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合同飲み




 新プロジェクトが成功し、合同飲みが企画されることになった。

 合同飲みに良い思い出のない奈央だが、今回は自分が携わったプロジェクトだからか、何人かの人に行くよね?っと確認された。

 もちろん、行くので、はい、と答えたら、じゃあ、よろしくねー。っと言われた。何がよろしくなのか全くわからない。


 今回も、仕事に一区切りついてから、行こうと思い、近くに居た同期に飲み屋の店の名前を聞いた。すると、

「俺が連れてくよ!!」

と言われた。’いや、一人で行けるから大丈夫。’そう言って断ろうとしたら、他の人もやってきて、みんなで飲み屋に行く流れになった。

 さすがに、その流れで、まだ仕事やりたいんで、とはいうことも出来ず、月曜日に頑張ろうっとパソコンを消した。


 今回は、なんだか真ん中の方の席になった。このあいだは、墓場のようなところにいたのにと思い出したらが面白くなってきた。

 そう、その墓場で、佐々木にコーチしてもらうことになったんだった。そんなことを思い出したので、辺りを見渡して佐々木を探してみた。すると、すぐに見つかった。

 いたっ!というか、こっちをめっちゃ見てきてる!?いったいなんなんだと、思いつつも、佐々木から話しかけられることはなかった。


「江田さん、飲み物はどうする?」

 気づくと隣にいたのは、あのときの魔法部の先輩だった。急に肩に手をまわされたことを思い出し、身を固くした。

「生ビールで」

「江田さんは、わかってるねー。ビール好きな女の子って嬉しいなあ」

「そうですか…」

 この先輩には、笑いかけたりしたら駄目だと、体が知らせてくれる。

 そのため、奈央は、先輩からの質問に対して、失礼にならない程度に、冷たくあしらった。それにも関わらず、先輩は話しかけてくる。


「今回の掃除機、ハンディタイプにしようって江田さんが発案だったよね。すごいよなー」

「いや、佐々木君と考えました」

「あっそうなの?でも、一番最初にプレゼンしてる姿、緊張してて可愛かったよー」

「酷いプレゼンですみません」

「そういう意味じゃないよー。可愛いって褒めたんだけどなあー」

 ---ゾワッとしたー!!えっなにこの人!?気持ち悪い…。

「ありがとうございます」

「江田さんって絶対おしとやかってよく言われるでしょー」

 ---あなたで二人目です!!

「江田さん、飲んでないよー。もっと飲んで飲んでー」

 ---こないだのでもう経験したんだから、同じ手にはのらないわよ!!

「お酒弱いんで…」

「そーなの!?そういうとこも可愛いねー」

 ---もう、この人いやー!!どうすれば、良いんだ!そうだ、一回トイレに行って席うつろう!!

「すいません、お手洗いに行ってきます」

「じゃあ、席は取っておくねーいってらっしゃーい」

 ---誰が戻るか!!


 奈央は、一度、トイレに行き、少し時間をおいてから、飲み会の会場の方へと戻って行った。すると、今回も男たちの墓場になっているテーブルを見つけた。

 即座にそこに座った。すると、なんて心地良いんだろう。

 自分で生ビールを頼み、目の前にあるポテトフライをつまむ。なぜ、これを嫌だと思ってしまったのだろう。

 あの日の自分が疑問だ!!そんなことを考えていたら、死んでいたはずの一人の男が起き上がって話しかけてきた。

「江田さん、今回のプロジェクト成功おめでとうございます!!」

 そう話しかけてきてくれたのは、設計部の後輩である。

「ありがとう、って言っても私はなんにもしてないけどね」

「でも、ハンディタイプって案出したの、江田さんって聞きましたよ」

「ううん、魔法部の佐々木ってやつと一緒に考えたんだよ」

 そういえば、佐々木はどこにいるんだろう。さっきちらっと見かけたけど。女の子に囲まれてるのかな…ズキッと心が痛みつつも辺りを見渡してみた。

 すると、魔法部の先輩と目が合った。

 その瞬間、その先輩はこっちに移動してきて、私の隣の席に座った。

「江田ちゃん、待ってるって言ったのに酷いなー」

 ---江田ちゃんって、ちゃんってなによ!?

