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相談




 今日も今日とて、残業です。女の人たちの言うように、佐々木や折橋と話すためなんかじゃなくって、悲しいことにただ純粋に仕事が終わらないのです。

 佐々木も残業のようで、今日も残っている。


 お昼休憩の際、有紀との話し合いの結果、佐々木、折橋と距離を置いてみるということになった。

 しかし、佐々木には、今女らしくなる指導をしてもらっているところである。これでは、距離を置くのは難しい…ならば、一度、指導をやめてもらえば良いんだ!という考えに至った。


 そこで、佐々木にその話をしてみることにした。そんなことを考えていると、佐々木が帰り仕度を始めたので、ナイスタイミング!っと話しかけた。


「あのさ、私、女らしくなる特訓やめようかなって思うんだ」

「なんで?」

 ---なんで!?聞かれると思ってなかったものだからとっさに理由が思いつかない…

「えっと、もう、女らしくなれたから。かな…」

「全くなれてない」

「全くってことはないでしょ!!」

「ほら、そーいうこところとかな。全然女らしくなってない」

 まさかこんな展開になるとは思っていなかった奈央は、なんていって納得させようかと頭を抱えた。


「ていうか、お前何かあったんだろう?」

「なっなんにもないですよ!!」

「お前、わかりやす過ぎるから、隠そうたって無駄だぞ」

 それはさっきも有紀に言われたセリフである。しかし、女の人たちの話をするわけにはいかないし…奈央は再び頭を抱えた。

「おおかた、女になんか言われたんだろう?」

 ギクッ!!あまりにどんぴしゃなことを言われてしまい体が固まってしまった。

「服がださい?化粧が酷い?ネイルなんて似合わない?どうせ、そんなこと言われたんだろう。どれも嫉妬からきてるんだから気にすんなよ」

「なんで、嫉妬ってわかったの!?」

 ---あっ今の発言では、言われたと認めてしまったようなものだ…

「いやいや、そんなことは一切言われてなんかないけど、なんで嫉妬って思うのかなーっと疑問に思いまして。」

「急に、良くなった女に対して嫉妬するのは普通だろう。」

 ---佐々木や折橋といるから嫉妬されているって、わかったわけじゃないのか。そりゃそーよね。さすがに、自分と話してるから嫉妬されるって思うなんてナルシスト過ぎるわよね…


「だから、嫉妬なんざ気にしてんなよ。それよりも、ちょっとでも女らしくなる努力を頑張れよ!」

 もう、言われたことは完全にばれてしまっている。

 しかし、今回、特訓をやめようと思ったのは、女の人に言われたからではない。佐々木たちの評価が下がると聞いたからである。

 ここまで、助けてもらっているにも関わらず、評価まで下げるわけにはいかない。


「佐々木はさ、私と居ると評価下がるとか思わないの?」

「なんで、お前と居て俺の評価が下がるんだよ?」

 ---そういえば、なんで佐々木たちの評価が下がるんだ?

「えっなんでだろう…?私がださいからとか?」

「お前よりもっとださい奴なんて、設計部や魔法部にはいっぱい居るだろう」

 ---失礼な話だが、まあ、そうだな…じゃあ、なんでだろう…。

「お前、理由もわからないことを気にしてんのかよ」

「いや、でも、実際にそう思う人がいるんだから、やっぱりよくないよ!!」

「誰かに、お前と居ると俺の評価が下がるって言われたんだな」

 しまったー!言ってしまった!!と焦る奈央を横目に、佐々木は、話し続ける。

「俺の評価が、お前ごときによって左右されるはずがないだろう!!」

 お前ごときってその言い方は失礼だろうが!と文句を言おうとしたが、佐々木はさらに言葉を続ける。

「それに、そんなことで、俺に対しての評価を変えるようなやつに興味ない。よって、お前が心配していることは、一切無駄ということになる」

 そう言いきられてしまうと、言い返すことが出来ない。


「お前は、良くなってきてるよ。だから変なこと気にしないで、女らしくなることにだけ集中しろよ」

 あれ、もしかして、佐々木に褒められてる!?そう思い、佐々木を見ると、

「少しはまともになった程度だからな。俺が指導してやってるっていうのに、なんでこんな駄目なんだろうな…」

とか言うもんだから、久しぶりに背中をぶったたいた。

「ほら、全然女らしくなってねーじゃんかよ!」

「今のは、あんたが悪いでしょ!!」

「とりあえず、お前はまだまだ女らしくなんかなれてねーんだから、俺が指導してやんねーとな」

 佐々木はニカッと笑いながら言った。佐々木の笑顔にドキッと心臓が脈を打ったのを感じた。

 また、佐々木のその言葉を聞き、見捨てたりしないんだ…と少し驚いた。

 ---よく考えれば、指導なんてかなりの面倒ごとなわけだし、気にしないとはいえ、私と居ることで評価が下がったりもするっていうのに、佐々木は、見捨てないでくれるんだ…指導してくれる理由は、あわれだからってことだけど、それだけの理由で、こんなに助けてくれるし、見捨てたりもしないなんて優しいな…

「じゃあ、俺帰るからなー」

と佐々木は帰って行った。

 じゃあねーっと見送った後も、なんでだかはわからないが、奈央はその場から動くことが出来なくなってしまった。




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