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成績確定


「阪東さーーん!阪東さーーん!!」


津甲斐監督は走り出していた。


「どこに行ったんですかーー!?」



プロ野球。

東リーグ、全6球団。十文字カイン、AIDA、徳島インディーズ、時代センゴク、ダイメトルズ。

そして、シールズ・シールバック。



阪東孝介という別の世界からやってきた野球人はシールズ・シールバックの指揮を執り、見事ペナントレースの優勝に導かせた。

最終戦までもつれ、それも9回までビハインドを背負った苦しい展開を打破してみせた。その試合だけに関わらず、多くの試合で勝ちを拾った指揮や作戦を取り続けた。



「せっかく、優勝したんですよ!」



ペナントレースを終え、優勝したその瞬間。阪東孝介がグラウンドからいなくなっていた。色々なところを回っていた津甲斐は5番目に行きそうなところに顔を出した。



「やっぱり、やっぱりここに居たんですね。祝勝会ですよ!」

「津甲斐監督か」



優勝インタビューですら断り、勝手にベンチから消えてしまった阪東。彼が居た場所はシールバックの本拠地のスタジアムであり、試合前に選手一同、スタッフ一同が行くミーティングルームであった。

津甲斐の息は当然荒かった。走りまわっていた。乱れる呼吸。しかし、それらがすぐに止まってしまう。阪東が向かい合って話す人物。



「津甲斐監督。とりあえず、ペナントレース。優勝おめでとう」

「!いっ……布宮社長!?」

「不謹慎だな。とても嫌な顔を私に見せてくれるな」



布宮と阪東。

シールバックの関係者の内、この2人だけは決して喜ばずに先を見ていた。布宮は社長としての意見を阪東に聞きたかった。


「素晴らしい。あなたが指揮を執ったことでシールバックがペナントレースを制することができた」


言い方もその拍手も、まだ半分だと言っている。


「おかげで業績も良くなって来ている。だが、足りない。もう一つの優勝が必要なんだ」

「知っている。もったいぶる必要はないぞ」



厳しいペナントレースを制した後に来る次のステージ。

西リーグの覇者との決戦。全国シリーズとここで呼ばれる7連戦が10日後にある。



「勝てるのか?」


同じく、ペナントレースを制したチームに尋ねることではない。しかも、優勝したチームの社長が口にしていいものじゃない。



「"RTB・オールビー"、東リーグ10連覇、全国シリーズも9連覇している怪物チームだぞ?」



東西合わせて12球団。これが2つのグループ、東西と分かれていた。しかし、そんなチーム分けなどあまり意味を成さないと、野球関係者は語る。

なぜなら、"RTB・オールビー"があまりにも12球団の中で抜きん出ているからである。



「勝たなくてどうする?全国優勝は奴等を倒さなきゃならないんだ」


阪東は理由、保障などまったく語らず。自信のみで布宮に伝えた。



「私は素人だ。理由は必要ない」



勝てない勝負をするな、そーいう経営者らしい言葉も使わない。


「言った以上、勝つしかない」

「布宮社長の気分なんて、俺にも選手にも意味はない」

「良い言葉だ」



嫌な話。布宮は会社の利益を求めている。昨年、タイトル保持者ばかりだったためか、選手達の年俸が跳ね上がり財を圧迫していた。

一方で今年は目立ったタイトルホルダーが少ない。にも関わらず、優勝するというのは采配の上手さとしか言いようがなかった。



今年の選手成績。


本塁打、

1位、河合正幸 51

2位、荒野静流 43本(徳)

3位、徳川家靖 42本(戦)



打率

1位、新藤暁 .387(シ)

2位、杉上俊杜 .351(十)

3位、曽我部衛司  .348(十)

3位、小田信長 .348(戦)


打点

1位、徳川家靖 149打点(戦)

2位、曽我部衛司 146打点(十)

3位、河合正幸 142打点



安打数

1位、杉上俊杜 208安打 (十)

2位、小田信長 194安打 (戦)

3位、曽我部衛司 193安打 (十)



出塁率

1位、新藤暁 .492 (シ)

2位、菊田克則 .413(徳)

3位、曽我部衛司 .403(十)


盗塁

1位、杉上俊杜 53盗塁 (十)

2位、大隣 43盗塁 (徳)

3位、森村 28盗塁 (A)



防御率

1位、牧真一 1.94 (戦)

2位、石田  2.36 (A)

3位、大鳥宗司 3.07 (徳)



勝利

1位、牧真一 20勝 (戦)

2位、ダイアー・ヌルト 17勝 (戦)

2位、石田 17勝(A)

3位、川北南虎 15



ホールド

1位、井梁廉 43ホールド (シ)

2位、沼田  42ホールド (シ)

3位、犬飼  38ホールド (戦)



セーブ

1位、泉  49セーブ (徳)

2位、屑川 37セーブ (戦)

3位、安藤 32セーブ (シ)


