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飲み会




 奈央が居酒屋に着いた時には、すでに、飲み会は良い雰囲気ができあがっていた。

 設計部の男たちが、私に対しての態度とは全く異なって、優しく紳士的に事務の女の人たちに接していることが遠目からでもよくわかる。

 さすがに、こんなにあからさまだとすこーし落ち込むものがある。まあ、どうでもいいけどね。


 私は、お店の中を見回してみると、折橋の姿が目に入った。

 折橋は、設計部や魔法部の先輩方と何やら熱く語っている。新商品のことについて意見を交わしているのであろうか、この間のミスの話でもして笑いあっているのだろうか、なんの話をしているかはわからないが、見ているだけで楽しそうなのが伝わってくらい盛り上がっていた。


 私も、そっちに行って会話に参加したいな!と思った。しかし、折橋たちは部屋のずいぶん奥まったところで話し合っていることもあり、そこには行けそうにもなかった。


 んーしょうがないなと、とりあえず近くの空いている席に適当に座った。座って見るとそこは、言い方は悪いが少し寂しいテーブルだった。

 女の人のテーブルからあぶれてしまった男たちの、墓場とでもいえばいいような雰囲気であった。


 ただ、何人かは、それでもなんとか隣のテーブルの話に入ろうと、必死にくらいついている人もいた。


 一応ここに女が来たんですよーなんて、心で思ったが皆、隣のテーブルの言葉を拾うのに必死であったり、勝負を諦めぼーっとしていたりと、誰も反応してくれることはなかった。

 自分で、店員を呼んでとりあえず生を頼んだ。


 生ビールを一人で、ぐびぐびと飲み、目の前のポテトフライをつまみながらあたりを見渡した。

 皆、恋人つくり(まあ、恋人じゃなくてもいいのかもしれないけどね…)を頑張ってるなーと感心する。


 すると、設計部の同期が事務の子と仲良くしている姿が見えた。

 前々から、あの二人はいい感じだよな…もしかして付き合ってる?てか、そろそろ結婚とかしちゃうのかな?そんなことを考えていると、最近、友達の結婚式に行くことも多くなってきたことを思い出した。


 ---こないだいった友達の結婚式は、本当に綺麗な会場だったなーそんな綺麗な会場の中でも、一番綺麗に輝いていたのは新婦だったなー

 友人たちも、綺麗に着飾っていた。そのなか一人スーツだったのが少し恥ずかしかったのを思い出した。


 でも、式の前ギリギリまで会社にいなくてはいけなかったし、まさか、着飾った格好で会社に行くわけにも、途中で着替えるわけにもいかなかったし、しょうがなかったのよと、自分で自分に言い訳した。


 ---また、今度結婚式に行かなくちゃいけないのよねー。式の日程までに服買いに行く時間はないな…。もう、恥ずかしいけど、めんどくさいからまたスーツでもいいわよね!!ご祝儀を用意しておかなくっちゃなーっていやいや、それどころか、そろそろ、子供が産まれる予定のある友達もいるんだった。出産祝いも用意しなくちゃいけなかったんだー


 そんなことを思っていたら、ふと、自分の周りが結婚したり、子供生んでいる事実に、もう、私もそんな年になったのか…と少し感傷深い気持ちになった。


 そんなときに、ガタッと隣に人が来たことが分かった。

 隣に来たのは、佐々木だった。


「えっ佐々木?なんでこんなとこに来たのよ?」

 佐々木は、事務の女の人たちに大人気である。まあ、見た目だけ、そう見た目だけ!は良いからなーと納得ではある。

 だけど、中身は、ただのガキだけどね!!なんで、事務の女の人たちにはそれが分からないのか疑問だ。


 そんなモッテモテの佐々木が、こんな墓場に来る理由が全く分からなかった。いつも女の人に囲まれているイメージだ。

 あれっでも、よく思い出してみたが、イメージだけで、こういう合同の飲み会の時、実際に佐々木はいつもどんなところにいるのか分からなかった。


「他に空いてない」

「嘘つかないでよ。女の人たちが、あんたを待ってるよ」

 こっちを複数の女の人がキッと睨んできていることがひしひしと伝わってくる。綺麗な顔が台無しだから、そんな怖い顔をしないでよ。そう、必死に心の中で訴えかけても、事務の女の人たちの目つきはきつくなっていく一方である。


「それが、めんどいんだよ」

「いいね、そんなモテてみたいものだよー」

 奈央は、呆れたように返事をした。

 モテるのが面倒なんて、そこらへんで、勝負に負け死にかけた顔をしている男たちに聞かせてやりたい。

 その瞬間、こいつの首は締められるだろうと、想像してなんだか笑えた。


「お前じゃ無理だろ」

「相変わらずむかつくな!私だってその気になれば!んーいや…完全に男扱いだから無理か…」

 言い返してやろうと思ったが、やっぱり無理だと諦めた。

 この飲み会での扱いからしても、誰一人からも女と思われていない状態である。


 そもそも、会社に入社してから、こんなに男に囲まれているにも関わらず、一回も声をかけられることすらなかったのだ。

 なので、モテるなんて去勢をはったところでむしろむなしくなるだけだった。

 こーんなモッテモテの男と恋愛面で戦っても勝てるはずもないので、静かに敗北を認めたのだ。

 

「俺がコーチしてやるよ!」

「コーチ!?」

 急にこいつは、なに言ってんだとビールを少し噴き出してしまった。

 ---せっかくのビールが…まったく!もったいないじゃないの!!

「お前、汚い」

「あんたが急に変なこと言うからでしょ。コーチって何なのよ?」

 お手拭きで、汚れた箇所をふきながら、言い返した。


「お前みたいなのでもモテられるように、俺がコーチしてやるよ。モテコーチってやつだな」

 にやりと笑ってそう言う佐々木の顔を見て、見惚れるなんてことは一切なく、心の底から苛立った。

 なに言ってやがんだこいつ!うぬぼれてんじゃねー!!と言いたいが、佐々木がモテることは知っているから言い返すことが出来ないのが何とも悔しい。




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