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02 寄り道

「おいっ。懐かしい星が有るぞ。」


彼等が、そこを通るのは、数万年ぶりだった。

航路表に表示された、その天体は、かつて彼等が関わった惑星だ。


「航路も近いし、予定イベントにも余裕がある。様子を見に行かないか?」


別の者が、パネルで確認をする。


「わずか百五十光年か?このまま進んでも、イベントには二万年の待ち時間が有るが、そこにも駐在員が居るだろう?邪魔にならないか?」

「仕事に手助けが多い方が良いだろう?その報酬に、あの猿がどこまで進化したか、見るくらいは許されるんじゃないか?」

「進化って、イベントスケジュールじゃあ文明くらいで、生物的進化は、まだ先だ。」


自然進化は勿論、介入進化も、起きてないし、行われてはいない。


「まぁ、気にならないと言えば嘘になるな。」


更に分岐する生命体の数に合わせて用意されている彼等には、今現在は時間が余っている。


彼等はユニットの進路を、その惑星『地球』に向けた。

その気になれば、大抵の銀河さえ一秒で横断できてしまう彼等にとって、それは寄り道とさえ言えない行動だった。



---------



「まだ、こんなに居るのか?」


彼等の仕事の一つに、Split Ends/枝毛と呼ばれる者達の抹消がある。


「不確定要素は、抹消しておかなければ、変動するからな。」


『抹消』と言うと聞こえが悪いが、樹木の剪定センテイに似ている。

余計な枝を切り落とさなければ、望む枝の発育を阻害したり、場合によってはバランスを崩して樹木全体が倒れる結末もある。

何より、その先に実るはずの彼等自身が、存在できなくなるのだ。


「未来を守る為に、過去の無害で罪も犯していない者を削除するのも、ライフキーパーの仕事だからな。」

「命を守る為に、命を奪うってのも、一種のパラドックスだね。」

「いや、ソレを言ったら、我々の存在自体もパラドックスだし。」

「存在しても、存在しなくてもパラドックスなのが、我々と現実だよ。」


彼等は、自らを『ライフキーパー』と呼ぶ。

確定した未来を守る為に、滅亡を呼ぶかもしれない不確定要素を排除する。


「我々の時系列に関係の無い物はセンサーに反応するが、草木も含まれるし、何より範囲が狭いから、手助けは多いに越した事は無いだろう?」

「惑星規模の歪みと短距離の検索しか出来ないのが改良されるのは、いつになるやら?兎も角、助かるが大丈夫なのか?」

「ああ。こちらの時間的余裕はある。この惑星とは無関係って訳じゃないから、手伝いたいのさ。」

「今回、好意は有りがたく頂いておこう。では、エリアの分担を。」


両者は、情報の共有を始めた。




「この地球は現在、『人間ヒューマン』の惑星として存在しているんだな。」

「他は、あらかた駆逐された様だ。だが小さなコロニーでも将来的な驚異になる可能性はある。」


移動を始めた応援組は、幾つかのグループに別れて飛び回っている。


ある組は、小さな島国の上空に差し掛かっていた。


「ちょっと待て!反応がある。」


一人がパネルを見て、声をあげた。


「プローブを出して、位置と確認をする。」


ユニットから、幾つもの飛行物体が放たれる。


「これは『河童』か?数百年前に根絶した記録になっているが、しぶといな。」

「周囲にヒューマンが居る。迷彩機能確認。認識阻害も起動している。」

「水中に逃げられると、厄介だ。」

「水中はセンサーの感度が落ちる。ここの枝毛共は水場に潜むらしいからな。ハカドらない筈だ。」

「降下開始する。」


分体を含め、幾つかの者が転送で降りる。

そして、動きを止めた河童の周りを取り囲んだ。


「拘束フィールド展開。一度、ユニットに取り込んでから処分だ。」


『今度は幽霊かぁ?』


「見えているのか?」

「まさか、この状況で?兎に角は捕獲だ。」


彼等は河童を捕まえて、上空に待機していたユニットに転移した。


「なぜ、認識阻害が効かない?」

「一部のヒューマンには効かない奴が居る記述がある。『巫女』『陰陽師』『霊能力者』など、呼び名はいろいろだが。」

「どうする?真下でユニットを確認しているぞ。」

「『幻』で処理するのが普通だが、この場合は『行方不明』か『記憶処置』が妥当だろう。」


彼等は、真下でユニットを見上げているヒューマン『須藤 要』をユニットへ転送した。


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