奪三振

1位、牧真一(戦) 258

2位、石田(A)  218

3位、白石(A)  209


ベストナイン

ピッチャー、牧真一(戦)

キャッチャー、河合正幸

ファースト、曽我部衛司(十)

セカンド、新藤暁

サード、荒野静流(徳)

ショート、小田信長(戦)


外野手、杉上俊杜(十)。友田旦治。徳川家靖(戦)。



ゴールデングラブ賞

ピッチャー、大鳥宗司(徳)

キャッチャー、名神(徳)

ファースト、曽我部衛司(十)

セカンド、高崎栄太(十)

サード、林誠

ショート、小田信長(戦)


外野手、徳川家靖(戦)、バナザード(徳)、新潟芳樹(十)



MVP、新藤暁

新人王、千尋万治12勝。

沢村賞、牧真一(戦)。

カムバック賞、菊田克則(戦)。


月間MVP


3、4月、新田(A)、牧真一(戦)

5月、新田(A)、千尋万治

6月、徳川家靖(戦)、泉蘭(徳)

7月、荒野静流(徳)、牧真一(戦)

8月、河合正幸久慈光雄

9,10月、新藤暁井梁廉



「シールバックの良いところは打線と、西リーグ一の中継ぎだった」


今年の結果が出るよりも早くに知っていた阪東。

井梁と沼田。セーブこそ少ないが、中継ぎの仕事もしていた安藤を含めた3人の中継ぎは西リーグでもトップレベル。

その後ろには植木、吉沢、ケントなどの、投手が控えていた……。先発が6回まで試合を作ればかなりの確率で勝てていた。

さらに打線も新藤と河合を中心とし、リーグトップのチーム得点を記録。



「新藤の出塁率が4割9分だったんですね。2回に1回は出塁しているなんて」

「新藤が全試合に出場していたらもっと楽に優勝ができたんだけどな」



ギリギリ規定打席に到達したことで首位打者と最高出塁率を獲得した新藤。


「とはいえ、運が味方した。"AIDA"の新田の離脱、前半戦で他球団のエースとの勝負が少なかったのも優勝できた理由だ」



タイトルにはあまりいない"AIDA"の選手。シールバック側の不敵際であったが、新田が夏から最後までプレイできていたら……。

シールバックの優勝は難しかっただろう。

中継ぎは優秀だが、頼れる先発が川北と神里の2人のみという厳しい状況。


優勝しながら、2桁勝利を達成した先発は川北、神里(13勝)、久慈(11勝)の3人だけであり、次に来る勝利は中継ぎでビハインド登板を軸に投げていた吉沢(10勝)、植木(9勝)であった。

ハッキリ言って、



「短期決戦の投手陣じゃない」

「実力差がある上に痛いところを言ってくれるな」



短期決戦はモロに先発の厚さがモノを言う。計算できる先発は3人だけであり、久慈は投手としては3流。打者は一流という扱いが難しい投手。神里もせいぜいイニングを喰えて6回という短いものだ。

中継ぎの酷使も目に見えているが、相手の強力打線とまともに戦える投手は井梁ぐらいだろう。



「打撃の方では河合と新藤の2人が目立つな。友田と嵐出琉、尾波は一体どうした?」

「今年の打撃のレベルが高いに尽きるよ、布宮社長」



嵐出琉は打率3割を切っているが、友田と尾波は3割越え。

それでも十文字カインと時代センゴクの野手陣の奮起が著しく、ベスト3に入らない。


「友田が最多二塁打と最多三塁打を記録してる。尾波は比較的安定しているし、嵐出琉の得点圏打率はリーグ5位だ。打線は間違いなく、西リーグトップ。爆発力が上手い事短期決戦で発揮できれば……」

「するのか?センゴク以上の先発陣、インディーズ以上の守備陣、打撃は我がシールバックを超えているそうだ」


東リーグを制したオールビーのチーム成績は


チーム成績:

101勝45敗4分。

打率.287

防御率2.38

318本塁打

267盗塁

968得点


ベストナイン9人。ゴールデングラブ賞9人。



「選手全員が東リーグの頂点に君臨している最強軍団だ。時代センゴク、十文字カイン等とは格が違う」

「ハッキリ言って東リーグ全体が弱い。名に怯えた連中ばっかだ。確かに10連覇を経験している選手や監督もいるが、関係ないな」


圧倒的なチーム成績を誇っているオールビーの前に、淡々と当然のような返しができる阪東。発想の柔らかさとポジティブな思考が采配にも影響しているだろう。布宮は脅すつもりで言ったが、やはり無用だと阪東の前で感じる。



「対策があると思って良いな?」

「布宮さんにも、津甲斐監督にも、まだ言うつもりはないがな」


会話を聞くだけで阪東の底が気になってくる。

特に津甲斐はその怪物チームを相手にどんな手を考えているのか、彼の采配をまた現場で見られる楽しみを知る。


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