絶った。










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