トイレその2
腹が痛い…奈央は、原因不明の腹痛に襲われていた。
今日の朝食べたシリアル!?毎日食べてるけど…もしかして、くさってた?シリアルにくさるとかあるの!?っと頭のなかぐるぐるしながら、痛みに耐えているとお昼休憩のチャイムが鳴った。
天の助けと、奈央はすぐに立ち上がり、お手洗いに向かった。
個室から、出ようとしたとき、女の人たちの声が聞こえてきた。こないだもこんなことあったような…と少し嫌な予感がする。
そこで、たったと出てやれ、と思いドアノブに手をかけた瞬間、
「江田さん、見た!?」
私の名前が話題に上がった。こうなると、もう出て行くことは出来なくなってしまう。
「見た見た、月曜から変えてきてたよね!」
「てか、逆によく今まで化粧もネイルもしないで会社なんか来れてたよねー恥ずかしくないのかねー?」
「恥ずかしいって気付いたから、急にしてきたんでしょうー」
---はい…おっしゃる通りでございます…
「そういえば、私服も見た!?なんか急に色気づいちゃいましたーって感じー」
「ねー今までは、運動でもしに行くの!?って格好だったくせにねー」
---私の服装、そんなにまずかったんだ…確かに、Tシャツにジーンズにスニーカーのサイクルだったもんな…
「やっぱり、三十路近くなると焦り出すもんなんだねー」
「えー遅すぎない!?」
彼女たちの笑い声が大きくなる。なんとも出れたもんじゃない雰囲気だ。
「私、あんな風になるのだけは嫌だわー」
「どうかーん」
「てか、化粧とかネイル似合ってないよね!?」
「それを言っちゃったら可哀そうだよー。必死なんだからさー」
また、彼女たちの笑い声があがった。
---化粧駄目だったのかな…悪かったら、佐々木にはっきりと言われそうだけど…んー女受けは悪いってやつなのかな…?
「てか、江田さんの一番むかつくところは、佐々木さんと折橋さんと話しているところだよねー」
「マジ、身の程を知れって感じだよねー」
急に出てきた佐々木と折橋の名前に驚く。え!?なんで話したら駄目なの!?
「佐々木さんって本当にかっこいいよね!!」
「そうそう!あのちょっとクールな感じがたまんないよねー」
「バリバリ出来る男ですオーラ出まくりで、超かっこいい!!」
「私は、折橋さんのが好きー。あの気取らずに優しい感じがとっても良い!!」
「ねーあの、くしゃってなった笑顔が本当に素敵よねー」
「本当にあの二人は、タイプが全然違う、家電部門が誇るイケメンだよねー」
---あの二人ってそんなに人気あったんだ…確かに、折橋は良いって言われる理由はよくわかる!!しかし、佐々木を支持してる人って外見しか見てないの!?あんな意地の悪い奴が良いなんて!!…でも、まあ、確かに、私の特訓に付き合ってくれたり面倒見よかったりはするけど…でも、納得いかない!!
「そんな、素敵な二人の一番近くに、あの江田がいるのよ!!」
---もう、さんづけもされなくなっちゃたー。そりゃ、仕事上どうしても、二人との距離は近くなっちゃいますよ。しょうがないじゃない、お仕事なんだから。
「終業時間後もわざわざ残って、佐々木さんと折橋さんと話してるらしいわよー。」
「マジ!?会社をなんだと思ってるんだろう!」
---いやいや、そんな理由で残業するわけないじゃん。てか、そんなことしたら、上司から怒られちゃうからね。うちは残業代はしっかり出るんですから。
「マジ江田のくせに調子乗りすぎ!!今までは、さえない女って感じで、目にも入ってこなかったけど、最近は本当に目についてうざい!」
「それこそ、佐々木さんと折橋さんを天秤にかけてるつもりなんじゃない?」
「えーほんっとうに何様って感じ!!」
---いやー二人をどうこうしようなんてこと考えたこともありませんよ。マジで。なんで私こんなにいわれなきことで嫌われなきゃいけないの!?
「あんなのといると、佐々木さんや折橋さんの評価が下がるよねー」
その言葉に、えっ!と声を出してしまいそうになった。まさか、私と居ることで、二人に悪影響があるなんて思ってもみなかった…
呆然としていて、気づいたときにはもう、女の人たちは居なくなっていた。そのため、ゆっくりと個室から出て行く。
こんなときどうしても浮かんでしまうのが、有紀である。こんなときばっかりと言われてしまいそうだが、有紀に会いたくなった。
トイレから出て、連絡をしてみるとまだ、ご飯食べてないから一緒に食べようと言ってくれた。
食堂で有紀を待つ。このあいだと逆だ。なんて思いながら、入口の方を見ながら有紀を待った。あっ有紀だ、と手を振って場所を伝えた。
「なんか、あったでしょう?」
有紀は、席に着いたと同時に、そう言った。奈央は、えっそんなに顔に出てるっと焦って顔に手をあてた。
「あんたは、わかりや過ぎるから隠したって無駄よー。全部言ってごらんなさい」
奈央は、降参です、と言って、先ほど、トイレで言われたことを洗いざらい有紀に話した。その話を全部聞いた有紀は、
「嫉妬されるようになったなんて凄いじゃん!!」
と褒めて(?)くれた。
「んーでも、女目線からしたら、私の化粧とか酷いのかなーっとかは思ったりしましたよー」
「いやいや、全く問題ないよ。ネイルも派手じゃないし、似合ってるよ!!」
有紀に似合ってると言われ、ときめいてしまった。可愛い子に言われると、同姓でもドキッとくるものなのだなーと実感する。
「全部、嫉妬から言ってるだけだから、気にするだけ無駄無駄」
「でも、佐々木とか折橋の評価が下がるっていうのが気になったかな…」
「んーじゃあ、直接本人にどう思ってるのか聞いてみれば?」
「えっ本人に!?」
「それが一番手っとり早い方法でしょ」
そりゃそうよねーと思ったが、なんて話を切り出せばいいんだとわからない。
「でも、聞くってどうやって?」
「そりゃー今私にしたみたいに、女の人たちに言われたこと言って、評価下がるらしいんだけど気にする?って」
「いや、それは、なんだか卑怯な感じしない?その女の人たちは佐々木と折橋のこと好きなんだしー」
「じゃーちょっと距離置いてみるとかは?その二人と距離置けば、多分なんにも言われなくなるんじゃないかな?」
「確かに!!有紀頭良い!それでいくわ!!」
有紀と話し考えがまとまった。そのあとは、いつものようにくだらないおしゃべりをしてお昼休憩を過ごした。
お昼休憩の時間も終わりに近づいてきたとき、
「こういうときばっかり、連絡して本当にごめんなさい!」
そう、有紀に謝った。すると、
「頼ってくれるってことを、私は、嬉しいって思うんだけどなー」
と返してくれた。
「有紀ー!!有紀と友達になれて本当に良かった!!」
奈央は、有紀に抱きつくいきよいで感謝を伝えた。




