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「茶番は終わりだ、あの者を此処へ」


不意にレナードがそう声を掛けると、また違う従者が縄で縛られた男を目前まで引っ張って来た。男は情けない声で「お赦しください」と喚いている。


見覚えのあるような、ないような男の顔を見てヴィオラら眉を寄せた。そして、あぁ、先程の絵の男だと思い至る。


「私は、カトリーヌ様に毎夜の如く誘われるがままに、応じてしまいました……自分自身の弱さと不甲斐なさに今はただただ、反省しております……ですから!どうか、お赦しをっ」


男はレナードへ縋る様に赦しを乞う。


「カトリーヌ嬢、彼が自白したよ。貴女と情事に及んだとね、残念ながら。これでもまだ、知らぬ存ぜぬというのかな」


遂に、カトリーヌは黙り込んだ。ここで黙るのは、肯定しているとも同じだ。そして、その場の誰もが先程までの絵の観覧会の真似事はなんの意味もないのではと、思った。決定的な切り札を用意しているなら、あれは何だったのか……。レナードの性格の黒い部分が見え隠れしている。あれは、カトリーヌに対する嫌がらせに他ならない。


「そ、そんなの、その男が嘘を吐いて」


「実はね、他にも証言出来る人間がいるんだ」


レナードの言葉の後に姿を現したのは、カトリーヌの屋敷の使用人数人だ。


「私、カトリーヌ様が毎夜この男性を屋敷に招き入れているのを目撃しました」


使用人の1人がそう話すと、他の者達も一様に同じ様な証言をする。


「この者達は貴女の屋敷の使用人だ。おかしいな、普通なら主人でもある貴女を庇ってくれる筈なのに……カトリーヌ嬢、本当に人望がないようだね。まあ、普段からの傍若無人の振る舞いからしたら、当たり前かな」


カトリーヌは社交界でも噂になるくらい、我が強く、我が儘、態度や振る舞いが悪いと、噂されていた。だが、公爵令嬢であり、王太子の婚約者となると、皆腫れ物に触るように扱い、カトリーヌは益々調子付いた。


「っ……だったらなんですの?そんな事仰るなら、今宵の殿下の振る舞いも如何なものでしょう。曲がりなりにもわたくしという婚約者がいる身で堂々と他の令嬢をエスコートなさるなんて、あり得ません。殿下だって浮気をなさっていますわ‼︎」


カトリーヌは開き直り、浮気を認めた。が、今度はレナードの責任を問う。周囲も、確かにカトリーヌの言い分には一理あると思った。浮気をされたから自分もするなど普通に考えたらあり得ない。だが、カトリーヌがそれをいうのも、また違う様に思えるが……。


「僕は何一つ悪くないよ」


カトリーヌの言葉にレナードはそう返した。


ヴィオラは先程と同じく、暴君とも思える発言に戸惑う。もしかして、女性と男性では立場が違うと言いたいのだろうか。それとも、何れは側妃などを囲うのだからコレは浮気でないと言い張るつもりか……。どちらにしても、余り褒められた事ではない。


ヴィオラは、レナードを訝しげな顔をして見遣る。優しく篤実そうに見えたレナードは、幻影だったのだろうか……そう思うと胸が締め付けられる。


「だって、僕と貴女は既に婚約破棄しているからね」





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