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27歳

作者: 相口夏来

 人生の夏休みを終えて、五年ほどが経とうとしている。


 今のところ、晩夏の寂しさが延々と続いているのを感じるのみだ。



 五年前まではちょっとした色恋話で一晩を明かせたものだと思い返す。

 今では一晩を明かす事すらままならない。

 会社があるから、身体が持たないから、理由は色々だ。


 それでいて、ずっと家に引きこもって怠けていると、自然と警告が発せられる。

 外に出ろ、身体を動かせと。



 自分勝手な頭と身体に振り回されながら、私は有給休暇をとることにした。


 大学生の時に一度、シルバーウィークというものを経験した。

 ちょうど、それに当たればいいかなと思うくらいで申請してみた。

 それほど期待していた訳でもなかったが、申請はすんなりと通った。

 溜まっている休暇を消費してもらわないといけないから、と課長は笑っていた。



 それから、何をしようかと悩み始めた。

 計画性の無さは五年前と同じだ。


 家から帰ってきて、久々にコンビニで買った出来合いの晩御飯をテーブルに置いて、テレビをつけた。

 今ではテレビもニュースを見て、ドラマを見るばかりで、かつて見ていたバラエティが懐かしい。

 ニュースもドラマも、どこかバラエティが侵食してきている点がその感覚を少し緩ませている。



 ちょうど夕方のニュース番組が、近郊のレジャースポットの特集をしていた。


 奇妙なキャラクターが滑稽な動きをしていた。「にゃんまげ」と紹介されていた。

 いわゆる「ゆるキャラ」の類だと思ったが、流行の前に一花咲かせたキャラらしく、そのキャラを引き合いに最近の流行りである他のキャラクターが紹介され始めた。



 有給休暇を使って、何をすべきだろうかとぼんやりと考えてみた。

 少し、論理的になってきた。


 だが、この薄給が幾らか払われながら休む日々は、どれほど有用なものなのだろうか。



 テレビではCMが流れていた。

 ボランティア活動支援を高らかに宣伝する会社のものだった。ゴミ拾いを率先して行っていた。


 ボランティアでもすれば、ちょうど釣り合いがとれるかと思い至った。



 大学生の頃はひたすら休みを求め、笑いを欲し、ボランティアなんて鼻にも掛けなかった。

 考える前に身体が動けていた。



 とても寒かった。それでも私は縮こまって、目の前のご飯をついばむしかなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい。適正な言葉組みである。 [一言] 続きを読みたいのですが、どうでしょうか?。 表題のシンプルさに、目が留まりました。 最近は、やたらと興味を引こう的な馬鹿げたものが多いので、安…
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