005 妖精の秘密
妖精を保護したこ事を父上に知らせるために村人を走らせて、僕は護衛と共に滞在予定の屋敷に向かった。
「ただいま戻りました」
「アレちゃん、お帰りなさい。お手柄だったわね」
屋敷に戻ると母上が出迎えてくれた。
「この子が保護した見目妖精ね。ふふ、お人形みたい」
母上は妖精を見てそう笑った。
「抱っこしたいのだけれど、無理そうね」
妖精を抱いてみたいようだったが妖精が僕の服を握って離さなかったので諦めたようだ。それから父上に知らせを出したので直に戻ってくる事を伝えると父上の出迎えの準備をすると言って母上は行ってしまった。
僕はというと妖精を降ろせないので泊まる予定の部屋に行き妖精を抱えたままベッドに横たわった。6歳の体で体力が限界だったのだ。そのままうとうとして眠ってしまうと夢の中に女神さまが出てきた。
「ちょぷしはどう、アレくん。寝ている所を起こすのは悪いから夢の中で話をするわね」
「わざわざ夢の中にまで出てきて何か重要な話でもあるのですか?」
「アレくんが保護した妖精についてちょっとね。その子…というよりもこの大陸の妖精は通常の妖精をベースに私が魔改造して生み出した種族なの。本来は英雄をサポートするために生み出したものよ。でも成功したのはベルマンの初代だけ。あとは欲に狩られた人間が妖精を狙って妖精を守るためにベルマンが戦うの繰り返し」
そう言うと女神さまは僕の目を見て行った。
「サイズが大きくなる妖精は本来妖精の女王となるはずだった。でも妖精族を生み出したとき私は新米の未熟者で大きくなった妖精が追い出されるだなんて考えていなかった。女神である私は地上に直接の干渉が出来ないから今までは見守るしかできなかった。けれどもアレくんがベルマン家に生まれて新しい女王が誕生したことでようやく私が干渉できるようになったわ。何しろ転生者には情報を与える事が許されているから。これは契約とは関係のない私からの『お願い』。あの妖精の子を育てて。そしていつの日か人間と妖精が仲良く暮らせるような環境を作って」
女神さまは僕にそう『お願い』をしてきた。そして僕が返事をする前に姿を消して、僕は目が覚めた。
「女神さまの『お願い』か…」
ゆるみ切った顔で眠る妖精を見てそうつぶやいた。
「ふにゃ」
「ああ、起こしちゃた?」
「お腹空いた」
妖精は気にせずに僕の周りを一回りするとそう言った。
「じゃあ、何か食べ物を貰いに行こうか」
そう言って僕は妖精の名前をまだ聞いていないこ事に気づいた。
「そう言えばまだ名前を聞いていなかったね。僕の名前は『アレク』だよ。君の名前は?」
「名前?何?」
そう言って妖精は不思議そうな顔をした。そう言えば本で読んだけれども妖精族には名前という概念が無かったけ。名前どうしようか?父上が考えているのかどうか。
僕が考え込んでいると妖精が頬を膨らませていた。
「『アレク』名前。名前、欲しい」
どうやら名前という概念を理解して自分ぼ名前が欲しくなったようだ。これは僕がつけないといけないようだ。父上がつけても受け入れてくれそうに無い。
名前どうしようか…
「名前、名前、名前!」
妖精はそう言いながら僕の周りを飛び回った。
「『ティターニア』」
僕がそう呟くと妖精は飛び回るのを止めた。
「『ティターニア』それが君の名前だ」
安直だけれども地球のおとぎ話に出てくる妖精の女王の名前を与えた。ちゃんとした意味も願いもあるし人の名前は一生ついて回るものだ。だから妖精の女王の名前を選んだ。
「ティッタ…ニア!」
妖精…ティターニアはうまく発音できずにそう言った。
「ティッタ…ニア!ティッタ、ニア!ティッタ!」
そして発音を繰り返すたびに少しずつ変わっていき最後にはティッタになった。こうして妖精の名前は本名『ティターニア・ベルマン』。愛称ティッタになるのだった。