表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/44

研修




 分厚いマナー講座の本は分厚く、必要以上に重く感じるため、毎朝それを鞄に入れて出社するのがとても憂鬱だ。

 その理由はやはり、重いというだけではなく、その分厚い本をただ読むだけの、マナー研修が、とても退屈だからだと思われる。


 それに、最初は、新社会人だーなんてうきうきした気持ちで履いていた皮靴や、スーツもすぐに窮屈な物へと変わっていった。

 私は、勤務が始まったら作業服なんだから、スーツ着る必要ないじゃん、はやく研修終わって、私服で通勤して作業服で働きたいなーとばかり思うようになっていた。


 しかし、そんな風に最初は舐めていたマナー研修だったが、そんなに甘くはなかった。覚えなくてはいけないことが多くててんやわんやだった。


 それこそ、立ち方に始まり、名刺の渡し方に、敬語の使い方、電話の受け答えの仕方、何から何までこと細かく勉強させられた。

 特に電話対応は、始めに研修生同士で練習をしたのだが、それにも関わらず慌てるわ、かみまくるわで散々だった。


 なんとか、ビジネスマナーも本に書いてあることは、だいぶ体に染みついてきたかなと思う頃には、1カ月たっていた。


 1カ月のマナー研修が終わり、やっと部署毎の研修に切り替わる日が来た。初日は、これからの研修内容の説明がメインらしい。そして、指定された部屋に向かうと、予想よりも多くの人がいた。

 座席表を見てみると、企画部、デザイン部、そして設計部に魔法部がいることが分かった。


 これら4つの部は総称して商品開発部と呼ばれる。


 もしかすると、今回の研修は、商品開発部全体で行うのかな、なんてことが頭をよぎりながら自分の席に向かった。すると、今回も折橋が隣の席に座っており、挨拶をした。

「江田さん、久しぶり。マナー研修では会わなかったねー」

「男女で分けていたみたいだったもんね。男の人の方の先生は、スパルタだったって聞いたよー大丈夫だった?」

 そんな風に、折橋と少し会話をかわした後、私はまた、キョロキョロと周りを見回した。


 ここにいる人たちと一緒になって商品をつくっていくんだ!となんだか、熱い気持ちが込み上げてきた。


 そんな時、懇親会であった、魔法部の人を見つけた。確か、佐々木とかいう名前だったはずだ。こんなに人がいる空間なのにやっぱり彼は目立つ。

 んー今日もチャラそうだ、そんなことを思って見ていたら、佐々木と目が合ってしまった。奈央はやましい気持ちがあったので、慌てて目をそらしてしまった。


 そんな時、研修内容を伝えるアナウンスが始まった。予想した通り、今日からは、4つの部を合わせた商品開発部として研修を行うらしい。


 内容は、グループ毎に新製品の開発案を考えるといったものだった。

 グループは、企画部、デザイン部、そして設計部に魔法部の人間が、必ず一人ずつは入るようにして4、5人に分けられるらしい。


 そして、新製品の開発案作成のプロセスを踏みながら実際の業務内容を覚えていくというものであった。しかも、半年もかけてやるので、かなり本気で取りかからなくてはいけないことも分かった。


 奈央は少し心配になった。開発案ということは、設計図も必要になるし、具体的な制御まで決めなくてはいけない。

 自分に出来るのかな…そんなことも頭をよぎるが、実際に、実作業をさらせてもらえるなんて、なんて良い研修なのだと、嬉しく思う気持ちの方が強かった。

 どんな物を作れるのだろうかと、今からいろんな案がめぐり、胸がはずむのを抑えることが出来なかった。


 配布された紙にグループの番号が書かれていた。

 グループ毎に小会議室が割り振られているらしく、そこで作業していくらしい。グループ毎の会議室番号が発表され、それぞれ移動することになった。


 設計部の折橋とはもちろん違うグループだったために途中で分かれ、自分の指定された小会議室に入った。

 そこには、魔法部の佐々木が立っていた。


 奈央は、うげっという顔を、今度こそ隠すことが出来なかったと思う。なんとか笑ってごまかそうとしたがその顔も怪しかっただろう。

「初日は凝視、さっきは思いっきり目そらす、今は会った瞬間に変な顔…俺になんかあんの?」

「いいえ!なんにもございません!ただ知り合いに似ている人がいるもので…」

 佐々木に直球で聞かれてしまい焦った。


 まさか、しゃれおつな魔法工学科さんは苦手なんです!てへ☆なんていうことも出来ずに慌ててごまかした。

 佐々木は、微妙に納得のいかない顔をしたが、すぐに、グループの他のメンバーも来たので、話は流れた。


 私達のグループは、企画、デザイン、設計、魔法の部から一人ずついて、ちょうど4人のグループであった。全員が簡単に自己紹介をした後、まずは市場調査をすることを決めた。


 本来、市場調査は主に、企画部、デザイン部の仕事である。

 そこで、あがってきた企画案を設計部、魔法部が現実的な物にしていく、というプロセスを踏んで商品は造られている。


 今回の研修では、その流れを商品開発部の全員が体験することを目標としているらしい。


 つまり、設計部の奈央は研修が終わってしまえば、市場調査や、企画案を考えることは出来ないのである。

 人生最後になるかもしれない、せっかくのチャンスだ!とはりきって取りかかることにした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