表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/44

新社会人




 研修の最終日は金曜日で、今日は、土日をはさんだ、月曜日である。

 それにも関わらず、奈央は自分たちの新製品案が、2位に選ばれたときの興奮が、未だに覚めきらずにいた。ふとした瞬間に思いだしては、顔がにやけるのを抑えることが出来なかった。


 しかし、それと同時に、数々の佐々木の暴言も思い出してしまい、ムカムカとした気分になる。こんなことをこの土日はずっと繰り返していた。


 長かった研修も無事終わり、今日から本格的に、自分の職場に配属されることになった。

 TACHIBANAのように大手でいろんな製品を取り扱う会社の場合、商品開発部は、商品毎に細かく分けられているところがほとんどである。


 私は、数ある商品の中から、家電部門を選択していた。その理由は、やはり一番最初に興味を持った機械だからというのもある。

 それに、加えて、家電を使用する頻度は、やはり女性の方が多いというのも理由である。

 使うのが、女性なのだから、つくる人間も女性の目線になれれば、より良い製品を生み出せると考えがあるのだ。

 しかし、商品開発部というところは極端に女の人が少ない。なので、女である自分がそこで働いていけば、もっと女性が喜ぶ製品をつくれると思っている。そのため、家電部門を希望したのだ。


 研修が終わって、嬉しいことが、2つある。ひとつ目は、もちろん、実際に作業する現場に行くことが出来て、作業を行っていけるということである。

 そして、もうひとつは、私服で出社が出来るということである!!


 私は、お客さんと対する仕事でもないし、作業現場に行くこともあるために、会社内では、作業服に着替えることになっている。

 つまり、どんな格好で通勤してもかまわないのだ。研修中に見てきた社員さんの感じでは、スニーカーにTシャツといった格好の人も多く、凄い人だとランニングシャツで来ている人もいたくらいであり、かなりラフな感じであった。

 スーツを着て、窮屈な思いをしていた私は、それをずっと羨ましく思ってきた。


 やっとラフな格好で行くことが出来る!それがとても嬉しかった。

 ただ、さすがにまだ、Tシャツにジーパンで行く勇気はない。そのため、コンサバ系とでもいえばいいのか、とりあえず、オフィスに着ていけるような服で行くことにした。


 鏡の前に立ち、おかしいところはないかなーと、一周まわって確認をした。そして、時計を確認すると、今日は時間に余裕があるな、なんて思いながらドアに向かった。


 ドアに着くと、昨日まで履いていた、革靴が目に入った。もう、かかとが高くて窮屈なこの靴をはかずに済む、そうと思うと奈央は嬉しくなった。

 履きなれた、かかとの低い靴に足を入れ、まさに足取り軽く家を出ていった。


 職場に着いたら、まず、総務の人から作業服などを受け取ったり、部署までの案内をしてもらうことになっている。指定されているところに向かい、総務の人を待った。


 ほどなくして、総務の人が、私の社員証や作業服を持ってきてくれた。女の人であった。いくら男所帯とはいえ、作業服の受け渡しや更衣室への案内は、女の人がしてくれるという配慮が嬉しかった。


 そして、この後ことについて説明してもらった。まずは、作業服に着替えて、配属されている部署に行く。そして、朝礼で挨拶をしたら、その後は部署で説明を受けて終わる、だそうだ。


 今日は、説明だけかーと思ったら少し肩の力が抜けた。そこで、更衣室に案内してもらっている間、会社に着てくる服はどんなのが良いのか、なんて質問をしたりしながら歩いた。


 更衣室まで案内してもらい、自分のフロアへの行き方などを教しえてもらったら、総務の方に案内してもらったお礼を言ってわかれた。

 そうして、作業服に着替えるために更衣室に入った。やはり、作業服を着る女性が少ないからか、更衣室は、簡素で手狭であった。


 作業服を袋から出して、バッと広げてみた。作業服というくらいなんだから、オシャレでもなんでもない。むしろ、ダサい、ただの薄い水色の作業服なのだが、手を通すのはなんだかドキドキした。

 自分の顔写真の入った社員証を胸に付けて、鏡の前に立つと、TACHIBANAの社員になったんだ!と実感することが出来た。


 更衣室から出て、教えてもらった通りに歩いていくと、自分のフロアに着くことが出来た。

 そこでしばらく待っていると、折橋がやってきた。なんと折橋も家電部門だったらしく、2人して驚いた。

 そうこうしている間に、家電部門の設計部の新入社員が全員集まり、朝礼時に一人一人あいさつをしていった。

 あいさつが終わると、盛大な拍手で出迎えてくれて、優しい雰囲気の職場だなと嬉しい気持ちになった。


 朝礼が終わると、先輩社員さんが、新入社員のためにフロア内を簡単に案内していってくれた。

 このフロアには、家電部門の設計部の他に、同じく家電部門の魔法部、そして事務がいることを教わった。


 全員で、100人くらいがこのフロアで仕事をしている。

 社員さん達が、新入社員である私達の方をちらちらと見たりしているので、仕事をしている中、ぞろぞろと歩いていて申し訳なく思った。

 しかし、どちらかと言えば好奇心で、新入社員をみているという感じだったので、あまり気にせずに、目が合ったら会釈する程度にしておいた。


 フロアを進んでいきながら、ゴミ箱の位置や、細かい分類の仕方、そして掃除用具の置き場所に、ゴミ集積所の場所なんかを教わった。

 そして、新入社員の最初の仕事は掃除なんだと言われた。

「掃除なんて、嫌だって思うかもしれないけど、むしろ、最初は出来ることがないから、せめてでも掃除だけでもしたい!って思うようになるよ」

と先輩社員さんは笑いながら言った。

 その後も、消火器なんかの位置を教えてもらいながらどんどんフロアを進んでいった。

「ここが、江田さんの席だよ」

 案内された自分の席を見て、嬉しくなった。

 ここが私の席!!このパソコンを使って、いろんな製品を造っていくんだ!!と違う世界に心がいっていた時に、案内してくれている社員さんじゃない声が聞こえてきた。


「ここが、佐々木の席な」

 振り返ると、佐々木と目が合った。

 私の真後ろの席が佐々木の席と案内されていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