報告-2-
お昼休憩になった。佐々木は、なぜだか佐藤とフロアから出て行く奈央の姿を発見した。
なかなか気恥しくて、この土日は連絡などをすることが出来なかったが、今日の夕飯でも誘ってみるかな、と佐々木が考えていたときに後ろから話しかけられた。
「よっ!」
折橋である。喫煙室で話して以来になる。
「よっ」
---こいつには、江田と付き合ったこと言わなきゃかな…ただ自分から切り出すのもなんだかな…
「おめでとう」
「何のことだよ?」
急に折橋からお祝いを言われ、佐々木は全くなんのことかわからなかった。
「江田と付き合えたんだろ?」
「なっなんでわかったんだ!?」
---誰にも言ってないし、そもそも、まだ出社して一日目だぞ!?
「金曜の飲み会二人で抜け出したし、顔に出てる。二人分の建て替え払い俺がしてやったんだからさっさと金出せ」
折橋が、手を差し出したので、佐々木は、急いで財布から、お金を出した。そして、折橋に渡した。
「普通に、二人分払うところがむかつくな」
確かに、自然な感覚で江田の分まで払ってしまったと、佐々木はドキッとした。
「別に、お前が、二人分って言ったからだろう…」
「さあ、どうだかな」
折橋は、佐々木の弁解には興味なさそうに、さっさと財布にお金をしまう。
「お前にばれったってことは、皆にもばれてるかな…?」
「さあな、俺が知るかよ」
折橋は、佐々木の方を見ずに答えた。
「お前、今日ちょっと怖くね?」
「当然だろ、ふられたばっかの女が、目の前の男と付き合うことになったんだから」
「えーっと悪かった…」
佐々木は、なんだか居心地が悪くなった。
「まあ、別にお前らがいつか付き合うなんてわかってたから良いんだけどな」
「なんでわかったてたんだよ!?」
佐々木は、自分自身が、江田と付き合えるはずがないとずっと思ってきたのに、折橋に言われ驚いた。
「こないだも言ったけど、お前はずーっと江田のこと大好きって感じだったからな」
「そんなことないだろう!?」
「そんなことありまくりだったよ。好きな子いじめる小学生って感じだったぜ」
佐々木は恥ずかしくなってきて、顔があつくなるのを感じた。
「なんで、江田は、こんな男が良いんだか。俺のが絶対に、良い男なのに」
「江田は、絶対に譲らないぞ!!」
声が大きくなってしまった。何人かがこっちを振り返ってきた。そのことが恥ずかしくなり、もっと顔があつくなってきた。
「お前も、素直になったもんだな。全部俺のおかげだなー」
「それについては、感謝している…」
さっきの、発言に対しては、文句を言ってやりたい気持ちでいっぱいだが、確かに折橋のおかげで、佐々木への気持ちを自覚出来たのだから、礼を言うしかない。
「お前…絶対江田のこと幸せにしろよ!」
折橋が、今までのひょうひょうとした雰囲気から一転して、真剣な表情で目を見て、言ってきた。それに対して佐々木は、
「それだけは誓う」
と、返した。
「俺にじゃなくて、本人に言ってやれよ」
ほれっ折橋が、後ろを指さす。江田が戻ってきたようだ。
「じゃあなー」
そう言って、折橋は自分の席へと戻っていった。




