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告白




 佐々木に昨日の夜のことでお礼言おうっと奈央は考えていた。しかし、なかなかタイミングがなくて言えずに終業時間も過ぎてしまった。


 仕事に一区切りがつき、んーっと伸びをすると佐々木の姿がなかった。えっもう帰っちゃった!?そう焦って、見返すが佐々木はいなかった。

 荷物はまだあるみたいだけど…と立ち上がり、辺りを見渡すと折橋が立っていた。


「よっ!もう二日酔いは大丈夫か?」

「うん、なんか心配かけちゃってごめんね…」

「心配するのは、俺が勝手にしてるだけなんだから謝んなよー」

「うん、ありがとう!!」

「合コン、本当になんにもなかったのか?」

 まさか、また聞かれると思ってもいなかったので奈央は焦った。酒ガンガンに飲まされてお持ち帰りされそうになった話なんて出来るわけがない。

 ---あれっでも、佐々木にはすんなりと言ってしまったな…あのときは酔ってたからかな…?

「本当になんにもなかったよー。折橋は心配症だなー」

「そりゃー俺は江田のこと好きだから心配にもなるよ」

 折橋にそう言われ、奈央はえっと驚いてしまった。


「女らしさの特訓かもしれないけど、佐々木とデートすんのも、合コンに行かれるのは嫌だ!」

 折橋が少しづつ近づいてくる。

「江田が特訓なんか始める前から、俺はずっと江田を見てきた。そのままの江田が好きなんだ。でも、それでも特訓がしたいって言うなら、こないだも言ったけど、特訓相手なんか俺がなってやる」

 折橋との距離がほとんどなくなった。下がろうにも、机があってこれ以上下がることが出来ない。

「俺と付き合ってくれ」

 そう言って、折橋は、奈央を抱きしめた。奈央は、慌てて、折橋の腕から出ようと体を反らしたとき、佐々木が立っているのが見えた。

「佐々木っ!」


 奈央は一気に折橋を引き離し、佐々木の方へ行こうとした。しかし、折橋に手を掴まれた。折橋の力は強くなかなか離すことが出来ない。

 そうしているあいだに、佐々木は、なにもないかのように帰り支度を始め、フロアから出ていった。その姿を見て奈央は、

「待って!!」

と焦ってひきとめようとしたが、佐々木は振り返ってもくれなかった。

 ---興味無いんだ…そりゃそっか。だって、佐々木からしたらただの同僚が抱き合ってるの見ちゃったってくらいなんだもん…

 そうだ、それだけだ、と頭で整理がついた。


「あんなやつのために泣くなよ…」

 そう言って、折橋が、奈央の涙をふきとる。奈央は、折橋にそう言われるまで泣いているなんて気づかなかった。

 しかし、一度気づいてしまうと涙は一気にあふれ出てきてしまった。

 ---佐々木が私に興味ないってだけで、なんでこんなに涙が出るんだろう…?わかっていた事なのに…

 なにを考えても、涙はとまらない…そっか、私、佐々木が好きなんだ…。そう自然に、ストンっと気持ちを受け入れることが出来た。

 ずっと佐々木が好きだったんだ…だから、優しくされて嬉しく思ったり、自分だけ特別なんじゃないかなんて思ってみたりしてしまっていたんだ…奈央は、そう気がつくことが出来た。


 奈央は、涙をふいてくれていた折橋の手を、ゆっくりと払った。そして、自分で涙をふいて、折橋のことを見つめた。

「折橋、ごめん」

 奈央は、頭を下げた。

「折橋はいつも、みんなの雰囲気を和ませてくれて、いろんなことに気を使ってくれて、物つくりに対する姿勢も尊敬してて…でも、私、佐々木のことが好きなの」

 奈央は、そう言い終わると、顔をあげた。

「さっき俺たち抱き合ってたにも関わらず、あいつなんにも言わずに出ていったよ」

「うん、佐々木が私に興味なくても、私は、佐々木が好きだから!」

 折橋は、少しおどけたようにお手上げですと言った雰囲気で両手をあげた。

「あんなやつのどこが良いの?」

「私にもよくわかんない!」

 そう言って、折橋と笑いあった。

「でも、佐々木が好きなの…」

「そっか…」

 折橋は、悲しい顔をした。しかし、すぐにいつものような明るい顔に戻って、

「告白とかしないの?」

と聞いてきた。

「気まずくなりたくないもん…」

「今、お前に告白した俺にそれ言う?」

 折橋はそう言って笑う。

「あっごめん!!」

「いいよ。それより、気持ちわかるんだろう。俺も江田と気まずくなりたくないんだよ。だから、今までどおりにしてくれよー」

「うん!」

「でも、佐々木にふられたら、教えてくれよ。俺待ってるから」

 奈央はえっと動きが止まってしまった。

「冗談だよ!!」

 佐々木は、ハハハっと笑いながら、そう言った。

「今まで通り、同僚としてこれからもよろしくな!!」

 佐々木は、そう言って、手を差し出してきた。奈央はその手を握り返し、

「こちらこそ、よろしくお願いします!!」

と、言った。






 佐々木は、先ほど見た光景を頭から消すことが出来ずにいた。

 くそっと思って壁を蹴りあげてみると、ジーンっと痛みが走った。行き場のない感情に、その場で座りこんでしまった。

---あいつ男のタイプ、優しい人って言ってたな…まさに折橋みたいなやつだな

 そう思うと、佐々木は、またどうしようもない怒りが走り、ガンッと床を叩いた。今度は、痛みを感じなかった。




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