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開発部




 奈央は、会社に入社してから、気づけばもう2年経ち、まだまだ若手だがもう3年目と、後輩もいるような立場となっていた。


 今日も、少し早く会社に向かい、奈央はパソコンに向かって作業をしていた。

 まだまだ、駆けだしではあるが、最近では少しずつ設計の作業を任してもらえるようになってきているのである。

 そのため、すこしでも、仕事を進めたくて、早めに会社に来ては遅くまで設計図をいじり続けるという日々が続いていた。


そうしていると、後ろの方から、女の人たちが華やかで、少し媚びたような声であいさつするのが聞こえてきた。

 奈央は、あーあ今日もあいつが来てしまったんだと少し頭を抱えた。


「今日も泥臭い事やってんなー」

そういって、今日も、今日とて、私のパソコンを覗き込んできながらつっかかってきたのは、家電部門の魔法部所属している同期の佐々木である。

「朝の開口一番がそれなわけ?それとも、正しいあいさつの方法を知らないの?」

 こっちも負けずに言い返した。私の言葉に、佐々木の口端がピックひきつったのを見逃さなかった。

 その顔を見て今日は私の勝ちだなと、顔がにやけた。毎日私達はこんなやり取りをしている。


 すると、そこに折橋がやってきて、あいさつをしてきた。

「おはよー。お前たちは今日も仲良いなー」

「「仲良くない!」」

と、今日も見事にはもってしまった。

 それを見て、折橋は笑いだし、私達は、バツが悪くなってしまった。

 その後、私達は、それぞれ折橋にあいさつにして、皆、席に向かっていき仕事を始めた。


 佐々木は、この2年で、魔法部のエースと言われるくらいに成長していた。

 私からしたら、人間としては全く成長してないようにしか思えないけどね!


 そんな佐々木に負けてなるものかと、私だって成長してやる!と対抗意識を燃やして必死でやってきた。

 そのおかげで、設計部では、いないと困る存在くらいにはなった…はずだと思う…きっと!…多分…


 なぜ、設計部の私の後ろの席が魔法部の佐々木の席なのかというと、商品開発部の中でも、設計部と、魔法部は、密接に協力する必要があるため、同じフロアに入っているからである。

 ただ、こんなにも佐々木と席が近くなってしまったのは運が悪いとしか言いようがないが…


 そもそも、なんで、設計部と魔法部が密接な協力関係が必要なのかというと、魔法で制御することを考えて設計をしなくてはいけないし、魔法で動かしたいように設計をする必要があるからである。


 このことからも、大概どの部門でも、設計部と魔法部は同じフロアにいて、よく打ち合わせをしながら、一緒に製品をつくっていっている。


 家電部門でも、よく設計部の先輩方と魔法部の先輩たちが打ち合わせをしながら製品開発を行っているのを目にする。実際に、その打ち合わせに参加させてもらったことも何度かある。

 お互いの意見を主張しあうために、なかなか話はまとまらないが、最善を目指して妥協することなく頑張っていることが分かる。

 そんな先輩方の姿を見て、やはり、物づくりは熱い気持ちでやっていかなくてはいけないんだ!と強く感じていた。


 また、同じフロアには、事務の人達もいる。その人たちは、私達、家電部門への質問電話の受け答えや、事務作業をしてくれている。

 事務は、女性が多い。設計部、魔法部は男ばかりである。事務の方たちがいるおかげで、このフロアの男女比は6:4くらいになっている。

 そのこともあり、製品開発に区切りがつくと事務の人を交えてよく合同で飲み会する。


 設計部、魔法部は、女性と関わる機会が本当に少ない。

 もちろん、職場に女が少ないこともあるが、合コンなどもやろうと思うにも、なかなか残業などがあり、そういう機会をもうけることも大変なのだ。

 それに、付き合えたとしても、忙しさのせいで、仕事と私どっちが大事なの?と言われて、短い期間で終わってしまうことが多いようである。


 設計部、魔法部の若手は未婚者というより、恋人すらもいない人間がほとんどである。

 こんな他人ごとのように言っているが、かくいう私もその一人である…


 設計部だけだったり、魔法部を交えただけの飲み会は、誰かは必ず脱ぎだすし、吐くはで、それはそれでとっても楽しいのだが、大変処理が面倒ではある。

 しかし、女性がいる合同の飲み会はとても和やかに進む。


 その理由は、もちろん普段は、はしゃいではめをはずす若手が、事務の人との合同の飲み会では大人しくしているからである。

 女性と関わりを持てる少ない機会なのでそれを失敗しないように、熱心に女の子に話しかけているので大人しいのだ。

 事務の人を交えた合同の飲み会は、設計部と魔法部からしたら、とっても貴重な機会なのである。


 つまり、設計部、魔法部の人間は女の人と話をしたい、事務の女の人たちは、男の人と話したいのである。

 そのため、私は、どっちつかずな立ち位置なため、合同の飲み会では少し肩身が狭い思いを毎回しているのである。

 しかし、合同でやるような、全体での打ち上げに行かないというわけにもいかないので、参加は必ずしている。


 今日はそんな、合同の飲み会の日である。明日は、土曜日だし、皆楽しむんだろうなと少し他人事のように考えていた。

 そこで、飲み会あるんだから、仕事早く終わらせなきゃいけないんだった!と思いだして、慌てて思考を仕事に引き戻した。


 終業時間を少し過ぎたあたりでなんとか区切りの良いところまで、仕事を終わらせることが出来たので、作業服から着替え、今日の会場である居酒屋へと向かった。


 事務の女の人たちは、もっと早くに仕事を終わらせている。彼女たちが着替え終わったら、設計部や魔法部の男どもが、居酒屋へエスコートしたらしい。

 もちろん、私は、教えられている店の名前から場所を調べて、一人で居酒屋に向かっている。




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