打ち上げ後
佐々木との打ち上げの次の日、出社してきた佐々木を見て、あっ大丈夫だったんだと。少し安心した。
しかし、頭は、おさえているので、二日酔いなのだろう。
二日酔いになるまで飲むなんて社会人失格だなーっとくっくっくと、佐々木を見下すことが出来て笑いがこぼれる。
しかし、二日酔いでも、仕事はちゃんとやるようで、佐々木は普段通りに仕事をこなしていった。
お昼休憩のチャイムが鳴り、佐々木がこっちを振り返ってきた。
「俺、昨日、なんか変な事いわなかったか?」
「えっ別に変なことなんて言ってないよー」
「そうか…」
「うん、もっといろんな人が使えるような物をつくって、皆が笑顔になるような社会にしたいとかしか言ってないよー」
「あーくそ!!今すぐ忘れろ!!」
よほど恥ずかしいらしく、佐々木は顔が赤くなっている。そりゃ、そうだ。いつもクールぶってる男が、酔っぱらって仕事への熱い思いを語りつくしたんだからな。
奈央は、普段見ることの出来ない佐々木の顔がいっぱい見られて嬉しくなる。もっといろんな表情を見たくなる。
「食堂のスペシャルランチ食べなきゃ、忘れられそうにないなー」
「わーったよ。それだけで良いんだな」
「いやったー!!」
奈央は憧れてきた、スペシャルランチ食べられることになり小躍りでもしたい気分になった。そんなとき、佐藤がやってきて、話しに入ってくる。
「えーなんの話してるのー?」
「なんでもない。」
佐々木は、佐藤に対して適当に返答をした。
「さっさと行くぞ」
そう言うと、佐々木は、奈央の手を掴んで、歩き始めた。
奈央は、食堂で一番豪華な、その名もスペシャルランチを注文した。800円と、社食にしては高い値段設定である。
しかし、その内容は凄い。フレンチでステーキがメインとなっていて、スープにサラダも付いてくる。奈央も一度で良いから食べてみたいと思っていたのだった。
自分のお金では嫌だけど、他人のお金だと気兼ねなく頼むことが出来た。
「さすがスペシャルランチ…凄い迫力。いっただきまーす!!」
---こないだもだけど、こいつって本当にうまそうに飯食うな…
佐々木は、かけうどんを食べながら、奈央が食べる姿を眺めていた。すると、なにを勘違いしたのか奈央は、
「あげないわよ!」
と、言ってきた。
「俺は、そんなにいやしくないわ!!お前とは違ってな」
「何よ!?私だっていやしくなんかないわよ!!」
「他人の弱みにつけこんで、おごらせる女のどこがいやしくないんだよ」
「そっそれは…。弱みを見せた佐々木が悪いのよ!」
ふんっと奈央は、言い返す。
「いやしいわ、口答えするわ、お前全然女らしくなってないじゃねーかよ」
「そっそんなことないわよ…」
「お前、女って意識が足りないんじゃねーの?」
そう言って、佐々木は、あごに手を当ててんーっとうなった。と思ったら、すぐに、ポンっと手を叩いた。
「俺とデートするか。こんな良い男とデートすりゃ、女性ホルモンもドバーっとでんだろ」
「普通自分で自分のこと、良い男なんて言う!?」
「俺は素直だからな」
「性格ねじ曲がってるくせに…」
「なんか、言ったか!?」
「いーえ、なんでもございませーん」
奈央は、両手をあげてフルフルとさせた。
「で、どうする?デートするか?」
「えっそれ本気だったの?」
「だって、お前いつからデートしてないんだよ。そんな状態じゃ、男化も進むに決まってるだろう」
最後にデートしたのはいつだろう…と記憶を引きずりだしてきてみると、奈央は、悲しくなってきた。
「この機会を逃したら、こんな良い男とデートなんて、お前二度と出来ないぞ!!」
---思いっきり、言い返してやりたい!!お前なんか良い男でも何でもなくって、デートなんざこっちからお断りだよ!!って言ってやりたい!!
奈央は、頭の中で佐々木への文句でいっぱいだが、確かにデートは魅力的である。
デートしたら女性ホルモンが出るーなんて、そんなに都合よくはないだろうけども、しないよりは、した方がよさそうだし…認めたくはないが、佐々木は、見た目だけは良い男だから、このあいだ買い出しに付き合ってもらったときも鼻高々だった。
あんな思いを今後出来るとはとうてい思えない…。
奈央は、プライドを捨て、
「お願いいたします」
と、頭を下げた。




