ビターチョコレートシンドローム part 11
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これの他に長編として『白い紫陽花』という小説も書いているのでそちらもよろしくお願いします。長編は毎週土曜日の午後に更新しています。
みんなから祝福されたものの、稲垣は俺に感謝しろとうるさいし、近くで見ていた隆は告白が堅苦しいと、ダメ出しをしてきた。隆の言葉がよっぽどツボだったのか自分を除いた5人は爆笑して、何度も自分の真似をしていた。その輪の中心は意外に友梨だった。
一通り自分のことをいじるのに飽きたのか、それぞれ部屋に別れて時間を過ごすことになった。こっちに来るまでは3つしかない部屋をどうするのか迷っていたが、結果的には何も悩まなくて済む感じになった。
各部屋それぞれに分かれてからはみんな疲れていたのかすぐに静かになった。さすがに隆などがいるので下手なことはできない。隆からは声を抑えなよと茶茶を入れられたがそんなこと誰も疲れてできない感じで、みんなぐっすり眠っていた。
そんな中でも、自分はいまいち眠りにつくことはできなかった。一足先に友梨は寝てしまっていて、話し相手もいない。自分は落ち着くために書斎で1人、思い出の本を読むことにした。じいちゃんが1番大切にしていた古書。じいちゃんが学生時代に亡くなったはあちゃんとしていた交換日記だった。それを、幼い頃に自分はココアを飲みながら読んでいたら、それを溢して汚してしまった。じいちゃんは剣幕を変えて自分を叱った。そのことがトラウマで自分はココアみたいなカカオを使った商品が食べられなくなった。その時の自分は恋人なんかできたことなかったし、今日までそういう経験はなかった。今の自分なら少しでもそのときんじいちゃんの気持ちがわかるかもとその交換日記を開いた。
「滲んじゃって読めないね。」
いきなり登場した友梨にびっくりして思わず声を上げてしまった。
「部屋を出て行ったことに気付いて付いてきちゃった。びっくりさせてごめんね。」
「いいよ。こっちこそごめん。起こしちゃったかな?」
「うんん。いいの。私もなんか実感がなくて眠れてなかったから。そんなことよりこの本は何?」
「ああ。これ?これは、昔、じいちゃんがばあちゃんとしていた交換日記。」
「へぇー。おじいさん、ロマンチックな方なんだね。」
友梨の言葉に耳を傾けながらページをめくっていく。
「大切にしてたものだったらしいくて、小さい頃に自分が読んでたらココアこぼして怒られたんだ。その時は、なんでそんな怒られなきゃいけないのかわからなかったけど、今日初めて恋人ができたから今の自分ならなんかわかるかなって。」
部分部分読めるところはあるものの、内容までは理解できない。
「わかるわけないよ。まだ私と一緒になって1日もたってないじゃない。これから私と一緒の時間を過ごして少しずつわかってくるんじゃないかな?どう?おじいさんたちの真似して交換日記でもしてみる?」
じいちゃんたちとは状況も時代も違う。小さい頃の記憶の中で残っている日記の内容の中には戦争のことが書かれていた。会いたくても会えない状況、いつ死んでもおかしくない状況だからこその言葉。言葉の重みが違う。でも、
「そうだね。やってみようか。」
自分は机の中をあさり、1つのスケッチブックを出した。
「いい日記帳がなかったから、これでいいかな?」
「いいよ。白紙のほうがいろんなこと書けるしね。」
自分は書斎の椅子に座り、友梨はその隣に腰をおろした。
「じゃあ今日だけは、2人で描こうか。」
そうして自分たちは、それぞれ筆を動かし始めた。
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