表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/44

買い出し




 携帯電話のバイブ音が聞こえる。

 今日は、土曜なんだから、ゆっくり寝かせてよーなんて思いながら、ベッドから起き上がることなく、音源である携帯電話を、手さぐりで探す。


 起きぬけの目に、携帯電話の明かりは、キツイ。いったい、土曜の朝から連絡してくる奴は誰だよーっと、確認していく。

 すると、意外な人物からのメールだった。なんと、佐々木である。驚いて目が覚めた。


 仕事でなにかあったのかと、心配になり、急いで内容を確認する。すると、

「服買いに行くぞ」

とだけ、書かれていた。

 なんで服なんて買いに行くんだ?仕事でなにか必要なんだっけ?と疑問になり、

「服買いに行くってなんで?」

と返信してみた。

 すると、すぐに返信が返ってきた。こいつ彼女なんかのメールの返信もマメなんだろうなーなどと感心しつつ内容を確認した。

「女らしくなるには、服装も大事だろう。どうせ、予定もなく暇してるんだろう?」

---どうせってなによ!本当に失礼なやつ!!私にだって予定ある日くらいあるわよ!!まあ、今日はないけど…


 言い方に苛立ちを覚えたが、服を一緒に選んでくれるなんて、願ったりかなったりである。確かに、女らしさに洋服ははずすことの出来ないアイテムである。

 佐々木はセンスよさそうだし、お願いしちゃおーっと。そう考え、時計を確認して何時くらいから活動出来そうか考えてみた。

 ---えーっと今は10時だから、これから支度したりご飯食べるたりするから、2時くらいがちょうど良いかなー

「助かります。ありがとう。2時ごろからで良いのかな?」

 奈央が返信するとまたすぐに、佐々木から返信がきた。

「会社の近くなら服屋もあるだろ。会社の最寄り駅に2時な」

 そのメールに了解です、とだけ返信しベッドから起き上がり、カーテンを開けてんーっと伸びをした。


 会社の最寄り駅に2時なので、そんなに急いで支度する必要もないので、奈央は、とりあえずコンタクトを入れに洗面台に向かった。

 そして、テレビをつけて情報番組を見ていた。番組では美味しそうな食事をレポーターの女の子たちがほおばっている。その姿を見ていてお腹がすいてきた。


 少し早いが、奈央は、朝食かつ昼食をとることにした。しかし、テレビに映る美味しそうな食べ物なんかは、家にあるはずもなく、シリアルと牛乳を取りだした。

 テレビの美味しそうでおしゃれな食事風景をみながら、こんなお店で食事したいなーと思いつつシリアルをほおばった。


 食事も終わり、次はシャワーだと、立ち上がった。シャンプーをした後、コンディショナーをつけた。

 普段なら、すぐに洗い流してしまうが、今日は久しぶりのお出かけということもあり、少し時間をおいてみた。お出かけの相手が佐々木というところが悲しいところであるが。

 髪をふくときもいつもなら乱雑に、ガサガサとふいてしまうところを、今日はぽんぽんぽんと、叩くようにふいてみた。ドライヤーをかけてみると、いつもよりはまとまっているように感じなんだか気分が上がってきた。


 シャワーから出ると次は、洋服選びである。服屋に行くということはあんまり恥ずかしい恰好もしていけないので、洋服ダンスの奥の方から入社当初に着ていたコンサバ系の服を取りだした。


 あとは、簡単に化粧をしていると、そろそろ家を出なくてはいけない時間になっていた。最後に、姿見で全身を確認して玄関を出た。


 少し早めに駅に着いた。佐々木はまだかなーっと、携帯電話を片手に柱に寄り掛かった。

 しばらく立っていると、江田、と横から声をかけられた。

 佐々木の声だと、そちらを向いてみると驚いた。色男がたっていた。

 今まで会社でしか会ったことがなかったので、私服は初めて見るのだが、凄くシンプルなのに、かっこいい!!灰色のシャツに、スキニーのジーンズ。とっても似合っている。ぼーっと見つめてしまった。

「なんだ、俺がかっこよすぎるからってそんなに見つめるなよ」

 ---確かに見つめてしまったのは、本当だけどこいつの言い方に腹が立つのよ!!

 きーっとハンカチでも噛みたい気持ちにかられつつ、私のためにわざわざ土曜日を使ってくれているのだから、見つめていた話はスルーして、お礼ぐらい言わなくてはと思い直した。


「今日は、わざわざ私のためにありがとう」

 そういうと、佐々木は私のことを上から下まで確認するように眺める。その視線の中、すっごく居心地が悪い。

「あのーどうしたの?」

「お前、一応服持ってんだなー」

 佐々木は、本当に意外そうな顔で言った。

「ずいぶん失礼ね。そりゃー何着くらいかはあるわよ!」

「いや、だってお前いつも、ジーパンにTシャツって格好で会社に来てるだろう」

「えーだってどうせ作業服に着替えるんだし、わざわざ良い恰好していくの面倒だし…」

「仕事後にデートにでも誘われたらどうすんだよ」

「誘われないから別に…」

「その感覚がもう駄目だ!いつ何が起こっても大丈夫なように気をつかえ。それができないようなら、女として終わってる!!」

「うむ…」

 佐々木の言うことに反論が全く出来ない。

 いやーでも、入社以来一度も仕事終わりにデートなんていう流れになったことのない私からすると、どうしてもそこまで考えることが出来ない。

 ---そんなありえないことのために、毎朝努力をするってかなりツライことじゃない!?でも、それをするのが女という生き物なのだろう…。出来ていない私っていったい何なんだろうな…。あっだから男系女なんだっけ!


「そういえば、お前のさっきのメールも最悪だったからな!」

「えっメール?」

 急に関係のない話になり驚く。しかし、先ほどのメールを思い出してみても、全く最悪と言われる覚えはない。

 佐々木は、携帯電話をいじり、私がさっき送ったメールを表示させた。

「なんだこの、’助かります’ってのは!?仕事じゃないんだよ!もっとフランクな雰囲気出せよ!!」

 それにーっと言いながら、佐々木はまた携帯電話をいじり、別のメールを表示させた。

「’了解です’ってたった四文字で終わらせるなよ!せめて絵文字くらいつけろ!!お前のは女のメールじゃない」

 はっきりと女じゃない宣言されてしまった。

 まあ、佐々木の言いたいことはわかる。しかし、佐々木相手なんだから良いじゃん…と思ったが、言ったら余計怒られそうなのでやめておいた。


「とりあえず、月曜から、会社に着ていく服を選びにいくぞ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