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<2話> 初陣前夜 ~side:エディアルド~

 1話と重複部分があります。

 


 我ら【黎明】の本拠地は小高い丘を利用した城砦である。

丘とふもとの水場を囲む様に城壁が築かれ、内部は男たちの生活空間や訓練所が作られている。

その内側には女たち1人1人に与えられている小さな館や、騎獣と魔獣それぞれの獣舎、武器庫に食糧庫などが並んでいる。


頂上の本城は4階からなり、1階は全員入ることの出来る広間や食堂など、2階には各部隊・班の事務部屋がある。

3階からは限られた者しか出入り出来ない様に魔術が掛けられた、この砦の中枢である。

3階は幹部用の会議室と執務室や幹部の自室があり、ここを抜けないと4階には上がる事は出来ない。

そこは我ら統領家の私的な空間であり、屋上庭園や温室なども揃えられている。



 私は皆と夕食を済ませると、エフィを連れ自室へ戻る。

湯を使い汗を流すと、エフィを鏡の前の椅子に座らせ、洗いたての髪を柔らかい布で優しく拭く。


レンジュの蒼にまるで星を散りばめたかの如く美しく煌めく蒼白銀色(ブループラチナ)の髪と、明るく輝く淡菫色(ライトバイオレット)の瞳。

その淡い色彩が示す強い魔力に比例する寿命によるものなのか、エフィの体の成長はかなり遅い。


その為、私を含め皆過保護になりがちだ。極端な男系のレンジュ一族に生まれた女児、しかも次期総帥たるエフィは、一族の者はもちろん【黎明】を支える騎獣にも溺愛されている。

しかしその溺愛が裏目に出たようで、エフィが泣き出してしまう。


『父様や皆と戦場に行きたい。』



 涙と共に零れてくる言葉が胸に突き刺さる。

驚かせたいと、エフィには知らせず進めていた初陣話と用意してきた馬車。


(大の大人が揃いも揃って、馬鹿なことをしたな。喜ばせるはずが泣かせてしまうとは。これだから男は気が利かないと、女達に言われるわけだ。)

抱き上げ目元にキスを落としながら、エフィを必死で慰める。


『エフィ、お前の初陣が決まったぞ。次の依頼には必ず同行させる。』


 

 続けて馬車の事を打ち明けると、眼を輝かせるエフィ。

涙も止まったようだ。


「作ったの?」

「ああ。設計はフェル、材料はシンが半年掛りで集めた極上品で、本体はユースとシリスが1年掛けて作り上げた。それにティアが重量軽減や強化守護、疲労回復、治癒力上昇などの魔術を重ねがけしたぞ。騎獣と馬車を繋ぐハーネスはラミドがヴェルドと試行錯誤を繰り返して、揺れが伝わりにくくしたらしい。内装はアルとネルがエフィ好みに仕上げた。」


出てくる名前は私を支える幹部達。


(エフィが泣いたのは、あいつらのせいだ。「お前らの悪戯心がエフィを泣かせた」と言ってやる。エフィに嫌われたと、少しは落ち込めばいいんだ。)


 

 嬉しそうに抱きついてきたエフィを抱き締めていると、廊下に気配を感じる。

この時間に私の部屋に来るのはフェルぐらいだろう。

エフィとの時間を邪魔される事に腹は立つが、ノックと共に入室の許可を求めるフェルに中に入るように告げる。


泣いた跡が残るエフィの顔を見て、口の動きで「誰が泣かせた?」と聞いてくるので、「お前らの内緒話のせいだ。」と同じ様に返す。

悔しそうなフェルを放って置き、エフィを膝から降ろし隣に座らせる。


我に返ったフェルが差し出してきたのは、ギルドからの依頼書。

エフィに依頼内容を説明するフェルに、幹部を会議室に集めるように命じると、すばやく退室していく。


(エフィに初陣を伝えた途端に依頼が入ってくるとは。)


「出陣の準備を」

と用意していた服をエフィに渡し、夜着から着替えさせる。

エフィの準備が終わるのを待って、共に部屋を出る。








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