06 生命の起源
[地球の場合は、原始地球の海水や気象状況により、偶然にアミノ酸が生まれ、偶然に生命が発生したと、言われている。]
「偶然に頼るのは、科学者のやることではないと、考えているのだろう?」
[一つの偶数なら兎も角、偶然に偶然を重ねるのは、どうかと思いますよね?]
「更に、君が疑問に思っているのは、過去の地球を再現してアミノ酸を作れても、いつまでたっても、そこから生命が誕生しない事実。現在の恵まれた環境でさえ、既存の生命に由来しない新たな生命が誕生しない事実。」
[火星とかでも明確に異なる生命の痕跡すら発見されていないのも、気になりますね。地球ですら細菌やウイルスやファージなど、色々な様式が有るのに、他の環境なら、その環境で自然発生する生命が、有ってもおかしくは無い。地球でも、DNAやRNA以外の豊富な生物形態が有ってもおかしくない筈なのに、なかなか見つからない。]
「また、生物発生の物質的材料が揃いすぎている、生物の死骸の中でも、新たな生命体が発生しない事象。つまりは、生物の発生に対して、何者かの意思を感じている訳だね?」
確かにそうだ。偶然だけで物事が解決すれば、理論は必要ない。
1+1が2になるのさえ、偶然と言ってしまえば良いのだから。
そう、言われてみれば、地球の生命発生は、おかしい。
「君の考えを教えてくれないか?」
宇宙/未来人に言われて、記憶を整理してみる。
日本では、高校くらいで生物の遺伝子について学ぶ。
現在、多種多様に見える地球上の生命も、遺伝子構造で見れば、RNA/DNAと呼ばれる遺伝子を持つ生物の一種類しか存在していない。
つまり、地球に生まれた生命は、たった一つで、現在の既知の生物は、それが分化しただけの一種類しか居ない。
DNAを持たないウイルスなどは存在するが、RNAを持たない生物は存在していない現状から見て、地球生物はRNA遺伝子生物の発展型とみる事も出来る。(RNAワールド仮説)
現代考古学上、地球が生まれたのが46億年前。生命誕生が約40億年前。僅か6億年で生命が誕生したのに、その後40億年たった現在、RNA/DNA生物以外は発見されていない。
生命誕生に必要なアミノ酸や蛋白質と言った高分子の無かった40億年前の地球とは違い、それ以後の地球には『生物の死骸』と言う生命誕生の材料が、豊富に有ったにも係わらず、別種の生命体が発生していない。
40億年前との差異は、当時は太陽系天体の衝突が頻繁に有った位で、その様な高温や高圧状態は、現在も火山付近や地球内部で日常的に起きている。
現状、これだけの条件が揃っているのに、新種の生命体が発生しないのは、確率論的にも異常としか言えない。
人間が『科学』を手にしてからも、自然界に存在しない多くの分子を作ってきたが、それが生命らしい動きをすることは無かった。
遺伝子操作で、既存の生命を進化させたり、退化させたりしたが、それは『新たな変容』であって、『新たな誕生』では無い。
これから推測出来る事の一つに『生命は自然発生しない』と『生命は何者かが持ち込んだ』と言う物がある。
しかし、これには『原初の生命は如何にして発生しえたのか?』と『生命を他の星に植民させる必要性が無い』と言う二つの問題が生まれる。
だが、これも『古代の宇宙に生命を持ち込んだのが未来人』と言うのならば、全ての辻褄が合う。
未来人は、己の存在を成立させる為に、未来から過去に生命を持ち込み、発展経過を実現させる為に、歴史に沿って各地の無機質な惑星に生命を植民していく必要性がある。
そうでなければ、既存の生命に由来しない新種の生命体が発生しない理由が成り立たない。
[この宇宙では、生命の自然発生は無く、未来人がタイムトラベルで未来から生命を持ち込んで繁殖させているのでは?]
「フム、フム。君は興味深い見解を持っているねぇ?」
目の前の未来人は、否定はせず、ただ笑っていた。
『RNAワールド仮説』
遺伝子/塩基的に見ると、現在の地球生物は、
1.ウイルスなどRNAだけの生物
2.RNAとDNAが混在した原核生物
3.DNAの核とRNAを持つ真核生物
4.DNAの核とRNAとミトコンドリア(DNA)を持つ真核生物
の4種類に分類できる。
RNAだけの生物は発見されているが、DNAだけの生物は発見されていない為に、RNAだけの生物が、生命体の起源だとする考えが『RNAワールド仮説』。