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デート




 デートは次の土曜にすることになった。

 プランも佐々木が考えてくれて、お昼過ぎからあって、おしゃれなカフェに行きウインドウショッピングした後、レストランで食事するっといった内容である。

 また、会社の最寄り駅に2時集合ということになった。


 デート前日の夜。奈央は、なかなか寝付けないでいた。しかし、クマが出来てしまったりしたら最悪!!どうしようーなんてぐるぐる考えてしまい、余計眠れなくなってしまっていた。

 そのため、一度起き上がり、ほっとミルクを飲んで気持ちを落ち着かせた。それが功をそうしたのか、眠気がやってきた。


 目覚まし時計をセットしていた時間より早く目が覚めてしまった。しかし、もう一度眠ることも出来なそうだったので、そのまま起き上がった。

 デートなんて久しぶりだから、何を準備すれば良いか悩む。あっまず、服を決めなくちゃ!っと奈央は、クローゼットを開けた。

 すると、目についたのは、前に佐々木と買い出しに行ったときに選んでもらった、薄ピンク色のブラウスだった。

 ピンクということに抵抗があり会社にはまだ着ていくことが出来ていない。しかし、今日は、デートである。ピンクを着ても良いんじゃないかな?なんて思えてきた。佐々木もこれを着たとき、悪くないとは言ってくれたし…

 デートだもん!ピンク着て良いよね!!そう思い、ピンクのブラウスをクローゼットから取り出した。


 次は、シャワーだ。シャンプーをした後、コンディショナーをつけた。長く時間をおいてみたが、きしきしである…普段からちゃんとメンテナンスしておけば良かった…と後悔する。

 髪の毛をぽんぽんぽんと、叩くようにふき、ドライヤーを丁寧にかけていった。

 乾かし終わり、鏡を見てみると、少し痛んでる…やっぱりもっと手入れしとけば良かったと思った。


 そして、いつものシリアルを食べる。時計を見てみると、時間は思ったほどゆとりはなかった。

 洋服選びに、シャワーを時間かけ過ぎてしまったようだ。しかし、予定よりも早く起きたので、まだまだ焦るような時間ではない。


 シリアルを食べ終わると、洋服に袖を通した。姿見で確認すると、似合ってるように思えた。

 化粧も頑張ったら、佐々木も似合うって言ってくれるんじゃないかな…なんてことを考え、化粧にも力を入れようと頑張ってみた。


 選んでもらったチークを手に、ぬりすぎないように、でも、いつもよりははっきりとぬってみた。

 そうして化粧が終わるともう一度、姿見の前に立って全身を確認してみた。自分でいうのもあれだが、良い感じじゃない!?と、奈央は、嬉しくなった。時計がふと目に入ると、もう家を出る時間になっていた。

