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喫煙室その2




 佐々木は、江田に殴られた左頬を触った。腫れてもいなく赤みもない。そのことに安心しつつ、そんなにやわじゃないけどな。と思い直した。

 床に、昨日、コーヒーをこぼしたシャツが放置されたままになっていた。もう駄目だろう。まだ、新しかったんだけどな…と思いながら、ゴミ箱に入れた。


 左頬をもう一度触り、昨日は完全に俺が悪かった…と反省した。なぜだかわからないが、ずっとイライラしてしまっていてそれを江田にぶつけてしまった。

 今日、謝ろうと思ったが、合わす顔もない。


 会社に着いて、仕事して、でも、江田の笑顔が見えたり、明るい声が聞こえてくるとまた苛立ってきてしまった。


 こういうときこそ、たばこを吸おう。そう思い佐々木は、席を立ちあがった。

 喫煙室に着くと、誰もいなかった。ふーっと大きく息を着いてから、たばこを取りだした。

 すると、喫煙室の扉が開いた。そこには、折橋が立っていた。

「よっ!」

 いつものあいさつなのに、凄い苛立ってしまった。そのため、よっと顔も見ずに返事をした。

「なんだよ、ご機嫌ななめじゃーん」

「うるせーな。ほっとけよ」

 ちぇっと言って、折橋は、たばこに火をつけ始めた。


 あの泥酔した日、江田は、折橋と抱き合っていたのは事故だったと言った。しかし、事故であんな風に抱き合うはずがない。

「お前、江田と付き合ってるのか?」

「いいや」

 予想外の言葉が返ってきた。

「じゃあ、なんで抱き合ってたんだよ!!」

「告白のはずみでー」

「はずみでーじゃねーよ!!」

 ---って俺は人のこといえないか…

「てか、告白したんなら付き合ってんだろ…」

「ふられたよ」

「えっ!?嘘だろ?」

「うん、嘘。付き合ってるよ」

 わかっていたはずなのに心臓がグシャと掴まれたような感覚に襲われた。

「っていうのが、嘘」

「はっ!?いったい何なんだよ!!」

「俺は、江田にふられた」

「本当かよ?」

「うん、本当」

「そうか…」

「今、安心したろ」

 そう、折橋に言われドキッとした。

「お前そろそろ素直になれば。好きなんだろ、江田のことが」

「は!?何言ってんだよ?」

「お前、マジで無自覚なのかよ!?じゃあ、なんで俺たちが抱き合ってんのが気になんだよ。それ以降のお前の悲惨な状態はなんなんだよ」

「それは…」

 ---考えたことなかった…なんで、俺こんなに江田のことばっかり気になるんだ…?


「てか、お前江田になんかしたろ。見るからに何かありましたって顔しやがって」

「それは…」

 ---無理やり抱きました!なんて、言えるはずがない!!ていうか、俺やっぱりそんなに顔に出てるのか…

「お前がそんなんなら、俺が江田をもらう!」

「駄目だ!あいつだけは譲らない!!」

「ほら、本音がでた」

 ---そうだ、江田だけは、誰にも譲りたくない。俺は、江田のことが好きだったんだ…なんで、気づかなかったんだろう…

「めちゃくちゃ独占欲強いのに、よく気付かなかったな」

「嘘だろ…俺そんなだったか…?」

「おう!!それこそ番犬みたいに江田に寄りつく男に睨みきかせてたぞ」

「嘘だろ…」

「嘘なはずあるかよ。俺が一番の被害者だったんだからな」

 佐々木は呆然としてしまった。そんな自覚は一切なかったから。

「てか、そのくせお前自分で敵つくるんだもんなー意味わかんねーよ」

「敵って!?」

「そりゃ、江田狙いの男だよ」

「は!?」

「前にも、話したろ。江田はモテないわけじゃない、今まで、近寄りがたかっただけだ。ところが、急に、笑顔で楽しそうに話しかけてくるようになった。どうなるかなんて火を見るより明らかだろう。江田狙いの男結構いるぞ。これから、もっと狙われるようになるぞー」

 佐々木はいろんな思いで頭がいっぱいになった。佐々木は、たばこの火を消しふらふらと喫煙室から出て行った。






 一人残された、折橋は、

「あーあ。ふられた子の恋愛の手助けしてあげるとか俺良いやつだなー。まあ、悔しいから、江田が佐々木に惚れてるってのは言わないけどなー」

と、つぶやいた。




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