研修‐2‐
今回は、新製品の設計案を作成する、というのが研修内容である。つまり、なにをつくるのかすら決まっていない。とりあえず、なにか新製品の案をつくれということである。
そのため、私達のグループは、なにをつくるのかから考えなくてはいけなかった。
なにをつくるか決めるためには、まず市場調査が必要である。その理由は、市場を調査して、どんな物が売れるのか、どんな製品がでまわっているのか、現在の経済状況を知ることによる消費者の購入動向の把握などから、なにをつくるべきなのか判断するためである。
小会議室で4人ともパソコンに向かってカタカタと調べていく。そして、良い情報があればホワイトボードに書き込んでいく形式にした。
3日目くらいにそろそろ製品を絞ろうということになった。製品を絞った後も、その製品に関係する市場調査も必要となる。そのため、半年という期間を考えると、あまりゆっくりとやっている暇はなく、急ぐ必要があるからだ。
私達は、主にTACHIBANA製品の中での強み、弱みに目を向け調べていた。弱みとなっている物の代表的な物が、近年の価格競争に負けた、湯沸かし器であった。
強みである製品を、さらに改良させた開発案をつくることにもやりがいを感じた。
しかし、他の皆も目をつけるであろう物にいくよりも、今回私達は、弱い物を強化させるという方向性を取る方が面白いだろうということになった。
開発する製品が決まった。そこで、次は、湯沸かし器の市場調査である。
湯沸かし器の購入者層の調査に、価格調査、近年の人気傾向などを調べていった。
主な市場がわかってきたところで、人気商品をいくつピックアップして実際に自分達で購入してきた。
そうして、使用してみた後に、解体をした。
まず、使用した感想をそれぞれが述べ、使いやすい理由や、どういった形が好まれるのかについて検討した。
そして、次に解体をした。なぜ、この価格帯に出来るのか、どうしてこんな動作が出来るのか、内部に使われている部品等を調べることで把握していった。
その結果、とても安くしている物は、見えない部分などは、見た目が悪くなっていくが安い製品を使用していることや、劣化しやすい部分は、コーティング剤で補って寿命を延ばしていることが分かった。
しかし、洗浄のしにくさや使い勝手の悪さが目についた。
他に買った、安くはないが自動洗浄機能が付いているような、機能をプラスさせたものも買ったがそれらも、価格を抑えるために同じようなコスト削減方法を取っていた。
結論としては、湯沸かし器の人気商品は、とんでもなく価格が安い、もしくは機能がプラスされつつ安い商品が人気であるといったものになった。
そして、それらは共通して、見えない部分をいかに安く抑えるか、見える部分、劣化する部分を保護することに力を入れているということが分かった。
ここで、私達はまた、決断をする必要がでてきた。価格を抑えた商品の開発案にするか、機能をプラスした商品の開発案にするか決めなくてはいけない。
多数決を取って決めることにした。その結果、価格を抑える商品0、機能をプラスした商品4という結果になった。
やっぱり、ここにいる人間全員が物を造るのが好きなんだ!と奈央は嬉しくなった。価格を抑える事ももちろん大事であることは分かっている。
でも、新製品を作れと言われたからには、もっと新しいこの世にない物を造り出してみたいと思うのだ。
次に決めなくてはいけないのは、どういった機能をプラスするのかであった。
皆で、案をバンバン出し合い、ホワイトボードが埋まるまで毎日話し合った。それこそ、設計図を作成する期間などを逆算して、可能な限りのギリギリまで話し合いを行った。
主に、2つの意見に対立した。対立していたのは、私と佐々木の意見であった。
佐々木は、
「飲み物をすぐに飲みたい時、猫舌の人、白湯を飲みたい人、そういう人たちは今まで、待つという手段しかなかった。そこで、温度調整をユーザー側が決められるようにしたい。アタッチメントのこともあるしUIはこんな感じで…」
と、自分の案について語っている。
UI!?ユーザーインターフェイスって言うならギリギリ許してやるけど、横文字多用する奴ってのは、大概にして格好ばかり気にして中身がないからイヤ!!
ってもちろんそんな理由で対立しているわけではない。
「私は、温度調整の必要性をあまり感じない。飲み物を飲もうとする時って、ちょっと待つくらいの余裕があるときだと思うし。私は、そこのコストを抑えて、少ない魔法量で高速にお湯が沸くようにしたい」
私が、そう言い終えると佐々木は小馬鹿にしたような顔をした。
「江田は、温度調整を付けたうえで、少ない魔法量で高速に湯を沸かせる設計が出来ないってことか?」
はっと鼻で笑いながら、佐々木は言った。この言葉に私はカッチーンときた!
「はぁ!?造れるにきまってるでしょう!!あんたは、使いやすくて便利なUIの案を具体的に考えなさいよ!」
この瞬間から、私達は激しい言い争いをしながら競うように案を出していった。私が具体的な設計案を考えると、それに合わせた制御方法を佐々木は考えた。
その結果出来あがったのは、結局お互いの意見を通す形で、高温と低温の2段階の温度調整が出来てコストを抑えた高速湯沸かし器の設計案であった。
研修最終日に、研修内容の成績発表がある事が知らされた。
他のグループの製品案を知らないが、自分達の案に自信のあった私たちは、手を握りしめながら、成果発表を聞いていた。
そして、私達の設計案は数あるグループの中で2位に選ばれた。その瞬間、佐々木とよっしゃー!!とハイタッチをしてしまったが、佐々木が、
「今ので手が折れた」
と言ってきて、気分が台無しになった。
これで最後だと、今までの恨みも込めて、思いっきりグーで殴っておいた。