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転生貴族少年 アレク・ベルマン  作者: はくちゃん
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002 文字を覚えよう

 僕の名前はアレク・ベルマン。女神さまと契約を交わして異世界に転生した元地球人だ。女神さまが用意してくれた転生先は王政の国ソーラの領地持ちの貴族、ベルマン侯爵家だった。僕はこのベルマン家の当主の正妻が生んだ長男というほぼ跡取りが決まっている立場の子供として生まれた。


 5歳になった頃に人格と前世の記憶が安定したので僕の人生の物語を語ろうと思う。ちなみに一人称が『僕』なのは年齢に合わせて僕を使っているので自の文で『私』を使うと紛らわしいからである。成長して大きくなったら『私』を使うつもりだ。


 さて物語を語る前に僕の生まれたベルマン家について語ろうと思う。


 ベルマン家は前述したように領地持ちの貴族の家である。当主に与えられた身分は侯爵。今ソーラには世襲制の公爵家が存在しないので世襲制の貴族の家としては最高位に位置する。そしてベルマン家はソーラの中心に位置して交通の要所を抑えているので流通で儲けている。これはソーラの王都が建国王の故郷に存在しているからだ。ベルマン家は王家から最も信頼されている貴族の家だから一番重要な土地を任されているとベルマン家の当主である父上は言っていた。


 つまりベルマン家は内政チートをしなくても十分に裕福な家だと言う事だ。貧乏だったり権力がなくて周りに振り回されると言う事は無い。その分国に対する義務も多いそうだが。


 そんな裕福な家に生まれて物心ついた僕が最初に始めたのは文字を覚えることだった。基本的な会話は言語チートか赤ん坊の頃から聞いてきたおかげで分かるのだけれども文字を読むことは出来なかったのだ。


 そこで本を読んでもらって文字を覚えることにした。幸い裕福な家なので本はたくさん有った。そして女神さまが選んでくれた両親の子供に生まれたおかげか学習能力は高かった。メイドの膝の上に座って(決してやましい気持ちからではなく朗読された文字を追いかけるためである)本を読んで貰いそこから読み方を覚えようとしたのだ。


 その努力のかいもあって3か月後には一般教養レベルの文字は読めるようになった。読めるようになったのだけれどもあくまで独学なのでどこまで正しいのかは分からなかった。そこで父上にできる子を装って正しく読めるかどうか見て貰おうと考えてきた時女神さまが僕の前に現れた。


「あ、女神さまこんにちは」

「自我と前世の記憶は安定したようねアレくん」


 アレくん。女神なのにフレンドリーな呼び方だ。


「人格と記憶が安定したのなら強くなって貰わないとね。という訳で魔法の訓練を始めようと思います」


 女教師ルックになった女神さまはそう言って僕に魔法を教えようとした。


「女神さま、やっぱり異世界ファンタジー的に魔法は小さい時から練習した方が魔力が多くなったりするんですか?」

「いいえ、そんな事は無いわ。魔法力は完全な肉体依存よ。魔法操作もスタートが早ければその分有利になるけれども早ければ能力が上がると言う事は無いわ」


 もっとも子供の時に訓練を始めた方が習得度は上がると女神さまは付け加えた。


「じゃあ魔法は後でいいので読み書きの練習に付き合ってください」

「読み書き?そう言えば会話は言語チートを与えたけれども文字の読み書きは何の加護も与えていないわね。いいわ西翼の文字に中胴、東翼の文字。あと古代語も教えてあげる。あとこれもあげるわ」


 そう言って女神さまがくれたのは鉛筆サイズの棒だった。


「転生者全員に配っている簡易版の魔法の杖よ。これに魔力を込めてこうすると空中に文字を書けるようになるの」


 女神様はそう言って僕の目の前で杖を使って光る文字を書いた。


「これが有れば文字の練習ができるわよ(ついでに魔力の扱いの訓練もね)」

「ありがとうございます。ペンは先がとがっていてまだ触らせてもらえないので助かります。でも魔力はどうやって込めればいいのですか?」

「大丈夫、これから教えてあげるから」


 こうして僕は女神さまから文字の読み書きを教わる事になった。そしてこの時気づかなかったのだけれども、女神さまは杖に干渉して少しづつ魔力のコントロールの妨害をしていた。そのおかげで他の転生者が魔力のコントロールの訓練をしているのに対して、僕は他の事をしながら魔力のコントロールの訓練をするという一歩進んだ訓練をすることになり、魔力のコントロールの錬度が他の転生者よりも上になっていた。


 そしてもう1つ、女神さまが僕のそばにいることに家の者が気づかない様に女神さまはメイドの姿で認識障害の魔法を使った。そのせいでベルマン家に『誰も知らないメイド』という怪談話が生まれる事になったのだった。

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