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ドライブ




 新しく始まった掃除機のプロジェクトで奈央は、次のミーティングまでにハンディタイプの案をまとめていかなくてはならなくなった。

 もちろん、それ以外の業務も手を抜くわけにはいかないのだから、てんてこ舞いである。


 ハンディタイプの掃除機案は、佐々木と合同で考えている。佐々木は、設計部だけでは、わからないところや、もっと良くなる意見を出してくれる。

 それに報告書やプレゼンを作るのも手伝ってくれる。


 今日も、終業時間から佐々木とのミーティングを始めた。佐々木とミーティングを重ねるごとに、なんで、こんなに消費者目線になって商品を考えることが出来るのだろうと尊敬していった。


 ふと時計を見ると、終電まじかになっていた。奈央は焦って、

「ごめん、終電だから帰るね!!明日続き話し合おう!」

と言って帰り支度を始めた。すると、佐々木はおもむろに車のカギを取りだし、

「遅くなったから、連れて帰ってやるよ」

と言った。

「えっ車持ってんの!?お金持ち!」

「残業代で稼いでんだよ。お前だって同じようなもんだろ」

「まあ、そう言われると、そうなんですけどねー」

「車あれば、残業しても安心だしな」

「確かに車があれば、このあいだみたいにクッションで帰る必要もなくなるしな…。いいなー私も車買おうかなー」

「お前、クッションで帰ったのかよ?」

「うん、このあいだ佐々木がパン買ってくれた日の前日…」

「だから、あんなに死んでたのかよ!?魔石とかなかったのか?」

「帰るときは魔石に、魔力あったんだよ!ただ家に着いたころには、魔力切れしちゃって。だから、朝は、電車で、行く予定だったの。だけど、朝寝坊しちゃって…電車じゃ間に合わないから、クッショで会社にきたんだ…」

「魔石を普段から多めに準備しとかないのが悪い。それに、寝坊なんて、完全に自業自得だな」

 その言葉に、

「返す言葉もありません」

と、答えた。

 そんなふうに話していたら帰り支度も済み、佐々木に家の方向を聞かれたので、簡単に説明した。


 佐々木の車は、会社の地下駐車場に置いてあった。その車を見て奈央は驚いた。

「私、車詳しくないけど、これ絶対に高いやつだ!!」

「中古だよ!まあ、中古だけど気にいってるんだ」

「確かにかっこいいねー」

「そうだろう!!このフォルムがたまらないよな!エンジン部分は…」

 佐々木の車講座が始まった。車に対して一応構造のざっくりとした理解はあったが、佐々木の話はわかりやすく、聞きながら思い出すことが出来た。


 話し終わると佐々木は、やっちまったーっという顔をする。

「悪かったな、話につき合わせちゃって…」

「ううん、車については大学以来勉強してなかったから、聞けて面白かったよ。忘れてることありまくりだったし!」

 私が、笑うと佐々木も笑った。

「大学でやったことなんざ、忘れてるに決まってるよなー」

 そう言いながら、佐々木は、車のカギを開けてくれた。なかに入ると特に目につくものの匂いもなかった。女の人を乗せたりはしてないのかな…ってなに変なこと考えてるの!?と奈央は焦って、シートベルトをつけた。佐々木は、エンジンをかける。


「佐々木!お腹減った!!」

「俺もだよ!」

「なんか食べて帰ろうよー」

「こんな時間じゃ、ファストフードしかやってねーぞ」

「えー全然良いよ。近くのドンぶり屋に入ろうよー」

「しょうがねーなー」

 そう言って、佐々木は車を発進させた。

「あっあった!!」

 奈央は、ドンぶり屋を指さす。佐々木は、そこのパーキングに車を止めて二人で、ドンぶり屋に入っていった。

 佐々木は、女とドンぶり屋に入るのに抵抗があった。というより、普通女が嫌がるものなんじゃねーの!?と嬉しそうにドンぶり屋に入っていく奈央を見て思った。


 入ったところは、食券を買う形式だった。奈央はどれにしよーっとつぶやきながら、これ!っと量の多そうなものを選んだ。

 佐々木は、奈央が選んだ物の大盛りにしていた。

 カウンターに座り、食券を店員に渡した。食べ物が来るまで、先ほどの車の話を奈央が聞いてきたので答えていた。

「おまちどーさまです」

 店員が食べ物を持ってきて、奈央の目が輝いた。

「いっただきまーす!!」

 その声を合図に奈央は、ドンぶりを食べ始めた。佐々木は、そんな奈央の姿を美味しそうに食うなーっと眺めていた。そうすると、奈央が佐々木の方を向き、

「食べないの?お腹すいてなかった?」

と聞いてきたので、慌ててドンぶりをかっこんだ。


「ごちそうさまでした」

 奈央は、ちゃんと手を合わせてそう言った。それにつられて、佐々木もごちそうさまでした、と言った。

 店を出て、車に戻る。

「お前も一応女だから、遅くなった日は送ってやるよ、帰り道だし」

「佐々木が私を女扱いしてくれるなんて!?」

「暗がりで後ろから見れば、お前でも女に見えるからな」

 グッと、拳をかまえる。それを見た、佐々木は、

「お前!まじやめろよ!!」

と、言ってきたが、

「問答無用!!」

と言って、思いっきりグーで殴った。




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