部下を拾いました。 part8
できるだけ毎日投稿しています。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
これの他に長編として『白い紫陽花』という小説も書いているのでそちらもよろしくお願いします。長編は毎週土曜日の午後に更新しています。
その映画は恋愛もので主人公の彼女が死んでしまう少しありきたりな内容のものだった。ありきたりということはその内容で名作がいっぱい生まれているということで決して面白くないというわけではない。むしろ最近は気をてらった作品が多すぎて正直その作品の世界観についていけないものがある。こう言ったシンプルで面白いものの方が自分は感情移入しやすくていい。
「先輩これどうぞ。」
隣で見ていた彼女にハンカチを手渡された。その顔は少し驚いたような表情だった。少しだけ映画の世界から現実に戻ってきた。感情移入しすぎたのか自分の頬には涙が伝っていた。
「ありがと。」
彼女からハンカチを借りて頬伝っていた涙をふく。それを彼女に返そうとすると、
「借りたままでいいですよ。先輩少し涙脆いみたいですし。」
少し笑顔を見せながら、彼女は言う。
「じゃあお言葉に甘えようかな。」
しかし借りたはいいものの集中しているときは自分が泣いていた事に気づかない。借りたハンカチは手で握りしめていた。
映画の放映が終わり、外に出る。自分の目は泣いた影響か少し赤くなって、頬を伝っていた涙も乾燥していた。彼女にトイレに行ってくると伝え、顔を洗いに行った。
「先輩って意外と涙脆いんですね。かわいいところあるじゃないですか。」
「そうか?感動したり、悲しい時なら泣くだろ人間なら。」
「でも男性ってそういうところあまり見られたくないじゃないですか。なんか我慢している印象が強くて。」
「そういうもんかな。」
「そうですね。でも、先輩みたいにちゃんと感動していることを表現できる人の方が印象も好意も持てますし。」
後半の方はモゴモゴしていて聞き取れなかった。何かいいことを言われたような気はするが。それを言い切ると彼女はトイレに向かっていった。
最後まで読んでいただきありがとございます。
良ければ評価、アドバイス等ありましたらよろしくお願いします。