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格差社会

同じ立場にいる選手達。

年齢、能力、それらが変わっていても、彼等はプロという職に付いている。凡が必要とされるところではない。

しかし、プロも並べば序列が生まれるのだ。



「鈴一もヒットだーー!これでノーアウト3塁1塁!」



一度、強い存在が流れを手にすれば緩めたり、離したりなどせず。敵が戦うという気持ちを無くすほどの力を出す。短期決戦では奇策も重要であるが、なにより力の差を思い知らせるほどの結果も重要だ。

シールバックが誇る、層の厚い中継ぎ陣を粉砕するためのメッタ打ちだった。



「クソ……」



まだマウンドに立つ吉沢。すでに1回と2/3を投げて、7失点。

緊急登板以外でこんな早くにマウンドに上がったことはないが、しかし、このことに合わせて調整していたのだ。100%の力を出しても抑えられない打線。

それが研究されていることだろう。



「先発は神里と川北以外は怖くはない。(久慈の打撃は怖いが)」



澤監督のゲームプランは相手の弱点、あるいは替えの効かない部分を集中的に攻撃することだった。チーム力があるからこそやれる考え方。

強いには勝てないが、弱いには絶対負けない采配。



「打撃重視で点を獲り、強力な中継ぎで失点を防ぐチームカラー」



守備面では徹底的に得点源を封じ、打線ではとにかく中継ぎに対して十分な研究を行なっていた。その練習もしてきたオールビー。



「1番、2番、3番を封じればシールバックの得点源は無くなる。友田と新藤は確かに良い選手だが、プレイスタイルは一貫していて対応しやすい」



ペナントレースでは多くの試合でビッグチャンスなり、ビッグイニングを築いた2人が、この試合ではほぼ動けない状態。徹底した配球と守備陣形によって、友田と新藤は思った以上の活躍をさせてくれなかった。

当然、2人の代わりなどいるわけがないし、長距離砲である河合も2人が活躍できないのなら、自分がホームランを打って追い上げようと狙う。

ベアストーンとの対決では悪球打ちでホームランを放ってみせたが、それはある程度予測してなければ対応できないし、際どいコースでなければ意味はない。


友田と新藤を封じれば、河合を封じられるパターンが現れることも予測済み。


焦るなり、怒りなりで冷静にボールを見極めることができず、完全なボール球を打たせて内野ゴロ。



「くそっ!ひっかけた!」



強力打線を引っ張るはずの1番~5番が、7回まで無安打。あやうくノーヒットノーランになるかとも思われたが、5回にようやく木野内がヒットを放った。(また、2回に林が四球を選んでいる)

ギリギリで最大の屈辱を回避したが、ここまで完璧に抑え込まれたのは今シーズンでは数えられるほどしかない。特に新藤を抑えられているのが、シールバック全体に響いている。

そして、打たれることに慣れている投手陣だが、そーゆう結果はいかんせん守備範囲が狭いシールバックだからこそなってしまうだけで、ここまでボロクソに打たれたのは初めて。特に中継ぎ全員が打たれまくったのは初めてだ。



「守備の穴を突き、果敢な走塁で投手と守備を掻き乱す」



打撃は基本通り。難しい球には一切手を出さず、ヒットにできる球を打つことを心がけている。

その一方で打ちまくっている方向が顕著にでてくるのが、シールバックのセンターライン。全打者がピッチャー返しを心がけている。セカンドを守る新藤の守備範囲の狭さ、センター友田の緩慢な守備。鈴一やホモリンが塁に出れば、盗塁もキッチリ仕掛けてくる。強肩だが送球が逸れやすい河合の特徴を知り、彼のミスを誘っているのだ。



打者として期待される3人を封じ、彼等の弱点をこれでもかと突きまくる。

主力を封じることでチーム全体の戦意を削っていき、自信すらも奪っていく。



3回表、

吉沢を降板させ、3番手の植木を投入する阪東。右のアンダースロー。オールビーが在籍する東リーグにはアンダースローの投手はいない。得点差が大きく広がったとはいえ、何かしらの収穫を得たい気持ちがあった。

植木がこの勢いを抑えてくれたらと……。



「確かに東リーグにはアンダースローの投手がいない。(西リーグのアンダースローも、泉と植木しかいないけど)。だが、相手に合わせて打撃投手をしっかりと雇っている」



サウスポーや変則サイドスローよりも希少なタイプの投手。研究だけでは当然足りない。実際、オールビーの大ベテラン以外はプロレベルに匹敵するアンダースロー投手との対戦経験がない。

これまでの投法とは違い、球筋も違うからこそ戸惑いもある。



「なるほど」



初めてアンダースロー投手と対決する白原。ストレートの軌道はオーバースローと異なり、浮き上がってくる。シンカーは左打者からすれば外へと逃げながら落ちて行く。

泉と違い、植木はパワータイプのアンダースロー。実際、泉より球速は速い。ただし、球種の一つ一つにノビとキレはない。

軟投派の極致にいる泉に対し、アンダースローという希少さと正確なコントロールで活躍してきた植木だ。力の差が歴然としている時、騙し騙しで逃げられるわけがない。



キィィィンッ



「白原!植木のシンカーを捉えるツーベース!!オールビー打線が止まらない!」



植木と対峙する際、優先するべきはセットポジションにさせることだった。アンダースローは性質上、クイックが上手くいかない。(上手い選手もいるが)。植木のクイックはとにかく下手。それを修正させなかった、あるいはできなかったのは阪東達、指揮官の責任もあるだろう。

走者が出ればとにかく走った。得点差もある中で盗塁を敢行するのは、フェア精神に反するが。すでにシールバックに今日は勝つ見込みがないと伝えるだけでなく、この全国シリーズはもう終わっていると告げさせる。



「なんと白原、三盗を決めました!無警戒かつ、この得点差で盗塁をしてきました!」



死体蹴りに近いが、プロでなくても試合だ。死体蹴りをして何が悪い?



「獲れる時、点をきっちり獲るのが野球だ」



植木のクイックの改善ができていないことを明確に伝える盗塁だった。走者を置いた状況では、植木は使えないと全体に知らせる一手。ただでさえ、守備がボロボロで投手まで弱点を晒されれば、立て直しなんてできるわけがない。この短期決戦では特に。

走者を意識し過ぎればコントロールと配球が雑になる。いくらアンダースローでも、甘いコースにくれば当然打たれる。長打ではなく、あえて盗塁という武器が有効な単打で繋げて来る。



打者に対しての研究だけでなく、投手の研究も完璧にされている。一番投げ辛い状況を常に作っていく、オールビーの勝つ野球。



植木も1回、3失点という内容。3回表を終了し、シールバックは10失点!!エラー2つ、四死球3つ。被安打11。投手も守備も、打線も総崩れの三戦目であった。




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