表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/60

斎木学園騒動記3−4

           〜“X”DAY〜

         ☆      午前七時一〇分      ☆


「ふわわあ〜」 省吾が大きく背伸びをする。「朝・・・か」

「朝だな」


 沢村が胸ポケットから煙草を出し、火をつける。一睡もしなかったわりに、二人の表情に疲れはない。

 FOSは、昨日のヘリコプター騒ぎ程度なら平気で起こす連中である。どんなムチャクチャな行動をしてきても不思議ではないので、いざという時のために、徹夜で学生寮の近くの路上に張っていたのである。


「いつ来るんでしょうね、あいつら・・・」

「さて、やつらの事だ、戦車軍団でも投入してくるかもな」

「はは、それだけじゃなくて改造人間がぞろぞろ来たりして、ははは」

 言ってから気づく、相手はFOS、冗談ではすまされないということを・・・・


  二人は空を見上げた。

 スズメが鳴きながら視界を横切り、その上を見事な青空が広がっている。

  今日も暑くなりそうだ。


         ☆         ☆         ☆


「キッドナップぐらいオレ一人で充分だ」

 兵藤は冷たい口調で、新しくなったデスクの向こうの青ざめた軍服に言った。


「いかん、これは上からの命令だ」

「それがどうした」間髪入れずに、兵藤は答える。


 もう、軍服は黙り込んでしまった。一般の部下には平気で怒鳴りつけるくせに、兵藤のようなタイプには心から縮みあがってしまうのだ。

 軍服はのどをヒクヒク動かして、助けを求めるように視線を横へずらした。


 壁によりかかって、二人のやりとりを楽しそうに見物していた男がいた。

 見事に長い金髪、長身である程度のトレーニングを積んでいるらしいたくましい身体、そしてその、いかにもプレイボーイです、と宣伝しているような二枚目ぶった顔。

 兵藤と同じ、FOSの“壊し屋”ジョニー・ハミルトンである。


「まあまあ山猫、ここは私の顔にめんじて、それにたかがジャパンのハイスクール相手にシリアスになっても仕方ナイでしょう。軽いゲームだと思えばイイ」

 両手を上げてまあまあとやりながら、ジョニーはにやにやと笑う。

 じろり、と兵藤はジョニーをにらみつけた。


「勝手にしろ」

 短く言い放つと、幽霊のように部屋から出ていった。

 存在感のない不気味な男である。彼は歩くとき、けして足音をたてないのだ。


 それに比べて、こちらの金髪青年は対照的に明るかった。

 非常に陽気な雰囲気が、全身からにじみ出てくるのである。逆に、いきすぎてニヤけた感じでもある。


「彼はいつも暗いですネ、人生はもっとエンジョイしなければ楽しくないのに。ところで今回の任務はハイスクールを丸ごとツブすって任務でしたネ?」

 軍服は相変わらず青い顔で、首を横に振った。


「どこからそんな話になったのだね?ジョニー、君の任務は山猫・・・・兵藤と組んで、ティンカーベルのキッドナップをするのだよ」

「ああ、そーなのですか、じゃ、ティンカーベルをキッドナップする時に、ついでだからハイスクールも破壊してしまいましょう」

 HAHAHA、と笑いながらジョニーは廊下に出ていった。

 軍服は深いため息をついた。


「まったく、上部も疲れる連中を回してくれたものだ・・・」

 独り言をつぶやいて、軍服は額の汗をぬぐった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