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イヴェールは既に夜闇の侯爵の後継者として仕事をしているらしく、とても忙しいようだった。
それでもマメにエアルに花やお菓子やらを贈ってくれる。
取り寄せ困難な巷で人気のスイーツから侯爵家で咲いた花、仕事先で見つけた可愛らしい小物。
それらに添えられているメッセージカード。
直接会うことはなくともエアルを気にかけていることを、この縁談の本気を示してくれている。
自分のどこをそんなに気に入ってもらえたのか分からない。
けれどイヴェールが大切にしてくれているのはとても実感している。
会えなくても、会えないから、エアルは心が少しずつ綻んでいくのを感じていた。
相変わらずイヴェール直通の連絡先は教えて貰えていないけれど、彼の仕事のことを考えると当然だと思っているし、彼に手紙を書くのはエアルにとって負担ではない。
最近では楽しみの一つにさえなっている。
けれど、それに比例するように姉との溝は深まっている気がした。
最近ではほとんど顔を合わすことがない。
それに妹も戸惑っているようでエアルに対してもミーシャに対してもどう接すればいいのか分からずにぎこちない笑みを浮かべて逃げていく。
仕方のないことだと分かっている。
けれど、それでもエアルは優しい姉と無邪気な妹に振り回される日常が好きで戻りたいと思ってしまう。今はまだ無理でも、いつかきっと――――。
「失礼します。エアルお嬢様、イヴェール様からですわ」
頬を染めて自分のことのように嬉しそうなメイドにエアルは微苦笑を零す。
そして受け取ったものに首を傾げた。
いつもなら花束についてくるのはメッセージカードだけなのに今日は手紙が一緒に添えられている。
何かあったのだろうか。まさか、お仕事の途中で怪我をされたとか。
嫌な想像が脳裏をよぎる。それだけ彼の仕事には危険が付きまとうことを知っているから。
エアルは可愛らしい花に見向きもせずに、震える指で手紙を受け取り封を切った。
文字を目で追うごとに安堵が広がっていく。
それと同時に違う意味で顔が引きつるのを感じた。
「お嬢様?」
いつもならすぐに表情を綻ばせてお礼の手紙を書くのにいつまでたっても手紙を眺めているエアルに、花束を抱えたままメイドが不思議そうに声をかける。
その声に我に返ったエアルは深いため息を吐いて、顔を上げた。
「なんでもありません。今日はアイリスなんですね。
飾ってもらえますか?」
「はい!」
嬉々として花を生けるメイドに微笑んでエアルはもう一度手紙に視線を落とす。
手紙に書かれていたのは中々時間が取れないことへの謝罪と少しの世間話。そして夜闇の侯爵家への招待。
断るという選択肢はない。
エアルも直接イヴェールに会いたいと思わないでもない。
少なくとも贈り物のお礼はきちんと伝えたい。
ただ、父に話したらまた面倒なことになりそうだなと思うだけで。
いつもなら頼りになる姉には頼れない。
「お母様に相談しましょう」
伯爵家から嫁いできた母はこういう時どうすればいいか詳しいはずだ。
嬉しいはずの招待に素直に喜べないのがなんだか悲しかった。