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03 りんご

 鳥のさえずりが聞こえる。雀とは違う。鶏でもない。何とも形容しがたい高く美しい音色。

 窓から差し込む光は月から太陽へと移り、ほの暗く部屋を照らしていた。


 先程までの痛みは嘘のように引き、腕をぐるぐると回し、伸ばそう…と思った時、視界に異様に白い──病的に白いと言っていいほどの──手が映る。

 明らかに黄色人種の手ではない。

(私、日本人だよね?)

 記憶が確かであれば日本人だったはずだ。三次元は絶対黒髪過激派の日本人……

 唖然として指を見つめているとはらり、と垂れてきた前髪に遮られる。


 それは白銀をしていた。

(私………老けたのかな?)

 現実逃避だ。

 情報処理が追いつかずこの部屋に姿見が無いことをどこかの神様に祈りながら、なんとか自信の姿の情報を頭の隅へ追いやる。

 そしてちらり…と一目だけ己の服を見やるとすぐ、疲れたようにどさっとベッドに体を預けた。


(やっぱり、か…)

 思えばあのグレーの彼が着ていたのもそうだ。私はもうずっと前からあの服装を知っている。

 あれは……

(…あの服は、白薔薇聖騎士団の正装だ。)

 ぼーっ…と細かな装飾の施された天井を見る。何処も彼処も薔薇、薔薇、薔薇……


「はぁ……」

 ため息。


「起きてたんだ……おはよう。」

 突然の声に驚いて飛び起きた。


 そんな私を他所に、彼はベッド脇のテーブルにことん、とお皿を置いた。

 見上げるとさっきと同じ雰囲気の彼。

「…りんご持ってきた、食べよ。」

 そう言うと彼はりんごを一切れつまんだ。うさぎりんごだ。

 それをなんと私の口に押し付けてくる。


「…りんご。わかる?美味しいよ」

 そう言いながらもう片方の手でりんごを食べ始める。

「…りんご、食べないの?」

 答える代わりに、口元にあるりんごをかじった。

 シャリシャリと心地いい音が部屋に響く。


「…美味しい?」

 そう聞き首を傾げてくる彼に私は大きく頷き返す。

「…そっか、よかった。」

 そうしてまたふっ…と笑う。


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