「こっちが空いてたので…」

 そう言って、さきほどまで話していた後輩の方に目をやると、すごい勢いで反らされた。

「江田ちゃん、もっと飲んで盛り上がろうよー」

「私、つまらない人間なので、他の方と飲まれた方が良いんじゃないですか?」

「つれないなー江田ちゃんは。江田ちゃんと飲みたいの!!」

 ---気持ち悪い!!

「先輩は飲み過ぎなんじゃないですか?」

「そうかもー。でも、俺もうふらふらで歩けないわー江田ちゃんトイレ行くの手伝って!!」

「さっき歩いてここまできたじゃないですか」

「ここで、吐いちゃうよー。良いの?」

 ---本当に最低な人間だ…


 奈央は、仕方なく、その先輩になるたけ触らないようにしながら、立ちあがらせて、トイレと案内して行った。

 すると、急に、先輩が肩をガシッと掴み外へと連れ出された。

「なにするんですか!?」

 奈央は必死で抵抗するが、先輩の手が離れない。

 もう駄目だ。そう思った瞬間、先輩の動きがとまった。

「先輩、あんまりふざけんのもたいがいにした方がいいですよ!!」

 佐々木が魔法で、先輩の動きを止めてくれたようだ。奈央はその隙に、先輩の手から逃げ出し、佐々木の元に駆け寄った。

 佐々木が魔法をといて、先輩が動けるようになると、佐々木に駆け寄ってきた。佐々木は、先輩を転がし、腕を取って締めあげた。

「佐々木!もう大丈夫だよ!!」

 奈央は、佐々木を止めに入った。佐々木が、手を離すと先輩は、

「冗談も通じねーのかよ!」

と言って逃げて行った。


「ごめん、佐々木と同じ魔法部の先輩なのに…」

「なに、変なこと気にしてんだよ!!それよりもなにかされなかったか?怪我とかはないか?」

「うん、肩掴まれただけ。怪我とかも大丈夫」

「良かったー」

 そう言って佐々木は座りこんだ。と思ったら、急に立ちあがった。

「なんで、あんなやつにこんなとこまで連れ出されてるんだよ!!」

「いや、先輩がトイレに行きたいけど歩けないって言ったから…」

「それを信じたのかよ!?」

「だって、しょうがないじゃない!!ここで吐くぞーとか言うんだもん!!」

「お前は、警戒心が足んないんだよ!だから、だから、俺にも付け込まれるんだよ…」

「佐々木だったから拒めなかっただけよ!」

「それって…。」

 ---あっ言っちゃった…

「あっ…あの、責任とれーだとかいうわけじゃないわよ…。ただ、私が誰とでも寝る女じゃないってのだけ言いたかっただけだから。助けてくれてありがとう。私、今日は帰るね」

 そう言って歩き出そうとした、奈央の手を佐々木が掴む。

「俺、おまえが好きだ!!」

「えっ!?だって、あの日の朝…」

「あの日は、まだお前への気持ち自覚してなかったから、自分でもなんであんなことしたのか本気でわかんなくて。でもお前に嫌われるのが怖くて…なんとか必死で謝ろうと思って…」

「酷い…するつもりはなかった、なんて言われて、私がどんだけ傷ついたと思ってんの?」

「本当にごめん!!」

「絶対に許さない」

「そうだよな…」

 佐々木は下を向きうなだれた。

「さっきの言葉も取り消す」

「さっきの言葉?」

「責任とりなさいよ」

 そう言って奈央は、佐々木に抱きついた。佐々木は一瞬面を食らったが、すぐに抱きしめ返して

「ああ、一生かけて責任取る」

と、告げた。




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