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郊外にあるこの町に来てから半月程経った。町外れに建てられた屋敷に、レナードとヴィオラは滞在している。


「ヴィオラ、散歩に行こうか」


「レナード様、はい!」


レナードは慣れた手付きで、ヴィオラを横抱きにすると部屋を出る。こうやって、2人で散歩に出るのは日課になっていた。


レナードが屋敷の門を潜ると外には見張り従者達の姿が見える。

レナードはその横をすり抜け、森へと入っていく。


「今日は、良い天気ですね」


散歩をしている間は、2人だけの時間だった。穏やかで、何もかも忘れてしまいそうになる。


「レナード様、見てください。綺麗ですよ」


「ヴィオラ、余り動くと危ないよ」


レナードの腕の中でヴィオラは、興味のあるものを見つけるとその度に手を伸ばしたり、はしゃいだりと忙しい。


「本当に、君は……愛らしいね」


何もかも忘れて、このままヴィオラとずっと一緒にいられたらどんなに幸せだろうか……彼女を王太子妃に迎えるにはどうすれば良いだろうか。彼女が欲しい……。


ここに来てから、レナードはそんな非現実的な事ばかりを考えてしまう。ヴィオラを王太子妃に迎えるのは、現実問題厳しいものがある。侯爵令嬢であり身分的には申し分ない。だが、ヴィオラは歩く事が出来ない。歩く事が出来ない王太子妃など、普通に考えて無理に決まっている。それに、もしもヴィオラが王太子妃になれたとして、険しく厳しいいばら道が待っているだろう。


それでも、レナードはヴィオラを諦める事ができない。彼女に厳しい道を強いたとしても手に入れたい。


実に身勝手な考えだ。

そもそも、ヴィオラの元を初めて訪ねた理由も自分本位で身勝手以外のなにものでもないのだから。


もし、ヴィオラがその理由を知る所になれば、失望するだろうか、嫌われるだろうか。ただ、今のヴィオラには記憶がない。故に今告げた所で訳が分からないだろう。


「……ねぇ、ヴィオラ」


「はい」


どこまでも真っ直ぐな瞳でレナードを見るヴィオラを、心の底から愛しく思う。始まりが例え、嘘だとしても今の気持ちは本物だ。


「僕は、僕は……」


「レナード様?」


「いや、なんでもないんだ」


レナードはヴィオラの頬に頬を寄せた。あの日、彼女が倒れているのを見た瞬間、心臓が止まるかと思った。それまでは、彼女がどうなろうと関係ないとさえ思っていた筈だったのに……。


「レナード、さま……泣いてるんですか」


「泣いてなどいない、よ……っ」


ヴィオラの言葉に初めて自分が涙を流している事に気がついた。ヴィオラは眉を寄せ心配そうにレナードの頬に触れる。その手が優しくて、辛かった。


「ごめん、ごめんね、ヴィオラ……」


()()』を殺したミシェルを赦せなかった。ならばミシェルの何よりも大事にしていた(ヴィオラ)を奪ってやろうと考え、手籠にしたら捨ててやろうと思ったんだ。

そうすればきっとあの世で、ミシェルは悔しがり、怒りに震えるに違いないと。ただ自分の行き場のない想いを、鬱憤を晴らしたかった……。


それに、以前からモルガン侯爵家の存在を疎ましく思っていた事もあり、ついでに片付けてしまおう考えついた。


モルガン侯爵家は以前より、弟の第2王子であるロメオ派であり、ロメオを推していた。モルガン侯爵家は名家であり、発言力もある。

今後邪魔な存在になるのは分かりきっていた。故にその時は、名案だと自負していたが間違いだったのか……。


「レナード様、何故謝るんですか?」


「僕が余りに罪深いから、だよ……」

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