 奈央は、慌てて荷物を確認し、鞄を持ってから、もう一度姿見の前に立った。そうして、よしっ!!と家を出ていった。


 少し早めに駅に着くことが出来た。佐々木はまだかなーっと、携帯電話を片手に柱に寄り掛かった。

 このあいだも、こうして待っていたな。なんて思いだしていると、江田、と声をかけられた。


 今日も、佐々木はかっこよかった。こないだとは、違って白いシャツを着ている。

 白のシャツだから、いつも会社で見ているのとあまり違いがないはずなのに、少し着崩した感じでおしゃれさがにじみ出ている。


 あまりのかっこよさに、ぼーっと見つめてしまっていた。しかし、佐々木もこっちを、ぼーっと見ているのに気がついた。

「佐々木…?」

「なっなんだよ!?」

「いや、ぼーっとしてるみたいだったから…」

「お前じゃあるまいし、ぼーっとなんかしてねーよ!!」

「私じゃあるまいしってなによ!?私ぼーっとなんてしてませんから!」

 なにか佐々木も言い返してくると思ったが、特になにも言ってこなかった。

 ---服装、褒めてもらえなかったな…そりゃ、そうよね。こいつって綺麗な女の人見あきているくらいだろうしね…


 最初の予定は、おしゃれなカフェでお茶をすることになっている。

 そのカフェに向かって歩いている途中で、バッティングセンターを奈央が見つける。

「佐々木!バッティングセンターだって!!私、行ったことないの…行ってみたいなー」

「お前なー今回の目的忘れてないか?女らしくなるためのデートなんだぞ」

「そんなこと言って、佐々木、運動出来ないんでしょー」

 奈央が、からかってみると即座に佐々木は、

「どんな、球でも打てらー!!」

と返してきた。


 カキーン!佐々木は全部の球をヒットさせた。バッターボックスから出て、自慢しようとすると、

「佐々木!凄いね!あんた運動神経良いんだね!めっちゃかっこよかったよ!!」

と、奈央に褒められる。

 ---かっこいいとか、きやすく言うなよ!!

「いいから、お前も打ってみろよ」

 そう言って、佐々木は、奈央の方は見ずに、んっとバッドを差し出した。

「私の華麗なバッティングを見てなさいよー」

 奈央は、元気にバッターボックスへと入っていった。一球目、空振り。二球目、空振り。終わるまで一度もバッドにかすることすら出来なかった。

「あんだけ言っといて、オール空振りかよ!」

 佐々木は、愉快そうに笑う。奈央は、もう一回と言って、お金を入れた。カキーン!今度はバッドに当たった。

「お前、今魔法使って、ボール止めたろ!!」

「そんなことするはずないじゃなーい。」

「お前が真面目にやるなら、打てるように指導してやるつもりだったのになー。」

 その言葉に、奈央は動きを止めた。

「あーでも、お前打てるから、指導なんかいらないかー」

「…お願いします」

「なに?聞こえないなー」

 ニヤニヤと佐々木が笑う。

「お願いします!!」

「最初っから素直になっときゃ良いもんを」

 佐々木の勝ち誇った顔を見て、奈央は、うぐぐぐーっとなりつつも、指導してもらうために耐えた。


「まず、バッドを短く持て。そんで、お前は力入れ過ぎ。肩の力を抜け。あとは、しっかりと球見てれば当たるよ」

「わかった。やってみる」

 奈央は、もう一度お金を入れた。一球目、空振り。

「最後まで球見ろ!」

 佐々木のアドバイスを聞き、二球目。カキン。

「あたったー!!」

 奈央は、喜んで佐々木の方を見た。

 しかし、次の球が飛んできたので、視線をボールの方に戻し、バッドを振った。そのあとも何度かあたり、ヒットと言えるレベルのも一つあった。


 球が終わると、奈央は、バッターボックスから飛び出してきて、佐々木の手を握り締めながら、

「あたった!あたったよ!!」

と、飛び跳ねんばかりの勢いで言った。

 ---そんな簡単に手握るなよ!!あんまり笑顔もふりまくな!!

「佐々木のおかげだよ!本当にありがとう!!」

 素直に、奈央にお礼を言われ、佐々木は、ドキッと心臓が高鳴った。


「このあと、どうするんだっけー?」

 奈央がのんきに尋ねると、

「カフェ行くんだよ!ほら、余計な時間くったが、カフェ行くぞ!」

と佐々木は返した。佐々木が奈央の方を向くと、UFOキャッチャーを覗き込んでいる。

「この人形可愛いー」

 奈央は、そう言いながら、目をキラキラ輝かしている。

「はー不細工だろう!?」

「えー可愛いよ!欲しいなー。でも、私こういうの苦手なんだよな…」

 そう言って落ち込む奈央を見て、佐々木は、UFOキャッチャーにお金を入れた。

「取ってやるよ」

「えっ!?悪いよ!」

「こないだ指導したろ。はした金は素直におごられる女の方が良いんだよ」

 一回目、ニ回目と失敗したが、三回目で落とすことが出来た。

「ほら、やるよ」

「本当に良いの!?」

「俺が持ってても意味ないだろ」

「ありがとう!」

 そう言って奈央は、ぬいぐるみを抱きしめた。その姿を見て、佐々木はぬいぐるみに嫉妬のような感情が生まれた。


「てか、結構時間過ぎてるな…カフェはあきらめるか」

「ごめん、せっかく計画立ててくれたのに…」

 そう言って落ち込む奈央を見ていたくなくて、

「もとから、お前がおしゃれなカフェなんて似合わないから行かなくて良かったわ!」

と、軽口をたたいた。すると、奈央は、

「似合わないってなによ!?」

と言い返した。

「だから、適当に夕飯まで、この辺ぶらつこうぜ」

「うん!ありがとう!!」

 ---だから、きやすく笑顔をふりまくなってば!!


