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出社




 月曜の朝。今日はいつもより少し早く起きてみた。

 顔を洗って、ニコッと笑顔の練習をしてみた。最近、鏡を見ると笑顔の練習をするのが癖になってきてしまっている。

 ---人に見られたら気持ち悪がられるだろうなあ…特に佐々木になんて見られた日にはどうなるかなんて、火を見るよりも明らかだからな…人前ではやらないように気をつけねば!!


 佐々木が一番最初に選んでくれた黄色のブラウスと、白のフレアのスカートを今日は着ていってみることにした。

 袖を通してみると新品のにおいがして、気持ちが上がった。そして、実際に着てみて姿見の前で全身を確認すると、あまりのテンションの上がり具合に顔がにやけてきてしまう。

 佐々木は、あんまりそこまで良いとは言ってくれなかったけど、やっぱりなかなか似合っているように感じる。


 服だけでなく、選んでくれた、ネイルもぬってみた。指先がキラキラとして綺麗である。

 時計を確認してみると、まだまだ時間はあった。

 そのため、化粧もしっかりとしてみることにした。もちろん、佐々木が選んでくれたチークもつけてみた。

 まだちょっと怖いので少し薄めにではあるけど…チークつけすぎの女性って結構いません!?あれって見ているだけで、おかめみたいで恥ずかしいんだよね…そのため、チークをつけるということに対して苦手意識が強い。

 そういった理由もあって、今までつけなくていいかなーっと考えてしまっていた。まあ、めんどくさいってのが一番の理由だけどね…


 そろそろ、出なきゃいけない時間になった。そのため、鞄を持ってもう一度姿見を確認してから家から出て行った。






 お昼休憩のチャイムが鳴った。

 すると、このあいだ佐々木と微妙な雰囲気になったにも関わらず、今日も佐藤はお昼を食べに私の席まで来た。凄い度胸だなーっと尊敬した。折橋もこのあいだみんなで一緒に食べたからなのかやってきた。


 佐藤は奈央の変化に気づいてくれたようで化粧やネイルのことをいっぱい褒めてくれた。

「急にどうしたのー?今日はデートなのぉ??」

「そんなんじゃねーよ!俺が選んでやっただけだよ!!」

 後ろ向いてパンを食べていた佐々木が急に話しに入ってきた。

「へー二人で服買いに行ったんだー」

 佐藤の声がいちオクターブぐらい低くなった。佐藤からの視線が痛い!!なんとかフォローしなくちゃ!!

「女らしくなる指導をしてもらってて、その一環で買い出しに付き合ってもらっただけなんだよー。いやーほら、私って全く女らしくないじゃん!だから厳しく指導されちゃってるんだよねー」

 それに対して、佐藤の反応は、へーえっと全然納得してない感じで相槌をうった。


 そんなとき、いつもの救世主、折橋が話に入ってきてくれた。

「うん、江田今日可愛いね!」

「折橋ー優しいね!ありがとう!!」

 佐々木はこっちを振り返っていて、なんだか怖い顔をしている。

「だから、こんな奴のいう事は気にするな!!てか、お前の返し最低」

「えっなんでー!?」

「確かに、折橋に対しての対応としてはさっきので満点なんだが…」

 折橋に対してと、他の人に対してで対応に違いなんてあるのかと疑問になった。

 しかし、佐々木はそれに対する答えはくれずに、言葉を続ける。

「可愛いって言われて、優しいなんて返すなよ。社交辞令言ってくれるのね、優しい!っていってるようなもんだぞ」

「そうなの!?」

 でも、折橋が可愛いって言ってくれたのは、雰囲気をみて話を変えてくれたってかんじだったし、このあいだ佐々木も言っていたように、折橋の言う可愛いは女の人同士で言うのと同じ感じだから、嬉しいって言うよりも、社交辞令とは言わないが、本心で言われているわけではないから優しいって言葉が出てしまったのだろう。


「ちょっと照れながら、’あんまりからかわないでよーでも、ありがとう!!’ってぐらいで返しとけ。」

 ほー!!そういうものなのかー!!とまた勉強になった。照れながらというのがポイントなんだろうなー。

「おーこれが例の女らしさの指導かー」

 折橋は楽しそうに私たちを見ている。

「確かに佐々木は良いこと言うなー。さっき俺は本気で可愛いって言ったのに、流されちゃったって感はあったなー」

「えっ!?」

「お前は、もう黙れ!!」

 折橋に結構凄いことを言われたような気がしたが、佐々木の言葉で冷静になることが出来た。

「とりあえず、お前はガードが堅いんだよ。もっと隙を見せろ」

「隙…ですか…?」

「そう、隙があるから男はそこにつけこむ!!もとい、いけそうだと感じる」


 んっいまいちわからない…佐々木は、私の表情から理解出来ていないことがわかったのだろう。もう一度説明し直してくれる。

「だから、例えばある女の人を褒めたりするだろう。そして、その人の反応によって自分に興味ないなーっと感じるってことだよ」

 それは、なんとなくわかる。褒められたのに、ツーンっとすましたような態度なら脈がないと感じるだろう。

「男が俺に興味ないなーっと感じる反応っていうのが、流されるってことなんだよ。あっそ、といった具合の完全に流している反応はもちろんだけど、社交辞令ありがとう!ってのも、流しているってことになるんだよ」

 そういえばさっき、折橋に流されたといわれた。そういう意味だったのかーと納得することが出来た。


「だからこれからは、褒められたら、本気で言われてると思え。そして、心からありがとうと伝えろ!」

「はい!!了解です!!」

「もちろん、折橋以外の相手に対してのみだからな!!」

 佐々木のその言葉に、なんでだよーっと折橋がつっこみをいれている。




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