第五夜
「 A weak mind'」
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Weak mind the spirit of tolerance.───self-sacrificing emotional.
〜道化の精神、人形の魂、……犠牲的な誰か。〜
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繰り返すのだ。僕は。眠らない町で道できみと。
「おかえりなさい」
駆け寄るきみを抱き留める。
とても。
とてもとてもとても、軽いのだけど、僕は勢いに竦んで立ち尽くす。ぶつかった衝撃にカメラが怖いけれどまぁ気にしない。
「良い子に?」
「してたわよ! 当たり前よ? ───『兄さん』」
……ああ、……。
“誠実さんっ”
冷たい目。これは罰だろうか。
きみは『きみ』でなくましてや僕の愛した彼女にはならない。
こんなにも愛したのにな。もう彼女の口から“誠実”と名を呼ばれる可能性も無い。いや、呼ばせれば出来るがそれでは意味など無い。
しがみ着く軽やかな体を抱き締める。それは、僕の求めた亡霊の[似姿]だった。
僕は罪を犯し続けた。犯し過ぎた。ああ、きみは笑ってはもうくれないだろう。なぜなら、僕はきみに『燃料』を与えなかったんだから。
僕は愚かだ。僕以外の誰ももう、生きてはいないんだ。
何と言う恐ろしさ! 僕一人が神のようにこの大地に君臨しているのだ!
悲しいことに誰一人僕の咆哮は聞いてはくれない。
僕も、そんな僕の命もあと僅か。さぁ、いよいよ僕は追い込まれ、後は地獄へと落ちるのか。
まぁ良いさ。僕は生き過ぎた。もう逝って良いはずだ。
どうせ助けてくれるモノは皆無。きみも殺して……いや、あれは元から生かしていない。
ただの、オートマタ。
ああ、けれど。
一つ。
こんな僕にも一つ気に掛かることが在る。
『人形』。
憐れで可愛くて愛しい僕の介添人形。
大丈夫だろうか? 道化師はともかく泡沫兎や歯車熊はヒドく冷たい。
それは僕に似た愚鈍さで。
ああ、きみが心配だよ、可愛い『人形』。
僕に似た愚直さで、きみはとても、狂気染みているぐらい純粋だから。
僕に似て。
僕が死んでも、きみはきっと僕を待つんだろう。憐れな、犬のような一途さで。
僕は、そう考えたら僕は、『幕』を引かなきゃいけない。
人生にだけでなく、この、《世界》に。
僕が、この《世界》の[神]だから。
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