ビターチョコレートシンドローム part 10
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これの他に長編として『白い紫陽花』という小説も書いているのでそちらもよろしくお願いします。長編は毎週土曜日の午後に更新しています。
書斎だとこの人数が座れる場所はないのでリビングに移動した。
「さて、聞かせてもらおうか。稲垣くん。」
隠されていたことにすこしイライラしていた自分は威圧的に稲垣を問い詰めた。
「いいのか?そんな威圧的で。悪いのはおそらくお前だぞ。むしろ俺に感謝しなきゃいけないはずだ。」
稲垣の横柄な態度にイライラは増すばかり。ここでキレたら、人間として浅くなってしまうためぐっと堪えた。
「なら、何でこんなことしたのかな?聞かせて欲しい。」
「お前まだキレてるだろ。顔に出てるぞ。怖い怖い。友梨ちゃんこんなやつだけど本当にいいの?」
友梨ちゃんに問う意味がその時の自分にはわからなかった。
「いいんです。そういうところも含めて好きですから。」
友梨ちゃんの口から躊躇なく発せられる言葉に戸惑う。
「ななな。何言ってるの?友梨ちゃん。」
「もう、こんな感じでいうとは思ってませんでしたし、進くんから言って欲しかったですけど、今の私は怒ってますから、もう関係ありません。ここまで鈍感な人だとは思いませんでした。なら、こうして目の前に突き出してやろうかなって。」
さっきまでの大人しくおしとやかな感じの友梨ちゃんはどこへやら。
「友梨ちゃんがこんなに怒ってるところ見たことないよ。俺でも。」
「どういうことだよ?」
「あれ?言ってなかったけ?俺と友梨ちゃんはいとこで、小さい頃から知っているんだよ。同じ大学に入ったときに友梨ちゃんがお前に一目惚れして、たまたまお前と友達だった俺がキューピットを名乗り出たわけ。それで夏休みのついでにナンパを装って友梨ちゃんとお前を合わせていい感じにしようとしたわけさ。田口はもちろん知ってるぞ。だって、俺たちはそれぞれ恋人を連れてきたからな。そうすると自然にお前と友梨ちゃんが2人っきりになる。お前の好みは知ってたし、友梨ちゃんがドンピシャっていうのもわかってたからな。どうだ、感謝する気になったか?」
要するに全部仕掛けられていたことで、まんまと自分は稲垣たちの作戦に乗っかってしまっていたということだ。
「てか、お前たち、恋人いたのかよ。言ってくれたらよかったのに。」
「何言ってんだお前。言ったらこの作戦は使えなかったし、何よりお前興味ないだろ。友達の恋路なんて。」
ぐうの音も出ない。確かに聞いたところで興味はなかっただろう。自分の好みの女の子が近くにいても全く気付かないくそ鈍感な男には。自分の情けなさに少し落ち込む。
「で、どうなんだよ。お前。返事は?ずっと、待ってるぞ友梨ちゃん。」
友梨ちゃんは稲垣と話している間も自分のことをじっと見つめていた。改めて目を合わせるのは少し恥ずかしいものがあるが、これ以上自分のことを情けなく思いたくないので友梨ちゃんの目の前に跪き、
「ごめん。気付かなくて。こんな自分でよければお付き合いをお願いしたいです。よろしくお願いします。」
「わかりました。なら、今度は私のことをしっかり見てくださいね。私も進が嫌でも私のこと見てもらえるようにします。」
こうして自分と友梨ちゃんは付き合うことになった。
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