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第五夜

「 A weak mind'」




×+++++++++×




 Weak mind the spirit of tolerance.───self-sacrificing emotional.


〜道化の精神、人形の魂、……犠牲的な誰か。〜




×+++++++++×

 



 繰り返すのだ。僕は。眠らない町で道できみと。




「おかえりなさい」

 駆け寄るきみを抱き留める。

 とても。

 とてもとてもとても、軽いのだけど、僕は勢いに竦んで立ち尽くす。ぶつかった衝撃にカメラが怖いけれどまぁ気にしない。

「良い子に?」

「してたわよ! 当たり前よ? ───『兄さん』」


 ……ああ、……。


誠実(まこと)さんっ”

 冷たい目。これは罰だろうか。


 きみは『きみ』でなくましてや僕の愛した彼女にはならない。


 こんなにも愛したのにな。もう彼女の口から“誠実”と名を呼ばれる可能性(コト)も無い。いや、呼ばせれば出来るがそれでは意味など無い。


 しがみ着く軽やかな体を抱き締める。それは、僕の求めた亡霊の[似姿]だった。




 僕は罪を犯し続けた。犯し過ぎた。ああ、きみは笑ってはもうくれないだろう。なぜなら、僕はきみに『燃料』を与えなかったんだから。


 僕は愚かだ。僕以外の誰ももう、生きてはいないんだ。


 何と言う恐ろしさ! 僕一人が神のようにこの大地に君臨しているのだ!


 悲しいことに誰一人僕の咆哮は聞いてはくれない。




 僕も、そんな僕の命もあと僅か。さぁ、いよいよ僕は追い込まれ、後は地獄へと落ちるのか。


 まぁ良いさ。僕は生き過ぎた。もう逝って良いはずだ。


 どうせ助けてくれるモノは皆無。きみも殺して……いや、あれは元から生かしていない。


 ただの、オートマタ。




 ああ、けれど。


 一つ。

 こんな僕にも一つ気に掛かることが在る。



人形(ドーリィ)』。

 憐れで可愛くて愛しい僕の介添人形。


 大丈夫だろうか? 道化師はともかく泡沫兎(バブルラビット)歯車熊(バギーベア)はヒドく冷たい。

 それは僕に似た愚鈍さで。


 ああ、きみが心配だよ、可愛い『人形(ドーリィ)』。

 僕に似た愚直さで、きみはとても、狂気染みているぐらい純粋だから。

 僕に似て。


 僕が死んでも、きみはきっと僕を待つんだろう。憐れな、犬のような一途さで。


 僕は、そう考えたら僕は、『幕』を引かなきゃいけない。


 人生にだけでなく、この、《世界》に。




 僕が、この《世界》の[神]だから。







   ×Go to next story.→『第六夜』×

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ゲンシツウ─あざろぐ。
aza/あざのブログ。

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