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お昼




 奈央は、一昨日のミスからやるべき仕事がまだ終わらせられていない状況である。

 しかし、昨日今日と働き、かなりいつもの状態にまで戻ってきた。今日、残業すれば余裕だなーっと頭の中で計画立てていた。


 そんな時、お昼休憩のチャイムが鳴った。今日も頑張ってるなーっと自分をほめながら、んーっと伸びをした。

 そしてさーて、ご飯だご飯だと、今日も買って来てあるお気に入りのパンを取り出した。


 すると、どこからともなく良い香りがふわっと香ってきた。顔をあげるとミスパーフェクトである佐藤里奈がそこに立っていた。

「今日は、一緒にご飯食べられるかな?」

 小首を傾げて、にこやかにお願いされた。このあいだのお誘いは、ミスをした日だったために、全くゆとりのなかったので断ってしまった。

 しかし、こんな綺麗な女性にお願いされてしまうと断ることが出来ない。それに、前に一度ご飯を一緒に食べようと誘われたときに、いいよ、と答えてしまっているので無視するわけにはいかない。

 ---私は、デスクでパンを食べるだけなのだから、隣に人がいたところで問題はないしねー。それに、まあ、佐藤里奈の目的は佐々木なのだから私にはあまり関係ないだろうしー


「奈央ちゃん、パンだけなのー?」

「そうなんですよね、面倒なんです」

「そーうよね、私も毎日お弁当つくるんだけど、面倒になっちゃうよねー」

 あっさりげなく、毎日お弁当つくってるのアピールがきた。

 少し大きな声になったのは、後ろにいる佐々木に聞こえるようにであろう。しかし、お弁当つくれるのは本当にすごい。

 私は、ギリギリまで寝ているために、いかに時間をかけずに支度をするかに力を注ぎこんでいる部分がある。

 なので、お弁当を作ろうという気すらおこったこともない。これが女子力というやつか!と一人感動していた。


「佐藤さんは、他の人と食べなくて良いの?」

 佐藤さんの目的はわかっているのだから、聞くのもあれなんだが、話しをすることもないので適当に話題をふってみた。

「もう!こないだも言ったでしょー里奈ってよんでよー」

 あははーと、から笑いでごまかした。なんだか、今のやりとりで、学生時代に女の子同士でこんなのあったなーなんてことを思い出してしまった。


「奈央ちゃんともっと仲良くなりたいから。だから、来たんだけど迷惑だった?」

 伏し目がちにうるんだ瞳で訴えかけられて、まさか、迷惑なんて答えられるはずがない!!

「そんなことあるわけないよ!ただ、事務の人たちと食べなくていいのかなーって普通に疑問に思ったってだけだったの」

 本当に傷ついているわけないと心のどこかで思うものの、佐藤さんの表情を見ていると、なんとか笑顔にしなくちゃ!という気持ちにさせられる。やはり美人は得だ。

「なら良かった!確かに今まで事務の人たちと食べてたんだけど、せっかく同じフロアなのに事務だけで固まってるのもあれかなーなんて思って。それで、奈央ちゃんに話かけたんだよー」

 佐藤の言葉に、

「そういえばそんなこと言ってたねー」

なんて適当に相槌をうった。


 すると、佐藤は、佐々木の方を向き、パンをかじっている佐々木の肩をたたいた。

「ねえ、佐々木君。奈央ちゃんと一緒にご飯食べているんだけど、同期同士みんなで食べようよー」

「俺は、別にいいよ」

 佐々木の言葉に、佐藤は固まってしまい、言葉を失った。

 ---なに断ってんだよ!!こんな可愛い子に誘われて断るとか馬鹿なの!?私の計算では、佐々木がささっと佐藤におちて二人で、どこかに消えていってくれる予定だったのに!!いや、てか、この断られた後のこの雰囲気どうしてくれるのよー!!

 奈央が、頭の中でやいのやいの言っていたとき、救世主が現れた。


「なんでみんな集まってんの?」

 折橋がひょっこりと話しかけてきた。そのおかげで、少し、シーンっとなってしまっていた雰囲気が急に明るくなった。

「江田がデスクで女の人と食事してるなんて珍しいね。君はえーっと」

「佐藤里奈よ。同じフロアの同期なんだから覚えててよー」

 佐藤は、うふふーといった穏やかな雰囲気で折橋と話をしはじめた。

「江田と仲良いのー?」

「そうなの!私たち仲良しなんだよねー♪」

 ちゃんと話すのが2回目なんだが、もう仲良しらしい。

 そうだとするなら私と有紀は、もう宇宙規模レベルでの親友なんだろうな。


 そんなことをぼーっと考えていたら、折橋の持っているパンが目に入った。

「あっ折橋も同じパンだ!」

 折橋が持っているパンは私のお気に入りのパンだった。

「あーこれうまいよなー」

「折橋わかってる!!佐々木なんかは、このパンの良さがわかんないらしいんだよ」

 すると、佐々木がこっちを振り返り、自分の食べているパンを差し出してきた。

「こっちのがうまいに決まってるだろう!!」

「そんなことないよねー折橋」

「そうだなー」

 そんな姿を佐藤はニコニコと眺めていたと思ったら急に話し始めた。

「折橋君と、奈央ちゃんって仲良いね!お似合いよね!!」

ねっと、佐々木に向かって言った。

「そんなわけないだろ!」

 佐々木が大きな声を出し、佐藤は驚いた顔になった。

 当人である佐々木なんにもなかったように、自分のデスクの方に向きかえった。


「なに急に大声出すんだよー驚いてパンを握り締めちゃったじゃーん」

と、折橋笑いながら言った。

 雰囲気を変えてくれて助かった…その後は、私と折橋が、なんだかよくわからないが適当な話しをして、佐藤も相槌をうってくれていたところで、昼休憩終了5分前のチャイムがなった。

 なんとか昼休憩を終わらせることが出来た。じゃあねーっと佐藤と折橋は席に戻って行った。






 二人がいなくなると、佐々木は、椅子をスライドさせながらこちらにやってきた。

「なんであんな面倒なの断らねーんだよ!」

「いや、てかあんたの面倒ごとが私にふりかかってるんだけど!!」

 私が、佐々木に文句を言うと佐々木もバツが悪そうに、自分の席に戻っていった。




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