 適当に近くの店を見てまわった。めがね屋に入って、適当にかけて遊んでみたり、服屋に入って、試着してみたりした。辺りを見渡せば、カップルばかりである。

 ---手ぐらいつないでも…

「佐々木」

「なっなんだよ!?」

 佐々木は、少しのばしていた手を焦って移動させる。

「お腹へっちゃったー」

「本当に女らしくなんねーな」

「お腹へっちゃうのはどうしようもないでしょー」

「何食いたい?」

「イタリアンとか?」

「じゃあ、あっち行くぞ」

 そう言って、佐々木は、レストランまで案内した。レストランに入ると、奈央は嬉しそうに内装を見てはしゃいでいる。

「わーおしゃれ!!佐々木はよく来るの?」

「まあ、な」

 ---喜んでる…調べといてよかったな…


 レストランは人気らしく多くの人が並んでいる。それにも関わらず、佐々木が店員さんに話しかけると、すぐにテーブルへと案内された。

「予約しておいてくれたの!?」

「お前なんかのために、そんなことするわけないだろう」

 そういって、佐々木はスタスタと歩いていく。

 ---佐々木は、本当に優しいな…今日なんて、私がわがままにいっぱい付き合ってくれたし、そのせいで予定狂わしたのにしたのに軽口叩いて笑い話にしてくれる…このお店だって佐々木は否定したけど、予約しておいてくれたに決まってる。なんで、こんなに優しくしてくれるんだろう…みんなにもこうなのかな…


 料理が運ばれてくると、奈央は嬉しそうな顔になる。

「お前、本当に飯を前にすると嬉しそうな顔するよな」

「えっそんなに顔に出てる!?」

「めっちゃあふれ出てる」

 うそーっと奈央は、顔に手をあてながら悩んでいる。佐々木は、ふと気になったことを聞いた。

「お前、男の趣味は?」

「えっ趣味…優しい人…かな…」

 ---俺と真逆だな…俺は、こいつを怒らせることばっかり言ってるもんな…

「佐々木の趣味は?」

「お前と真逆のおんな」

 奈央が、なによそれー!っとか言っているのが聞こえたが、佐々木は無視をした。


 レストランの会計時も、奈央は自分の分は…と言ったが、一銭も出させなかった。

「今日は本当に、ありがとうございました!」

「送っていってやるよ」

「えっでも、そこまでしてもらうわけにはいかないよ」

「荷物(UFOキャッチャーで取ったぬいぐるみ)もあるし、お前になんかあったら、襲った男が可哀そうだろ」

 背中を思いっきり叩かれた。


 奈央の家まで送っていき、部屋にぬいぐるみを入れて、佐々木は立ち去ろうとすると、

「お茶だけでも飲んでいく?」

と、奈央が言った。

「は!?」

「えっいや、こういうときの常套文句かなと思って…」

 ---それって誘い文句だろ!

「まあ、遅いし、嫌なら大丈夫だ…」

「しょうがないから、コーヒーくらい飲んでってやる」

 奈央の言葉を遮って、佐々木が答えた。


 奈央の部屋に入ると、女の匂いとでも言えばいいのか甘ったるい匂いが漂っている。そして、目に入ってくるのは、ベッド。

「あんまり見ないでよー」

 そう言って、奈央はコーヒーを机にコトッと置いた。佐々木は、頭をいろいろかけめぐっており、消すために出されたコーヒーを一気する。

「まだ、熱いよ!?」

「あつっ!!」

「大丈夫?」

 心配して、奈央が近くに来る。匂いが一気に強くなる。

「大丈夫!俺帰るわ!!」

 そういうと、佐々木は、家から飛び出した。






 佐々木は、口の痛みを感じながら、湯沸かし器は、温度調整出来る方がやっぱり良いじゃねーか。と一人愚痴りながら帰っていった。




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