合コン
佐々木から折橋にコーチが交代したらしい。私は、全く関係のないところでそう決まってしまった。
なんだかよくわからないが、会社に行くのが億劫に感じる。
佐々木と顔を合わせるのがなんだか嫌で、始業ギリギリに自分の席に行く。仕事中も全く、振りかえらないようにした。
魔法部に用があるときもわざわざ遠回りして、佐々木を避けるようにいった。
お昼休憩になり、佐藤がやってきた。
「奈央ちゃん、女らしくなりたいんだよね?今日合コンがあるんだけど参加しない??」
「えっ合コン!?いや、私は遠慮しておきます…」
「そうそう!お前みたいな女が来ても男は嫌がるだけだ。絶対に合コンなんか行くなよ!!」
佐々木が振り返ってそう言ってきた。なんで、そこまで言われなきゃいけないのよ!と奈央は頭に血がのぼった。
「そんなことないわよ!絶対に行くわよ!!佐藤さん、時間と場所教えて!!」
そういうと、佐藤は、相手は、自動車部門の営業の人たちだと教えてくれた。
そのため、会社の近くで飲むらしい。なので、終業後に会社前に集まってから一緒に店に行くらしい。
お店の名前も教えてもらった。人気のお店らしく佐藤は喜んでいるが、奈央はどうでも良かった。
そのあとも、佐々木は行くなっと言ってくるが腹がたつ一方であった。
終業のチャイムが鳴り、帰り支度を始めた。すると、佐々木がこっちを向いて話しかけてきた。
「お前みたいなどんくさい奴だと、危ないぞ」
「そんなことないわよ!皆あんたと違って優しいから大丈夫よ!!」
「どうせ、俺は優しくねーよ!!もう、しらねーからな!!」
会社の下に行くと、もう佐藤たちが何人かで集まっていた。
「遅いよ、奈央ちゃーん」
「遅くなって、ごめんなさい」
奈央は、素直に頭を下げた。すると、
「もう、冗談に決まってるじゃーん。奈央ちゃんってば真面目なんだからー。こちらが私と同じ部門で同期の奈央ちゃんでーす。ってみんなの紹介とかは、お店着いてからだよねー。早くいこー」
そう言って一行で、歩きだした。歩きながら何人かの男性が話しかけてきた。それに適当に返しながらお店に向かう。
「じゃあ、飲み物が来る前に、みんなの自己紹介から始めよーか♪」
「はい!!まず、俺たち男は全員、自動車部門の営業やってまーす!!」
「女の子は、全員家電部門でーす♪」
そう答えたのは見たことはある女の人である。多分、家電部門の事務の人なのだろう。女はその人と佐藤さん、奈央の3人で、男の人も3人である。
「じゃあまず、俺から自己紹介しまーっす!伊藤陽太って言いまーす。ひっくり返すと太陽って覚えてくださーい!!趣味はスノボーで冬はもっぱらスノボーやりに行ってまーす!!」
テンション高い!!奈央は、ひいてしまった。佐々木に言われていらいらしていまいきてしまったが、こんな、ノリについていけるのだろうか。
「はい、次は、奈央ちゃんの番だよー」
気づくと私の番になっていたようだ。焦って、
「江田奈央です」
とだけ少し上ずった声で答えた。
「えーそれだけ!?なんか趣味とかなんかないの?」
趣味!?人に言えるような趣味なんてないよー!駄目だ、変に間を開けてしまうくらいなら、面白くなくても素直にこたえる方がマシだ。
「休みの日は、眠って過ごしちゃいます…」
「おーかなりのインドア派か!」
「俺も俺も!インドア派!!休みまで家から出たくないよねー。俺たち気があいそー」
---いやいや、こんな合コンに来てる時点でインドア派なんかじゃないから!気が合いそうな要素、今のところ一つもないよ…
その後、その自称インドア派の人が私の前にやってきた。なんだかいろいろ話しかけてくる。
「休みの日寝てるってことは彼氏いないのー?」
「はい、いません」
「なんで敬語なわけー!?奈央ちゃんっておしとやかってよく言われるでしょー」
---いえ!おしとやかなんて言われたの人生初です。
「とりあえず、敬語はもうなしで!もっと飲んで飲んで!!」
「うん…」
奈央は、さほどお酒が強いわけではないが、押しが強く勧められるままに飲むしかなかった。
「じゃあ、どんな男がタイプなの?」
佐々木にも聞かれたことを思い出した。すると、言われた暴言を思い出してきてイライラしてきた。その気持ちがこもり、
「優しい人!!」
っと力強く答えてしまった。
「おっ急に元気になったね!お酒もっと飲みなよー」
佐々木への恨みをさらすように、つがれたお酒を一気した。
「いい飲みっぷりだねー。奈央ちゃん結構お酒強いでしょー。俺と飲みくらべしようよー」
「いや、そんなに強くないので無理です」
「あっ敬語使ったー。はい、バツだから飲んでー」
そう言われ、また飲まされてしまった。飲んでから、
「飲みくらべは、本当に無理…」
と、伝えた。
「じゃあ、ゲームして負けたら飲むっていうのなら良いでしょう」
---それくらいなら…それに、本当にヤバそうになったら断れば良いんだし…。
そこから、簡単なゲームをしながら、結構飲まされていってしまった。
自称インドア派が、トイレに行くと言って、個室から出て行った。
奈央は、さすがに飲みすぎちゃったな…と反省し、自分もトイレに行くことにした。すると、男の人たちの声が聞こえてきた。
「お前、奈央とかいう女にマジでいくわけ?」
「だって、あの女、押しに弱そうだし。強引にいけば余裕っしょ。あと、もうちょっと酒飲ませれば落ちるでしょ」
これは、ヤバい、と思って、すぐに席に戻り、佐藤に体調悪くなったと伝えた。
みんなが何かを言っているようだったが、お金だけ置いて逃げるように出て行った。
店から出ると、風が気持ちいい!そして、少しふらっとしてしまった。本当に飲まされ過ぎてしまったようだ。
顔をあげると、佐々木が立っていた。ここまで、酔いがまわっちゃたかーっと奈央は、なんだか笑えてきた。
「なに笑ってんだよ」
「幻影がしゃべった!!」
「幻影なんかじゃねーよ!」
佐々木が近付いてきて、ほっぺたをつねってきた。
「いたーい!」
「ほら、夢じゃないだろう」
「なんで、佐々木こんなとこにいるの!?」
「それよりも、なんで一人で出てきたんだよ?」
「えっと、なんかお持ち帰りされちゃいそうだったから」
笑ってそう言ったら、佐々木は、
「だから危ないっていったろ!この馬鹿!!」
そう言って怒った。
「ほら、送ってくから、さっさと車乗れ」
「えっ送ってくれるの?」
「絶対に吐くなよ」
---危ないからって、ずっと待っててくれたの?なんで、そこまでしてくれるの…?




