「付喪髪」
「付喪髪」
悪いことをするのが一番のストレス解消だよ。
『止めてくれ! 止めて!』
退屈な講義。
クソダルいバイト。
お前たちは良いよな、働かねえで、勉強しねえで。
働かねなくても、支給とかで生きてけるんだろ?
勉強しねえでもいいだろ、就職しねえんだし。
生きてる価値もねえよ、お前らホームレスなんて。
敗北者、落伍者。
痛め付けても抵抗しないし、誰も悲しまない。
今日もバイト終わり、仲間たちと近くの公園へ。
昼間は綺麗な公園なのに、夜になるとコイツらが寝所にしやがる。
うぜぇ、腹立つ。
お前らはノウノウと公共の場で生きてる。
ムカつく。
ゴミを漁って換金して? 昼間っから酒のんでグウタラ毎日過ごすんだろ?
「バットは?」
「マジでやんの?」
「あたりめえだろ、押さえてろ。」
バッティングセンターに行くのにも金がかかる。
金は、勉強して、良い会社に就職して、稼いでやっと手にするもの。
お前らはボールだよ。
「くっせぇ! こいつションベン漏らしやがった!」
「ウケる!」
「やめ、止めろ・・・」
憲司がホームレス野郎の頭をガッチリとおさえ、
ピッチャー振りかぶって第1球・・・
「止めてくれー!!」
俺はバットをホームレスの頭目掛けてフルスイング・・・
出来なかった。
バットが誰かに掴まれた。
「・・・死ね。屑ども。」
「ああん!?」
振り返ると、歯の生え揃ってねぇ長い白髪のホームレスが俺のバットを素手で掴んでいた。
「離せや、ゴラァ!」
白髪の股間を思いっきり蹴り上げようと・・・
出来なかった。足に白髪が絡み付いて。
次の瞬間、身体が宙に浮いていた。
「はぁ? はぁ!?」
「亮!」
憲司と、木島が俺を助けようと、白髪に掴みかかる・・・
出来なかった、二人の身体にホームレスの白髪が絡み付いて・・・
ホームレスの白髪は、まるで生きてるかのように動き、伸び。
俺たち3人の、身体へと絡み付いてくる。
パニックだ。意味がわかんねえ。
ギャーギャーと叫ぶ憲司と、木島の声が急に止んだ。
「離せ! おい! ジジィ! 憲司! 木島ぁ!!」
「もう、死んだぞぅ・・・」
「は?」
宙ぶらりんになった頭をひねり、憲司たちの声がしたほうを向く。
憲司と木島の首に、白髪が巻き付いて。二人とも顔を真っ赤にして、身動きひとつしなくなっていた。
「次は、お前じゃ・・・」
憲司たちの首から離れた白髪が、俺の首目掛けてゆっくり、ゆっくりと近づいてくる。
「ふざけんな! ゴラァ! おい、ホームレス!
俺たちは未来ある若者だそ! おい! 負け犬! 離せ! 離せよ!」
大きな声をあげても誰も来ないのは俺が一番わかっている。
だから、この公園を選んでホームレス狩りをしてたんだ。
待てよ待てよ!
白髪が、いや所々茶色く汚れたきたねえ髪が俺の首に絡んで、強烈な力で締め上げてくる。
「・・・ツァっ! か・・・ひゅ・・・」
「・・・・・・お前さん方の作る未来なんて、真っ平ごめんじゃよ______」
キルカウント 5